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元気で長生きしたければ、歯のケアを!

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脳卒中リハビリテーションの最新治療 患者目線のかかりつけ医が安心

オーダーメイド治療が重要 リハビリテーション(以下、リハビリ)科の役割は、脳卒中によって生じた半身麻痺や言語障害などを回復させるものと、不自由さがあってもその人らしい生活を可能にするものがあります。改善が困難であっても、 ...

脳卒中リハビリテーションの最新治療 患者目線のかかりつけ医が安心

オーダーメイド治療が重要

リハビリテーション(以下、リハビリ)科の役割は、脳卒中によって生じた半身麻痺や言語障害などを回復させるものと、不自由さがあってもその人らしい生活を可能にするものがあります。改善が困難であっても、不自由さがひどくならないようにすることもリハビリの役割です。しかし、脳の損傷部位によってさまざまな症状が組み合わさって出現し、型通りのリハビリ治療では効果が出にくいため、各々の患者さんに適したオーダーメイドの治療プランが必要となります。

脳卒中リハビリテーションの最新治療とは

脳卒中のリハビリは、「急性期」「回復期」「生活期」に分けられます。リハビリを行わずにいつまでもベッドの上で横になっていると、心臓や肺の働きが低下し、下肢を動かさないでいることでエコノミー症候群などが生じてしまいます。そのため、脳卒中治療ガイドライン(2004年)で急性期からリハビリを行うことが推奨され、現在では発症当日からでもリハビリが開始されます。
急性期病院で、手術や点滴などの治療で症状が安定すれば、体の向きを変えたり、麻痺している関節を動かしたり、寝た姿勢から座ったり立ったりするリハビリが始まります。そして、理学療法士・作業療法士・言語聴覚士などの専門スタッフが関わり、半身麻痺や言語障害などに対するリハビリの指標を作成していきます。このように、急性期病院で脳卒中の治療を集中的に行った後、回復期のリハビリ病院へ転院し、専門スタッフのもとでリハビリに専念することになります。
回復期リハビリも、主治医やリハビリ科医が診断の上、できるだけ早期に最大の機能回復をめざして行われます。体の不自由さを回復させるだけでなく、多くのリハビリ専門スタッフが関わって、日常生活の動作をなるべく自立させることに重点を置いたリハビリになります。「これから社会復帰をめざして頑張りましょう」という場です。患者さんやご家族と気さくに会話ができる医師が求められます。また、医師とリハビリ専門スタッフがチームを組んで対応します。
退院してからは、自宅で生活期リハビリが始まります。生活期という言葉は、「できるだけ自分の力で生活を送る、麻痺などの障害が残っても趣味などを大切にしながら生活していく」といった、生活を重視する考えに基づいたものです。病院ではできた動作も、自宅で動くことが少なくなると機能が低下していきます。獲得した機能を、できるだけ長期に維持していくことが大切です。

「ひろしま脳卒中地域連携パス」が有用

回復期病棟は、人口10万人当たり50床が適正とされていますが、広島県ではこの基準をほぼクリアしており、バランスの良い状態です。回復期における治療の主な課題は、急性期後の障害の改善で、今後は質の向上をめざしていく必要があります。保険適用においては、アウトカム評価(患者さんの70%を自宅復帰させる必要があるなど)という基準があるため、ある程度の質を保つことが実現していると思われます。
厚生労働省は、24時間体制で治療方針を決定する高度急性期病院を県単位で作っていく方針です。これは、高度急性期医療の機能を集約した病院で、このシステムは台湾で既に運用されています。ただし、急性期病院が診断・治療を行っても、自宅に戻ることは簡単ではありません。居住地域の事情などもあり、それぞれの社会資源も異なります。患者さんがその人らしい生活をするためには、地域に密着したかかりつけ医の存在が重要になると考えます。
広島県では、患者さんが退院した地域で効率的に継続した治療を受けられるよう、患者さん一人ひとりの診療計画書となる地域連携パスの活用を進めています。脳卒中の県内共通連携パスを進化させた、「ひろしま脳卒中地域連携パス」が作成されました。医師が治療だけでなく、患者さんのリハビリやその後の状態を知る顔が見える関係の構築をめざし、一定の成果が得られているシステムです。現在では、入退院の際に連携を促すように変わってきています。

患者さん目線を持ったかかりつけ医を探しましょう

退院後に自宅復帰した際に、「これからのリハビリの責任を誰が担うのか」を考えたときに要となるのがかかりつけ医です。その場合、かかりつけ医が「専門は心臓だから、それしか診ません」というのでは話になりません。現在は、高齢化が進んで単に患者さんが増えるというだけでなく、既往歴や障害を持った方もおられます。病気をコントロールすることは大事ですが、生活期リハビリは生活そのものが課題のため、生活の安定化、QOL(生活の質)の向上、社会参加など、病気だけでなく生活を含めたトータルな支援が重要になります。
脳卒中になってからどの程度まで病気が回復するかは、患者さんごとで異なります。リハビリで求められるものは、体の不自由さから回復することだけでなく、その人らしく生活できるようになることです。生活期の患者さんは、「病気を治してほしいけれども、病気で困っていることもどうにかしてほしい」と思っています。その困っていることを何とかすることこそが、リハビリです。
リハビリ専門スタッフは、それぞれの専門性に基づき、医師とは異なる目線で患者さんを診ます。ですので、かかりつけ医は患者さんの生活全般にできるだけ興味をもち、生活に関わり、スタッフや地域包括センターなどと連携を取りながら、元気で生きがいのある人生が送れるように支援することが求められます。

地域連携が緊密な病院が最適

リハビリの観点からすると、良いかかりつけ医は「地域の社会資源と連携をどれくらい持っているか」が、一つの指標だと考えます。病院のホームページに、訪問介護ステーションの有無や適用される介護保険制度などについて掲示されていますので、参考にしてみてください。また、訪問介護ステーションを持っていなくても、そういった施設などと緊密な連携があれば問題ないと思います。
このように、生活全般を診てもらいたい場合には、地域との連携がある病院を選ぶのが良いと思います。病院のホームページだけでは分かりにくいため、地域連携が分かる情報を一括で提供できるような場を整備することが現状の課題です。
患者さん自身は病気のことで頭がいっぱいで、そこまで意識がまわりません。ですから、客観的な判断が可能なご家族などがいれば、そうした情報を整理して患者さんに助言していくことが求められます。良いかかりつけ医は、さまざまな意味で連携を取り、患者さんの生活に興味を持ち、困っているを代弁できる医師のことだと考えます。

脳卒中や認知症の予防を日頃から行いましょう

血管を健全に保って脳卒中や認知症の予防を 広島県は、脳神経内科の病気の件数は全国の平均レベルです。その中では、脳卒中・認知症・てんかんが多く、いずれも高齢化に伴って増える病気です。 ...

脳卒中や認知症の予防を日頃から行いましょう

血管を健全に保って脳卒中や認知症の予防を

広島県は、脳神経内科の病気の件数は全国の平均レベルです。その中では、脳卒中・認知症・てんかんが多く、いずれも高齢化に伴って増える病気です。
神経難病は、この三つほど患者数は多くないものの、高齢化とともに増加傾向にある点が共通しています。
現在、国内には脳卒中患者が約300万人、認知症患者は約500万人いると推計されており、認知症は65歳以上では10数人に1人、85歳以上では2人に1人といわれています。
脳卒中の最大の危険因子は、動脈硬化の進行です。それには、「高血圧」「糖尿病」「不整脈」「タバコ」「アルコール」「脂質代謝異常」「塩分」「脂肪」「運動不足」「肥満」などが関係しており、この10項目について日頃から気を付けて生活すれば、予防できる可能性があります。血管を健全に保っていれば、動脈硬化が原因で起きる脳卒中や認知症を4割減らせるという報告もあります。
認知症については、半数以上がアルツハイマー型ですが、2割は血管性認知症といわれ、さらにアルツハイマー型認知症に血管障害の要素が加わっている人も少なくないため、やはり血管を健全に保つことが重要になってきます。また、頭部外傷(頭のけが)も認知症やてんかんにつながることが少なくなく、特に高齢者は、転倒などで頭のけがをしないように気を付けることも大切です。

高齢者のてんかんに注意

てんかんは、小児科の病気というイメージが強いと思いますが、実は高齢者にも多い病気です。てんかん患者は全国に約100万人いるとされ、高齢者では100~120人に1人といわれています。
高齢者のてんかんで特徴的なものとして、脳血管障害に伴う後遺症としてのてんかんがあります。また、明らかな原因が不明のことも多く、けいれんがなく意識がボーッとするなど、はっきりした症状が少ないため、てんかんと気付きにくい場合があります。高齢者のてんかんは、この意識がボーッとするタイプが多いため、見逃されたり、認知症と誤診されたりすることが多いのですが、脳波検査をするとてんかんの波が出ていることがあります。

パーキンソン病に最新治療が登場

高齢化とともに増えているのがパーキンソン病です。パーキンソン病は、現在、さまざまな新しい治療法が登場しています。胃瘻から専用ポンプを使って、小腸内に治療薬を持続的に投与するという新しい治療法は、薬の副作用の強い進行期パーキンソン病の患者さんに対して効果が期待されています。
広島県内では、広島大学病院と広島市民病院の2施設でしか行われていませんが、患者さんが日常生活を支障なく送れるようになるなど、注目を集めています。
*胃瘻/腹壁を切開して胃内に管を通し、食物や水分や医薬品を流入させ投与するための処置

県内医療機関の棲み分けが進む

脳神経内科の病気で大切になるのが、正確な診断です。広島大学病院の重要な役割は、診断をつけ治療方針を立てることです。基本的な病気の診断は地域の拠点病院でできますが、診断の難しい症例や高齢者で複数の病気を合併しているような場合は広島大学病院で正確な診断をつけ治療方針を決定し、その後の治療や検査は地域の拠点病院で行ったり、さらに病状が落ち着けば、開業医にバトンタッチしてコントロールしていきます。
脳神経内科の県内の拠点病院としては広島市民病院、県立広島病院、広島赤十字・原爆病院、安佐市民病院(以上、広島市)、東広島医療センター(東広島市)、広島西医療センター(大竹市)、呉医療センター、中国労災病院(以上、呉市)などがあります。脳神経内科医のいる脳卒中対応病院としては梶川病院(広島市)、大田記念病院(福山市)が、神経難病入院病院としてはビハーラ花の里病院(三次市)などもあります。リハビリテーション病院としては広島県高次脳機能センター(東広島市)や広島市立リハビリテーション病院(広島市)があります。
てんかんは、現在、県内で1次(開業医)、2次(拠点病院)、3次(広島大学病院)という医療機関の棲み分けのシステム構築が進められています。広島大学病院にはてんかんセンターがあり、薬でコントロールができなかったり、外科的手術が必要とされる患者さんが、2次医療機関から紹介されてきます。

大学病院での取り組み

広島大学病院には、広島県と広島市の委託で難病対策センターが設置されており、ここではさまざまな難病に関する相談を受けています。センター独自の取り組みとして、在宅人工呼吸器装着患者の災害時対応システム(災害時行動パンフレット)を作るなど、全国的に見ても進んだ活動を展開しています。
広島大学病院には遺伝子診療部もあり、神経難病の遺伝に関わる相談やカウンセリングに対応可能な体制も整っています。

「ひろしまオレンジパスポート」を先進的に導入

認知症に関しては、広島県で「ひろしまオレンジパスポート(広島県認知症地域連携パス)」(広島県認知症疾患医療センター発行・県内9か所で配布、P36下写真)を作り、全国に先がけて県内全域で導入されました。

気軽に相談できるかかりつけ医を持ちましょう

脳神経内科は歴史も浅く、県内に専門の開業医の数が少ないのが課題です。長く付き合わなければならない病気をお持ちの場合には、ご自宅の近くにかかりつけ医として脳神経内科専門医のいるクリニックを探して、普段はそこでコントロールしてもらえるのが最適です。
しかし、近くに脳神経内科の専門医がいなくても、例えば内科でも整形外科でもよいので、その先生の専門に限らずどんな病状に関しても気軽に相談でき、何かあればすぐに専門医のいる総合病院などへ紹介してくれるかかりつけ医を持つことが大切です。また、神経疾患の場合には動くことが難しい人が多いため、かかりつけ医が往診してくれるのが理想的です。
脳神経内科は、要介護者の原因疾患の多く(脳血管疾患、認知症など)を扱っている診療科です。脳卒中を疑った場合には、可能な限り早く専門の病院を受診することが重要で(ACT -FAST、下イラスト)、かかりつけ医を持つことには非常に大きな意味があると考えます。

脳梗塞患者をできるだけ多く救うために ――脳血管内治療の最前線

普及したt―PA静注療法にも弱点があった 脳梗塞の治療でこれまで一番有名だった治療法が「t―PA静注療法」です。点滴で血栓を溶かし、血栓によってせき止められていた血流を再開通させるという治療法です。科学的データもしっかり ...

脳梗塞患者をできるだけ多く救うために ――脳血管内治療の最前線

普及したt―PA静注療法にも弱点があった

脳梗塞の治療でこれまで一番有名だった治療法が「t―PA静注療法」です。点滴で血栓を溶かし、血栓によってせき止められていた血流を再開通させるという治療法です。科学的データもしっかりあり、脳卒中治療のガイドラインでも、推奨度が最高ランク(グレードA)の治療法です。
t―PA静注療法は2005年から始まり、次第に普及して症例が増えることでデータも蓄積されてきました。当初は「発症後3時間以内に治療開始が必要」とされていましたが、その後の研究により、2012年には「発症後4・5時間以内に治療を開始すればよい」という基準になりました。その結果、さらに症例数が増え、2012年10月~2013年9月の一年間で国内での症例数が1万1千例を超えました(下表)。
しかし、この治療実績でも国内の全脳梗塞患者の5%程度にしか相当しません。つまり、95%の患者さんがこの治療法を受けられていない事実を示しています。また、治療を受けた5%の患者さんにしても、治療が全て成功しているかというと、必ずしもそうではありません。
t―PA投与による主幹動脈閉塞症(脳梗塞の中で最重症で脳の太い血管が詰まる)の3時間以内の血管再開通率は、約33%です。さらに、主幹動脈閉塞症の中でも、生命に直結する太い血管である内頸動脈や脳底動脈になると、再開通率は約13%と非常に低くなってしまいます(下表)。
その結果、t―PA静注療法は「ほとんどの場合で間に合わない」「間に合ったとしても、約3割の患者のみに有効で、重症の場合はその有効性はさらに下がる」治療法であることが分かってきました。

血栓回収療法の劇的な効果とは

そんな中、t―PA静注療法の弱点を補う治療法として新たに登場したのが「血栓回収療法」です。ステントという器具を血管内に入れ、それを使って血管をせき止めている血栓を直接取り除く治療法です。
まず、足の付け根から血管にカテーテル(管)を挿入します。カテーテルを脳へと進めていき、血栓のある場所で網目状のステントを広げ、血栓を引っかけてゆっくりと引き出して、除去します。血栓が取り除かれると、再び血液が流れ始めます。
t―PA静注療法は、発症後4・5時間以内の患者さんに可能な治療法ですが、血栓回収療法は原則発症後8時間以内の患者さんに有効です。したがって、より多くの患者さんを救うことが可能となります。
血栓回収療法は2015年に科学的に有効性が証明され、米国ではその年のうちにガイドラインが改訂されて、強く推奨される治療法になりました。
国内でも、2017年に改訂された脳卒中治療ガイドラインでグレードAの治療法として、「発症6時間以内にステントを用いた血管内治療(機械的血栓回収療法)を開始することが強く勧められる」と見直されました。このように、ガイドラインでは基準をより厳しく6時間以内としています。
血栓回収療法により、自宅復帰率(患者が回復して自宅に帰ることができる確率)が約20%も上昇したという劇的な効果が示されています。

どれだけ早く血栓回収療法を行えるかが重要

この非常に治療効果の高い血栓回収療法をより生かすために鍵となるのが時間です。原則8時間まで適応といっても、脳の血管が詰まっている時間が長くなると、それだけ脳のダメージは大きくなります。一刻も早く詰まった部分を再開通させることが重要です。
時間短縮は医師の力だけでできるものではありません。患者さんが血管造影室に運ばれてカテーテル台に上がり、そこからいかに医師が頑張ったとしても短縮できる時間はわずかです。脳梗塞を発症してから、すぐに病院に搬送し、その後速やかに患者さんをカテーテル台に上げて、血管を開通させることが重要です。それには、医師だけでなく多職種によるチーム医療の充実が必須です。
脳梗塞で血栓回収療法が必要な患者さんが救急に運びこまれると分かったときには、救急チームに加えて脳外科医や病院の事務スタッフもそこに加わり、救急隊の到着を待ち構えます。そして、病院到着後すぐに診療が始まります。
救急隊からの引き継ぎ、患者さんやご家族への問診、患者さんのご家族への説明、採血や画像検査、そして、t―PAや血栓回収療法までの過程をチームで同時進行していくことで、血管が開通するまでの時間を短縮しています。

救急搬送のために有効な支援アプリを開発

さらに、時間短縮で最も重要なのは救急隊の力です。血管内治療を実施している施設に患者さんを「一刻も早く・直接」搬送できれば、それだけ治癒の可能性は上がります。
2017年に人口当たりの血管内治療の動向について全国調査を都道府県ごとに行ったところ、ダントツで高知県が全国1位でした。脳外科の専門医が多ければ比例して治療数も増える傾向にありますが、高知県の場合、人口当たりの専門医がそれほど多いわけでもありません。調査を進める中で、このような高い治療実績を達成できている原因の一つとして、救急搬送システムの充実が考えられています。重症脳卒中の疑いのある患者さんを、脳卒中センターに直接搬送するシステムが出来上がっているのです。
救急車の中で血栓回収療法が必要かどうかを見極められれば、救急隊は患者さんを適切な施設へ直接搬送できます。そこで、救急隊が現場で病型予測を行える「病院前脳卒中病型判別システム/ JUST Score」というアプリを当院で開発しました(下写真、図)。
このアプリは、救急搬送患者の年齢・麻痺 や痙攣の有無・意識状態など、簡単に評価できる項目を入力するだけで、自動的に主幹動脈閉塞症などの診断ができるというものです。当院では、地域の救急隊と連携し、このアプリによって主幹動脈閉塞症の疑いが50%以上と判定された場合には、すぐにカテーテルが可能な施設に搬送するよう働きかけをしています(下図)。
このように、発症現場から病院までの時間短縮を図るさまざまな取り組みが行われています。重症脳梗塞患者さんを一人でも多く救うには、血栓回収療法をできるだけ多くの患者さんに迅速に行える環境づくりが必要です。各地域における連携システムの充実が求められています。


脳神経外科診療の最新動向 ――安心・確実な内視鏡手術とかかりつけ医の活用法

脳出血の安全で確実な最新治療――内視鏡手術 脳出血に対する治療は、従来は主に開頭手術でしたが、最近は神経内視鏡手術で血腫(血の塊)を取ること(内視鏡手術)ができるようになっています(下図)。大きな出血の場合は、従来通り開 ...

脳神経外科診療の最新動向 ――安心・確実な内視鏡手術とかかりつけ医の活用法

脳出血の安全で確実な最新治療――内視鏡手術

脳出血に対する治療は、従来は主に開頭手術でしたが、最近は神経内視鏡手術で血腫(血の塊)を取ること(内視鏡手術)ができるようになっています(下図)。大きな出血の場合は、従来通り開頭手術が必要です。それほど出血が大きくなく、血腫のみを取ればよい場合は、以前は定位的手術(CTで計測して、そこへ針を刺す治療)を行っていましたが、それに代わって内視鏡手術がこの10年ぐらいで広がってきています。
これは、脳に直径1㎝ぐらいの筒を通し、そこに内視鏡を入れて血腫を吸い取る手術法で、侵襲(患者への負担)の程度は変わらずに、針を刺して血を抜いていたときよりも実際に血腫を目視しながら取るため、より安全で確実です。

患者に負担が少ない神経内視鏡手術

神経内視鏡とは、脳内出血・脳腫瘍・水頭症などを治療する際に主に使用する治療機器です。神経内視鏡手術の大きな特徴は、これまでは脳を大きく切開しなければ見えなかった病変部位が、小さい穴から内視鏡を挿入して、観察しながら処置できるようになったことにより、手術時間が短縮してより低侵襲で確実な手術が可能になったことです。
脳動脈瘤の開頭手術や、髄膜腫・聴神経腫瘍などの脳腫瘍に対する通常の顕微鏡下か 手術にも、内視鏡を補助的に使うことで開頭を小さくし、死角を減らしてより確実な手術が可能です。内視鏡手術は、主に神経内視鏡学会の技術認定医がいる施設で行われています。

進化しているくも膜下出血の治療

くも膜下出血は、死亡や寝たきりになる確率が高い恐ろしい病気で、そのほとんどは脳動脈瘤の破裂によるものです。一度破裂した動脈瘤は繰り返して破れるため、くも膜下出血に対する最初の治療は、まずは動脈瘤の処置になります。
動脈瘤の治療には、開頭クリッピング術(頭を開けてクリップする手術)とコイル塞そく栓せん術じゅつ(カテーテルを使い、コイルを動脈瘤内に詰めて動脈瘤を閉塞する血管内治療、P23下図)があります。後者は血管内治療の専門医が必須で、治療法の選択については、動脈瘤の場所やくも膜下出血の状態で見極めます。
現在は、MRIやCTなどの検査機器の精度が上がり、動脈瘤を立体的に評価できるようになって治療に役立っています。また、新しい材質のコイルやステントも開発され、以前は難しかった動脈瘤の血管内治療も可能になっています。
最終的に後遺症が残るかどうかは、最初のくも膜下出血の程度によるところが大きいため、動脈瘤は破れないことが最善です。そのため、脳ドックなどで未破裂の動脈瘤が見つかった場合、動脈瘤の大きさや形によっては治療(手術)を考慮する必要があります。
しかし、未破裂動脈瘤に対する治療によって、脳梗塞や脳出血が起こる危険性も数%ながらあり、一方で、治療しない場合に1年間に破れる確率は1~2%程度ともいわれています。そのため、治療するかどうかは、治療の危険性と動脈瘤の破裂する危険性を天秤にかけることになります。
動脈瘤が破れやすいかどうかは、動脈瘤の大きさ・場所・形によって異なり、治療(手術)か様子観察かの判断は、医師が総合的に診断した上で助言を行います。そして、適切な判断・助言ができるかどうかは、医師の経験や技量、その施設でどの程度治療を行っているかなどによると考えます。

腫瘍摘出で内視鏡が活躍中

脳腫瘍の治療では、良性腫瘍は摘出することが基本で、いかに低侵襲で多く腫瘍を取れるかが重要です。下垂体腺腫に代表される脳下垂体腫瘍は、脳腫瘍の約20%を占める良性腫瘍で、内視鏡が得意とする領域です。
ほとんどの場合、開頭手術を行わずに、鼻の穴から内視鏡を入れて行う経鼻内視鏡手術で摘出が可能です。以前は顕微鏡手術でしたが、現在は内視鏡手術が主流で、従来に比べて格段に治療成績が向上しています。この手術は、脳外科の手術の中では多少特殊な手術であるため、これを安全・的確にできる医師は限られています。
脳の中に水が溜まる病気(水頭症)では、従来はシャント手術(頭の水をお腹の中〈腹腔内〉に流すチューブを埋め込む)だけでしたが、水頭症の一部では神経内視鏡によって治療することが可能になりました。

手術用機器の進歩が患者にメリットを与える

最近では、ナビゲーションシステムを導入している施設もあり、手術の前に腫瘍の範囲をあらかじめ見極めて、手術中に腫瘍の場所を示してくれるという点で大変有用です。悪性腫瘍の一部(神経膠腫)では、手術中に肉眼では正常の脳と見極めにくい腫瘍の部分を描出する造影剤が、ここ5年程度で広く普及してきています。
手術室にMRIを設置している施設もあり、手術中に残っている腫瘍をリアルタイムで判別できるようになっています。また、神経モニタリング(手術中に神経刺激の脳波を取って、手術中に神経の異常の有無を知る方法)も行われるようになっています。このように、脳神経外科では技術・機器・薬剤などが近年大きく進歩しています。

かかりつけ医を受診して脳の病気の予防を

脳出血、脳梗塞、くも膜下出血といった病気は、脳の血管の異常によって起こる病気です。その根本には、高血圧、糖尿病、心臓病(不整脈)、高脂血症などの生活習慣病が一因となっていることがほとんどです。定期的な健康診断で、これらの病気を予防することが脳の病気を防ぐ第一歩ですので、生活習慣病が見つかった場合には、かかりつけ医に受診して治療することが大切です。
また、脳の病気が心配な場合も、まずはかかりつけ医に相談しましょう。脳梗塞や脳出血が一度起きた場合には再発の可能性もありますので、それを防止する意味でもかかりつけ医を持つことは大切だと考えます。
脳腫瘍や脳動脈瘤は早期発見が重要です。脳ドックは、脳の病気が見つからなければ毎年受診する必要はありませんが、中高年期にさしかかったら一度は受けておいた方が良いでしょう。

脳疾患診療の最前線 ――地域連携パスが患者を支える

地域連携パスで切れ目のない治療体制を実現 これまでの脳疾患診療では、一つの病院で治療からリハビリテーション(以下、リハビリ)まで行うことが一般的でしたが、現在は①急性期治療に特化した急性期病院、②リハビリの必要な患者さん ...

脳疾患診療の最前線 ――地域連携パスが患者を支える

地域連携パスで切れ目のない治療体制を実現

これまでの脳疾患診療では、一つの病院で治療からリハビリテーション(以下、リハビリ)まで行うことが一般的でしたが、現在は①急性期治療に特化した急性期病院、②リハビリの必要な患者さんを受け入れる回復期リハビリ病院、③維持期(生活期)に在宅でのリハビリを支援する施設、といった病院の機能分化が進んでいます。そうした中、それぞれが役割を果たし、円滑に連携して切れ目のない治療体制を作るために、地域連携パスは生まれました。
地域連携パスは、一人の患者さんの治療の流れとして、急性期病院から回復期病院を経て早期に自宅に戻れるような診療計画を作成し、治療を受ける全ての医療機関や施設で共有して使用するものです。
急性期・回復期・維持期(生活期)のそれぞれの施設が役割分担しながら、地域包括ケア(地域で治療が完結)の実現をめざしてそれに結びつくような連携をきちんと行うことが、現在の新しい医療体制となっています。
広島県では、脳卒中や認知症などの各疾患について連携パスが作成されており、脳卒中に関しての連携パスは、もともと地域完結型に近い形で作られていました。それが県内で統一された形で動き始め、将来的には医療福祉行政にきちんと反映されるようなパスが運用されることで、医療の流れが全体として分かるようになります。
最終的にはPHR(Personal Health Record /個人の健康記録)という形で、各々が自身の診療記録や健康に関する情報を持ち、それを医療機関が活用するという形に発展させるのが理想的です。

情報共有システムの構築をめざす

現在のひろしま脳卒中地域連携パスは、2017年3月に看護やリハビリ、介護の現場の方の意見を反映した形で見直したものを運用し、紙媒体・電子媒体を併用しています。このパスの最終的な到達目標と利用目的については、定期的な議論が交わされており、また、運用後2年が経過した段階で運用状況が確認されます。それらの評価を正確に行い、ひろしま医療情報ネットワーク(HMネット)と連動させていきたいと考えています。
2018年度から、患者さんのスマートフォンで使えるソフトを利用して、医療機関同士で共有できるシステムを構築していこうという臨床研究的な試みが、広島大学病院を含めた全国11の中核的な施設で始まります。まずは脳卒中から始めていき、他の疾患へ広げていくことも視野に入れられています。

広島県は、7つの医療圏(広島、広島西、呉、広島中央、尾三、福山・府中、備北)にそれぞれ中核的な施設があります。①最初は広島大学病院を中心にした数施設で、②次に中核施設同士を結んで情報を共有し、③その後は、その中核施設に患者さんを紹介している周辺の医療機関などと中核施設の間でやり取りを行う、というステップを踏み、3年を目途にシステムの構築を検討しています。そして全てが共有化された場合には、広島県全域でシステム共有が可能になります。
最終的には、患者さんの協力を得ながら、各々のスマートフォンに情報を保存する形でPHRを扱う段階まで広げられればと検討しています。

「Drip-Ship」――脳卒中の地域連携医療

脳卒中の新しい治療では、急性期の脳梗塞に対する血管内治療の効果が、大規模な臨床試験で証明されています。t―PA静注療法(脳の血管内に詰まった血栓を溶かす薬を静脈内に投与)も確実に広がってきていますが、血栓を回収する血管内治療は、この療法で十分に血流が再開しない症例や、発症から少し時間が経っていても効果が期待できるという優位性があります。
県内の7つの各医療圏の中核施設には、脳血管内治療の専門医が常駐しており、今後の脳卒中診療を大きく変えていくことになると考えます。医療情報のスムーズな連携によって、かかりつけ医や最初に搬送された病院でt―PA療法を行いながら( Drip )、中核施設へ搬送し(Ship)、そこで症状が改善していなければ血管内治療で血栓回収を行う( Retrieve ) という「Drip―Ship/tPA静注療法と血管内治療の地域連携、下図」が可能です。
こうした場面でも、前述のスマートフォンソフトを施設間で活用できれば、救急隊もスムーズに搬送ができ、情報共有や対応も早く可能になり、結果的に患者さんの入院期間や社会復帰までの時間の短縮に結びつくことになります。

重要になるかかりつけ医の役割

200床以下の病院には、急性期から回復期リハビリ病棟まで備え、一つの病院で治療が完結する形の施設もありますが、脳卒中の医療は、基本的には急性期→回復期→維持期(生活期)という流れの中で、それぞれの診療機関が情報を共有しながら切れ目のない対応を行い、介護・福祉・保健まで含めた地域包括ケアの中で完結できる形に各機関が協力しています。
現在は、大学病院などの総合病院で全てが完結するという医療体制ではなく、そのため、かかりつけ医がどこまで判断できるかが非常に大切です。脳の病気でかかりつけ医に一番求められるのは、「疾患の早期発見」と「急性期の専門治療を行っている施設を適切に紹介できること」です。現在は、開業医の多くがMRIを備えており、超急性期の脳の状態を見逃さないような設備レベルにあります。超急性期の虚血などは、MRIの拡散強調画像という撮影方法で分かりますが、その診断こそが重要です。
また、治療が終わった後に自宅へ戻ってからも、かかりつけ医の役割は大切です。総合病院などに紹介された患者さんは、確定診断に近い領域まで検査を行い、その後、定期的にフォローアップされていきます。総合病院は紹介を受けるだけでなく、病状が落ち着いたら元の病院に紹介し直して、引き続き診てもらうことになります。その場合は、確定診断に至った検査を中心に、経過を追う検査に関しても細かく指示を出します。
このように、総合病院とかかりつけ医が大事な要点を把握し、情報を共有して診ることでダブルチェックが可能になるわけです。

広島大学病院の新たな取り組みとは

広島大学病院では、世界初の情報統合型の手術室であるスマート治療室(SCOT/ Smart Cyber Operating Theater 、下写真)を導入しました(2016年4月)。手術に必要な情報を時間的に同期化して統合し、さらにネットワークでその情報を管理・運用する手術室です。これまでに脳腫瘍を中心に30例以上の脳神経外科手術を行い、今後は他の外科領域への応用も進められています。
こうした、次世代型手術室の活用や、前述の新しいソフトを使ったシステム構築のキーワードは「デジタル医療情報の活用・運用」です。IoT、ICTが当たり前の状況になっている現在では、デジタル医療情報を安全かつ有効利用することが、今後の社会ではさらに必要になってくると考えます。
*IoT/モノ(物)がインターネットにつながる仕組みや技術
*ICT/通信技術を使ったコミュニケーション

泌尿器疾患の治療とかかりつけ医の役割

泌尿器とは 泌尿器とは、読んで字のごとく尿を分泌する器官を指し、腎臓(血液をろ過して尿を作り出す)・尿管(尿を膀胱に送る)・膀胱(尿を溜めて出す)・尿道(尿を出す通路)などに分けられます。また、これらの器官をまとめて尿路 ...

泌尿器疾患の治療とかかりつけ医の役割

泌尿器とは

泌尿器とは、読んで字のごとく尿を分泌する器官を指し、腎臓(血液をろ過して尿を作り出す)・尿管(尿を膀胱に送る)・膀胱(尿を溜めて出す)・尿道(尿を出す通路)などに分けられます。また、これらの器官をまとめて尿路と呼びます。泌尿器科は、それら泌尿器と男性生殖器(陰茎、前立腺、精巣)の疾患を主に扱う診療科です。

男女では尿排出のしくみが違う

男女とも、尿を溜めて排出する機能はほぼ同じです。違いとしては、尿道の長さ・位置と、骨盤底のしくみにあります。
男性の尿道は、長さが20㎝ほどあってS字に折れ曲がり、さらに前立腺に囲まれているため、もともと尿が出にくい構造です。尿道を閉める骨盤底筋群は、女性に比べて頑丈です。一方で、女性の尿道はわずか3~4㎝で、前立腺もなく、尿道は出口までまっすぐ下りています。また、出産のため骨盤底筋群は柔軟になっています(下図)。
このため、男性の場合は長い尿道の一部が詰まりやすく、尿が出にくい傾向にあり、対して女性の場合は、出産などで骨盤底筋群が緩みやすいため、尿道を閉じて尿を溜める機能が低下して、尿が漏れやすい傾向があります。

男性特有の疾患とは

男性特有の疾患としては、前立腺肥大症や前立腺がんなどがあります。
前立線肥大症は、文字通り前立腺が肥大して、頻尿・排尿困難・残尿感などのさまざまな排尿障害を引き起こす疾患です。単に前立腺が大きくなっているだけでなく、症状が出た場合に初めて前立腺肥大症と診断されます。50歳以上の男性の20%が前立腺肥大症であると推定されています。原因ははっきり特定されていませんが、最も大きな原因として「男性ホルモンの関与」が示されています。治療法は、大別すると薬物療法・手術療法の2つがあり、手術方法は内視鏡やレーザー技術の向上により進歩しています。
前立腺がんは、前立腺の細胞が何らかの原因で増殖を繰り返す疾患です。早期の前立腺がんは、多くの場合で自覚症状がありませんが、がんが前立腺内で大きくなったり、近くの組織に広がると、前立腺肥大症と同じような症状が現れます。さらに、進行して骨に転移すると、疼痛や歩行困難などをきたします。
80歳以上では、20%前後の人に前立腺がんが認められるともいわれ、高齢者に多い疾患の一つです。国内では近年、特に増加傾向にあり、厚生労働省のがん罹患率の短期予測(2017年)では、男性では3位となっています。米国では、30年前から男性の部位別がん罹患数で最も多く、あるデータでは、2020年には国内男性のがん罹患数で1位になるのではと危惧されています(P422、下表)。

PSAテストで前立腺がんの予防を

前立腺がんのメカニズムは解明されていませんが、「加齢」「人種(黒人・白人・黄色人種の順で多い)」「生活習慣」「遺伝(近親者に1人いた場合、2倍かかりやすい)」などの危険因子が分かっています。
治療法は、疾患の進行度などによって変わりますが、無治療経過観察・放射線療法・ホルモン療法・手術などの選択肢があります(下表)。がんの進行は比較的緩やかなため、早期に発見すれば治癒することも可能です。近年、PSAという腫瘍マーカー(判断の目安)を用いた検査・検診で発見される機会が増えています。
PSAとは前立腺特異抗原の略で、前立腺から精液中に分泌されるタンパク質の一種です。前立腺に異常があると、血液中にPSAが大量に放出されて濃度が高くなるため、前立腺がんのマーカーとして使われています。
米国では、90年代からPSA検査が普及し、現在では50歳以上の男性の60~80%が、PSA検査を受けているといわれています。国内では、10数%の受診率でまだ認知度が低いですが、83%の市町村が住民検診でPSAテストを行っています(2015年)ので、お住まいの自治体にお問い合わせください。

女性特有の疾患とその治療法

女性特有の疾患は、急性膀胱炎・腹圧性尿失禁・骨盤臓器脱などがあります。
女性は、尿道が男性より短く、尿道の位置が肛門の近くにあるため、男性に比べて膀胱に細菌が入りやすく、急性膀胱炎などの炎症を起こしやすいといえます。20~30歳代に多く、単純な感染であれば抗生物質ですぐ治りますが、繰り返す膀胱炎は他の疾患の可能性があります。
長引く膀胱炎で「頻尿の程度がひどい」「尿が溜まるにつれて痛み、排尿後は楽になる」などの特徴があれば、間質性膀胱炎の疑いがあります。はっきりした原因は不明で、膀胱粘膜の障害・免疫異常・尿中の物質による刺激などが影響しているのではといわれています。細菌が原因ではないため抗生物質は効かず、対症療法としては食事指導や薬物療法があります。
また、くしゃみなどでお腹に力が入ったときに思わず漏れてしまう腹圧性尿失禁も、悩まれている方が多い疾患です。出産や加齢などによる骨盤底筋の緩みが起因しています。対処としては、緩くなった骨盤底筋を強くする必要があります。主な治療法は、骨盤底筋体操か手術になります。
骨盤臓器脱は、骨盤内にある臓器(子宮・膀胱・直腸など)が次第に下がってくる疾患で、出産や老化などで、それらを支える骨盤底筋が弱くなることが原因です。軽度の場合、生活改善・骨盤底筋体操・装具療法などが有効です。

過活動膀胱(OAB)が増加

現在、国内では高齢社会になり、排尿障害で悩んでいる人が増えています。その中の1つの過活動膀胱(以下、OAB)は、膀胱が過敏になり、自分の意に反して収縮してしまう疾患です。主な症状は「尿意切迫感」「頻尿」「切迫性尿失禁」で(下イラスト)、40歳以上の10数%(810万人)が該当するといわれています(P426下表)。
原因は、神経性のものとそれ以外に大別されます。神経因性は脳卒中やパーキンソン病などの神経障害があるとき、非神経因性は前立腺肥大や骨盤底筋のトラブルなどがあげられますが、ストレスなど特定できない場合もあります。
OABの疑いがある場合は、まずは泌尿器科で受診することをお勧めします。簡単な問診と尿検査などで診断がつきます。OABの治療は、投薬・電気刺激・行動療法がありますが、特に生活指導や膀胱訓練といった行動療法が有効です。
ご自身がOABかどうかについて、P427の過活動膀胱症状質問票(OABSS)を参考にしてみてください。

専門医・かかりつけ医・患者の連携が大切

泌尿器科は外科系の診療科のため、小規模な医療施設でも、一定の手術を行う技術と設備が備わっている場合が多いかと思います。また、泌尿器科の疾患は、神経や脳の疾患や糖尿病など他の内科疾患に関わることもあり、そうした知識と紹介のネットワークを持っています。
中規模以上の病院では、一般的な疾患に加え、がんや難治性の疾患などに対してより高度で専門的な検査・治療を行っています。また広島県では、5大がんに加えて前立腺がんについても地域連携パスの整備を進めており、「急性期の治療を行う病院」「回復期を担う地域のかかりつけ医」「患者さん」での、スムーズな情報共有を図っています。
ちなみに広島大学病院では、泌尿器がんの治療や、排尿障害の高度な機能的診断・最先端治療を行っています。痛みや出血が少ない方法(低侵襲治療)をめざしており、その一つとしてロボット支援手術を積極的に活用しており、前立腺・腎細胞・膀胱がん合わせて559人の実績があります(2017年12月までの累計)。
ロボット支援手術は有効な手術の一つですが、どの治療が最適かは症状・部位・年齢などにより異なります。がんに限らず、治療法に関しては術後の対応も重要ですので、かかりつけ医や専門医とよくご相談ください。

少しでも不安や悩みがあれば気軽に受診を

良いかかりつけ医とは「疾患や治療方法の説明を十分にしてくれる」「行動療法など専門的で根気のいる方法を教えてくれる」「専門的な治療が必要と判断したときに、すぐに他の医療機関を紹介してくれる」先生だと思います。
現在は、医薬の進歩で排尿の問題は良くなることが多くなっています。歳のせいとあきらめずに、少しでも不安や悩みがあれば気軽に受診してみてください。

変わりつつある皮膚科疾患の治療

生物学的製剤の進歩 関節リウマチやがんに対して使用されていた生物学的製剤(以下、生物製剤)は、ここ数年、皮膚科領域でも使用されるようになりました。生物製剤とは、これまでのような化学的に合成した医薬品ではなく、生物が合成す ...

変わりつつある皮膚科疾患の治療

生物学的製剤の進歩

関節リウマチやがんに対して使用されていた生物学的製剤(以下、生物製剤)は、ここ数年、皮膚科領域でも使用されるようになりました。生物製剤とは、これまでのような化学的に合成した医薬品ではなく、生物が合成するタンパク質から作られる医薬品です。高価で、重い感染症にかかっている人には投与できないなどの制約があり、全ての患者さんに使えるわけではありません。投与できるかどうかは、基本的には総合病院で血液検査や、胸部・関節などの画像検査の結果を踏まえて判断します。

乾癬、じんましんの最新治療

生物製剤によって大きく変わったのが乾癬とじんましんの治療です。乾癬は、30~50歳代で発症することが多く、いったん発症すると根治することはほとんどありません。直接命にかかわることはないのですが、関節症状を伴い、患者さんのQOL(生活の質)が大きく妨げられることが多い病気です。遺伝的背景、食生活、メタボリックシンドロームとの関係が深いといわれています。
現在、乾癬に対して多くの生物製剤がありますが、いずれも患者さんの費用負担が少なくありません。また、重篤な感染症や結核の人には使えないか、慎重に使います。さらに、開業医のもとで治療を続ける場合は認定施設との連携が必要です。
2017年には内服薬も登場しました。生物製剤より効果は弱いですが、副作用の危険が少なく、使用する施設の制限もないため、開業医の間でも使われ始めています。外用薬(付け薬)も変化しています。従来はステロイドとビタミンD剤が基本でしたが、その両方を合わせた、効果の高い薬が登場しています。ただし、結核や肝炎の人は使わない方がよく、また、感染症を起こすことがあるので継続的に経過観察をする必要があります。
じんましんの治療でも、2017年から新しく生物製剤の一種が保険適用になりました。明らかな原因がなく、毎日のように症状を繰り返す慢性じんましんの患者さんに高い効果が認められます。
高価な薬ですが、乾癬の生物製剤よりは安く、皮膚科専門医またはアレルギー専門医が勤務し、喘息やアナフィラキシーショックの症状に対応できる施設であれば使用できます。ただし、じんましんの中でも対象となる病型が限られているため、開業医の場合はそういうじんましんを適切に診断し、総合病院に紹介できる役割が求められます。

変わってきたアトピー性皮膚炎の治療法

生物製剤の使用は、アトピー性皮膚炎の治療に広がりつつありますが、最近、既存の外用薬を用いたプロアクティブ療法という方法が注目されています。
従来は、症状が治まったら次第に弱いランクの薬に下げていきましたが、プロアクティブ療法では、アトピー性皮膚炎が軽快した後もしばらく同じステロイド外用薬の使用を続け、十分に炎症が治まってから徐々に薬を塗る回数を減らします。最終的には、保湿剤のみ、または症状が現れたときのみ外用することで、再発や再燃(ぶり返し)の頻度や重症化が減ることが期待されます。
ステロイドは、炎症を取るためには非常に強力な手段ですが、いきなりやめると激しくぶり返すなど、正しい使い方をしないと危険です。アトピー性皮膚炎では、一見治ったように見えても目に見えない軽い炎症が持続していて、何かの刺激で再び悪化するという研究データもあります。皮膚炎が良くなって正常(に見える)皮膚にステロイドを塗り続けることに不安や抵抗感を抱く人が多いのですが、多くの患者さんがこのやり方で良くなっています。医師には薬の使う量、塗り方、使う期間を患者さんごとに対応していくことが求められます。
ステロイドの副作用には、皮膚が薄くなったり、毛細血管が拡張して赤く見えるなどあり、年齢の高い人に現れやすい傾向があります。なお、皮膚が茶色に変色するのは、強い炎症が治った際に現れる色素沈着で、薬の副作用ではありません。
アトピー性皮膚炎の炎症を抑える外用薬には、ステロイドのほかにタクロリムス(プロトピック®)軟膏があります。ステロイドほど効果は高くありませんが、やめてもすぐにぶり返すことはありません。ただし、紫外線に当たり過ぎない、使い始めに刺激感を感じるなどの注意点があります。また、この薬は免疫力を下げるため「がんになるのでは」と心配する人がいますが、適切な使い方をすれば問題ありません。
現在、新しい種類の外用薬の臨床治験が進行中で、承認されるとステロイド、タクロリムスに続く、アトピー性皮膚炎に対する第3の外用治療薬となることが期待されます。

皮膚がん、尖圭コンジローマの治療

皮膚がんに対しては、現在も切除が基本ですが、一部の皮膚がんについては塗り薬も現れています。また、がんが免疫力を弱めるしくみを抑えることにより、生体本来の免疫力を強化する抗体医薬も出てきました。そのほか、頭にできやすい血管のがんでは、抗がん剤と放射線治療の成績が良くなり、あまり手術は行われなくなりました。さらに、ほかのがんも含めて分子標的治療(内服薬)も使えるようになり、皮膚がんの治療は大きく進歩しています。がんが心配なときは、早めに近くの皮膚科医を受診し、必要に応じて適切な専門病院を紹介してもらうのがベストです。
尖圭コンジローマはイボの一種で、赤ちゃんにできることもありますが、ほとんどが性感染症です。従来は細胞を凍結・破壊する治療や電気メスで焼き切る治療を行っていましたが、現在は自宅で一定時間塗布した後、洗い流す外用薬による治療が主流となりました。

信頼できるかかりつけ医とは

良いかかりつけ医としては、単に薬を処方して終わりではなく、病気の説明や薬の使い方、生活の指導もしてくれる先生。また、各地で開かれている皮膚科医の勉強会に積極的に参加して情報交換し、絶え間なく新しい知識を取り入れている先生。より専門的な治療が必要と判断したときは、迷わず総合病院に紹介する先生。最後に、標準的な治療を踏まえて各々の患者さんに合った治療をする先生がお勧めです。以上の視点で、ご自分に合ったかかりつけ医を選んでください。

耳鼻咽喉科疾患の最新治療とかかりつけ医の役割

嚥下障害をチームでサポート 耳鼻咽喉科がカバーするのは「聞く」「話す」「食べる」「呼吸」という、人間の日常生活に欠かせない分野です。昔から疾患として多いのは上気道の感染症、いわゆる中耳炎・鼻炎・副鼻腔炎などですが、最近患 ...

耳鼻咽喉科疾患の最新治療とかかりつけ医の役割

嚥下障害をチームでサポート

耳鼻咽喉科がカバーするのは「聞く」「話す」「食べる」「呼吸」という、人間の日常生活に欠かせない分野です。昔から疾患として多いのは上気道の感染症、いわゆる中耳炎・鼻炎・副鼻腔炎などですが、最近患者さんの数が急増しているのが、アレルギー性鼻炎や花粉症です。
また、高齢化が進む中で話題になっているのが誤嚥性肺炎で、嚥下(飲み込み)の診断・治療に重点が置かれています。誤嚥の判定ができるのは耳鼻咽喉科だけで、脳血管障害で嚥下できない患者さんが上手に食べられるようになるためには、耳鼻咽喉科医の担う役割が大きいです。
嚥下障害に関しては、私たち耳鼻咽喉科医のほか、歯科医・看護師・言語聴覚士・管理栄養士などがサポートチームをつくって、入院患者さんに対応するのが原則です。今後は、患者さんが退院して家に帰ってからの在宅ケア(地域包括ケア)にも、耳鼻科医が積極的に関わっていこうという議論が行われています。広島県でも最近、嚥下障害診療における在宅医療検討委員会を年に3~4回開催し、症例検討会を行って在宅ケアに積極的に取り組もうとしています。

花粉症に良質な薬が登場

花粉症などのアレルギー性疾患は、生活環境や食生活が関わっているといわれていますが、基本的には体質が主因です。今や、国民の3~4割に素因があるといわれているほど数多い疾患です。治療は薬物治療が主で、最近は良い薬がたくさん出ており「眠気を催さない」「効果が高い」「持続時間が長い」などの薬が開発されています。
しかし、花粉症は命に関わる病気ではないため、医療機関を受診する患者は4割程度。そのうち、耳鼻科を受診するのは症状の重い1~2割の人だけで、かかりつけの内科や整形外科で処方してもらう人が多いのが現状です。実際に鼻の中の所見をとって、症状に合った治療が的確に行えるのが耳鼻科の強みです。重症になると、投薬ではなかなか効果が得られないため、レーザー治療などの手術的治療が必要なこともあります。

慢性副鼻腔炎と中耳炎の治療

慢性副鼻腔炎(蓄膿症)は、昔と違って現在は良い薬があるため、薬物治療で約7割が治ります。かつては、いわゆる鼻たれ小僧といわれる副鼻腔炎の子どもがたくさんいました。細菌感染が原因でしたが、現在はそうした副鼻腔炎は減少し、代わりに40~50歳代以上に多い、喘息などのアレルギーと関係のある新しい副鼻腔炎が増加しています。治療や手術の方法も1990年頃から変わってきており、低侵襲(体への負担が少ない)な手術になっています。
また、子どもに多い急性中耳炎にも良い薬(抗菌剤)が開発されています。一時、耐性菌が問題になりましたが、現在は学会のガイドラインで抗菌剤の使い方が定められており、開業医でも十分に治療が可能です。慢性中耳炎も少なくなり、全国的にも手術件数は減少しています。そうした背景には「良い薬が開発されてきたこと」「内視鏡・手術用顕微鏡が普及して、診断技術が上がっていること」「CT・MRIで的確な診断が可能なこと」などがあげられます。

増えている高齢者の難聴

難聴には、突発性難聴と感音難聴があります。
突発性難聴は治る可能性がある神経性難聴で、早期に医療機関を受診して治療した方が、治る可能性が高いというデータがあります。発症後1か月が経つと治る可能性は低くなり、1~2週間以内に治療した方が良い、準急患のような疾患です。原因は現在でも不明で、治療はステロイド投与が標準的です。
感音難聴の多くは加齢によるもので、年齢とともに徐々に聴力が落ちてきます。高齢者の難聴は増えており、昨今その対応に力が入れられています。通常は治らないことが多く、補聴器を使うことになる人が多いです。補聴器選びで失敗しないためには、耳鼻科で診断・聴力検査を行ったあと、医師から補聴器販売業者を紹介してもらうことをお勧めしています。大きな音を長く聞くことは難聴の原因になり、ヘッドホンの大きな音による若者の難聴も問題になっています。

めまいは、まず耳鼻科を受診しましょう

めまいは、耳が原因で起こる内耳性のめまいと、脳腫瘍などの中枢性のめまいがあります。耳鼻科で治療するのは内耳性のめまいで、中でも最も頻度が高いのは良性発作性頭位めまいです。めまいが起きて原因が分からない場合は、まずは耳鼻科を受診して検査を受け、中枢性が疑われたらMRI検査となります。めまいを繰り返すと、内科などでメニエール病と誤診断されることがありますが、メニエール病は決して多くはない病気です。めまいの診断は、耳鼻科であれば開業医クリニックでもある程度可能ですが、詳しい検査は大きい総合病院などが適切です。めまいに対する特効薬はなく、血圧や血液循環を良くしたり、吐き気を抑えるなど、内服薬による対症療法的な治療になります。
がんは、首から上のがん(喉頭・咽頭・舌)が耳鼻科の領域で、治療は大きな総合病院で行います。増加傾向にあるのが咽頭がんで、中でも中咽頭がんは子宮頸がんと同じく、ヒトパピローマウイルスが原因で起こることがあるため、子宮頸がんのワクチンが普及すれば減少する可能性があります。

話をよく聞いてもらえるかかりつけ医へ

耳鼻科の一般的な病気は、例えば副鼻腔炎でも投薬による保存的治療で治るようになってきており、普段は自分の通いやすいかかりつけのクリニックで診てもらうのが一番です。そこで何か月か治療しても、コントロールが難しかったり、なかなか治らなければ大きな病院に紹介してもらい、手術などを選択することが治療の流れとしては最適です。もし大学病院などへ飛び込みで来院してみても、まずは薬で様子を見ることになるのが現実です。
広島県の耳鼻咽喉科医療のレベルは高く、勉強会などにも頻繁に参加される熱心な開業医の先生も多くおられます。経験がある程度あり、一定基準の検査がきちんとできて、自分の守備範囲を超える場合は専門の大きな病院へ早期・的確に紹介してくれる先生が身近にいることが望ましいです。患者さんにとっては、自分の要望をきちんと伝えることが重要で、話をよく聞いてもらえるかかりつけ医を選びましょう。

広島県の眼科診療は高い水準 かかりつけ医も高レベル

緑内障治療は全国トップレベル 眼科医療の世界は、ここ10年くらいで診断・治療のための機器、技術、薬のいずれも非常に進歩しています。広島県の眼科医療は、広島大学病院を中心に良質な医療が県内の各病院や開業医にまで展開されてお ...

広島県の眼科診療は高い水準 かかりつけ医も高レベル

緑内障治療は全国トップレベル

眼科医療の世界は、ここ10年くらいで診断・治療のための機器、技術、薬のいずれも非常に進歩しています。広島県の眼科医療は、広島大学病院を中心に良質な医療が県内の各病院や開業医にまで展開されており、高い水準が保たれています。
失明(視覚障害)の原因となる目の疾患の1位は緑内障、2位が糖尿病網膜症、3位は網膜色素変性症、4位が加齢黄斑変性となっています。
緑内障は、視神経に障害が起こって視野の中に見えない部分ができ、それが広がっていく病気です。40歳以上で20人に1人、70歳以上で10人に1人が発症し、最終的には失明に至るケースがあります。身近な病気の割に、治療を受けているのは罹患者の1割程度で、残りの9割は放置していると考えられています。
緑内障の原因ははっきりと解明されていませんが、発症には眼圧が大きく関わっています。診断方法は、眼圧検査・眼底検査・視野検査などが代表的です。近年は、3次元画像解析(OCT/光干渉断層計)による検査が行われるようになり、早期診断に役立っています。緑内障では、広島大学の木内良明教授が全国的に見ても高い医療を行っており、手術実績でも全国トップレベルです。

各総合病院で高レベルの硝子体手術が可能

糖尿病は、患者の増加が社会問題になるほど多い病気で、糖尿病網膜症は糖尿病患者の15%の有病率という調査結果があります。この病気に関しては、網膜光凝固術や硝子体手術、糖尿病黄斑浮腫に対する治療などがあります。
硝子体手術は、広島大学病院を中心に県立広島病院、広島市民病院、広島赤十字・原爆病院、吉島病院、広島記念病院、広島市北部や県北をカバーする安佐市民病院、市立三次中央病院、県東部をカバーする尾道総合病院、福山市民病院、呉市では呉医療センターなど各地の総合病院で行われており、全国レベルの医療が可能です。
加齢黄斑変性は、年齢を重ねるとともに、網膜色素上皮の下に老廃物が蓄積して網膜が障害されたり、発生した異常な血管からの出血や漏出液のため、視力が低下していく病気です。一般的にはまだ馴染みの薄い病名かもしれませんが、欧米では成人の失明原因の第1位であり、国内でも、高齢化と生活の欧米化により近年急激に増加し、現在では50歳以上の約1%に見られます。この病気も、広島県では開業医も含め、全国的に見ても劣ることのないレベルの医療が提供されています。
白内障は、主に加齢が原因で水晶体が濁る病気で、70歳代の8割以上に発症するといわれるポピュラーな病気です。白内障にはいくつかのタイプがあり、状態・進行予測・治療などについては、眼科で診察しないと分かりません。
治療は薬物治療(点眼・内服)と手術になります。薬剤は病気の進行を遅らせることはできますが、あくまでも対症療法であり、根本的な治療は手術となります。手術は、濁った水晶体を超音波で砕いて取り出し、眼内レンズを入れる方法が一般的です。白内障手術も、県内で多く行われています。

千田町夜間急病センターが眼科救急に対応

広島大学病院が全国区だとすれば、それを中心に準全国区といえる病院が県内各地にあり、さらにそれらの病院と開業医との病診連携がしっかりできています。失明の予防をする必要がある重要な疾患に関しては、広島県は開業医も含めてレベルが高く、開業医で対応が難しい場合は各地の病院でカバーしています。
また、角膜疾患・腫瘍・眼形成手術などの症例数は少ないため、各病院で手薄な部分に関しては広島大学病院に紹介し、幅広く対応するシステムができています。特に、角膜疾患による視力障害については、広島大学病院を中心に角膜移植手術が行われています。角膜内皮移植は低侵襲(患者の負担が少ない)の手術で、全国的にもトップレベルの成績となっています。
広島市の眼科医療で特異なのは、千田町夜間急病センター(広島市中区千田町)で、内科とともに眼科の初期救急診療を行っていることです。ここでは毎日、広島県眼科医会の会員が交替で夜間(19:30~22:30)の急患に対応しています。一人ひとりの医師が意識高く地域医療に取り組んでおり、こうした取り組みは、全国的にも一つのモデルとして注目されています。

目覚ましい進歩を遂げる眼科治療

現在では治療が進歩しており、各病気の失明に至る率は下がっています。要因の一つは、検査機器の急激な進化です。OCT(光断層干渉計)はその代表で、眼底網膜組織の断面図を見ることができ、加齢黄斑変性症や緑内障など多くの疾患の早期診断ができます。現在では、多くの開業医がこの機器を備えています。
治療薬も、ここ10年くらいで目覚ましく進歩し、特に糖尿病網膜症や加齢黄斑変性では非常に良い薬が開発され、主に眼内に投与することで視力の改善や維持につながっています。緑内障治療薬として作用機序の異なる数種類の点眼薬が開発されており、2種類の薬剤が一つになった点眼薬も増えたりしています。

最新治療が提供可能な県下のかかりつけ医

眼科の病気で一番問題になるのは、初期の段階では自覚症状がほとんどないことです。失明に至る各病気は、40歳代から次第に増えてきます。自覚症状が現れたり、視力が落ちた段階では相当病気が進行している場合が多く、また症状が出てからでは治療法が限られるため、早期発見・治療が重要になります。
それぞれの開業医がレベルの高い診療を行っており、受診すれば高い確度で疾患を見つけてくれます。40歳くらいを境に検診を受け、かかりつけ医に定期的に受診すれば早期発見が可能です。視覚を健全に保つためにかかりつけ医を持ちましょう。
眼科には、日本眼科学会による専門医制度があり、ほとんどの開業医の先生は眼科専門医を獲得しています。この資格は5年ごとに更新され、その間、きちんと学会や講習会などに参加して勉強しなければ、資格の更新を受けられません。また、専門医資格の有無を問わず生涯教育が充実しており、どの開業医の先生も高いレベルを保っていて、クリニックごとの遜色はないと考えます。
ただし、医師との相性もありますから、ご自分の地域の眼科医を探して、一度受診してみて信頼できるかかりつけ医の先生を見つけてください。あるいは、ご自分のかかりつけの内科や整形外科の先生などに相談して、眼科医を紹介してもらうのも一つの方法だと思います。

良いかかりつけ医を持ちましょう

医療バランスと地域連携の充実 広島県では、保健医療の基本単位として、県内を7つの医療圏に分けて設定しています。広島、広島西、呉、広島中央、尾三、備北、福山・府中の各医療圏です。県内の他地域と比べてこの福山・府中圏域では、 ...

良いかかりつけ医を持ちましょう

医療バランスと地域連携の充実

広島県では、保健医療の基本単位として、県内を7つの医療圏に分けて設定しています。広島、広島西、呉、広島中央、尾三、備北、福山・府中の各医療圏です。県内の他地域と比べてこの福山・府中圏域では、病院(総合病院)と診療所(開業医)の連携や大中小それぞれの病院の関係などに、大きな違いはないと考えます。

福山・府中圏域は広島県東部に位置し、岡山県と県境を接しています。福山市内の病院では、設立年代順ですと福山医療センター、中国中央病院、日本鋼管福山病院、福山市民病院(公的4病院)が中核を担っています。また、脳神経センター大田記念病院・福山循環器病院などの民間専門病院が、圏域の急性期医療において大きな役割を果たしていることも、特徴ではないかと考えます。

しかし、同圏域の医師・看護師の数は、人口10万人に対して全国平均以下となっており、残念ながら医療資源は決して恵まれてはいません。中でも大きな課題は、地域全体に若い医師や看護師の人数が絶対的に少ないことです。現在、同地域には看護学校が2校しかありませんが、今春福山地区に看護師の養成学校ができると聞いています。

もう一つの課題が、24時間365日に小児救急に対応できる病院がないことで、小児の救急患者が入院できる病床と医師の確保が、圏域の大きな課題となっています。

医療バランスとしては、高度急性期・急性期・回復期・慢性期のどの段階の患者さんも、他地域から頻繁に出入りがあるということもなく、この圏域の住民の9割は地元で医療が完結できていますし、基本的には地域の連携は取れていると考えます。

2025年に向けて求められる医療機能の分化

国は、団塊の世代が後期高齢者となる2025年を見据えて、医療改革の実施を計画中です。地域で必要とされる医療構想を構築していくための地域医療構想調整会議が、各種団体からの代表者によって発足しています。

その中の1つが医療機関の機能分化です。つまり、同じ地域の病院が同じような医療を行うのではなく、症状が出たらまず「かかりつけ医」による医療、そこからの紹介で手術などを行う「急性期」の医療、そしてリハビリなどの「回復期」の医療、介護が必要なら「在宅か介護施設へ」という、病院から次の病院や施設への地域完結型医療の確立を考えています。

また、無駄な医療費を抑えるために、かかりつけ医からの紹介状のない初診の方に対して、400床以上の病院受診時の加算初診料も導入されました。

病院医療についてお話しすると、「地域の中で、必要な病床数を調査・検討を行って決めてください」いうのが、国の基本的な考え方です。その中で、この圏域の課題は、現在、各病院が報告している機能別病床数と2025年に福山・府中圏域で必要とされる機能別病床数、特に急性期病床数と回復期病床数に解離があることで、これから2025年に向けて、急性期病床から回復期病床への病床機能の転換が行われるのではないかと考えています。

機能の異なる病院同士の連携は可能性がありますが、同じ機能を持つ病院と病院の連携は難しいでしょう。しかし、医療需要の拡大が見込めない中、たとえば急性期病院同士であっても、お互いが強みを生かすような疾患領域別の分化や連携は必要になっていくと考えます。

かかりつけ医を持つメリットとは

かかりつけ医について、日本医師会では「健康に関することを何でも相談でき、最新の医療情報を熟知して、必要なときには専門医や専門医療機関を紹介してくれる、身近で頼りになる医師のこと」と位置付けています。

患者さんご自身の生活圏内に開業されている、内科系か外科系で全身を診ることのできる先生がいらっしゃれば、風邪や少しの体調変化でもまずは相談し、その先生と「顔を知り、顔を知られる関係」を作って親しくなることが、まずは最初の段階だと思います。そうなれば、何でも相談することができます。

さらに言えば、私の世代が子どもの頃の田舎の医師のように「健康相談を拒まず、家族構成までも把握しているほどの地域に根付いた先生」が、本当のかかりつけ医だと考えます。その上で「かかりつけ医の施設での診療と、その先の必要な医療は紹介する」といった信頼関係ができていくと思います。

また、かかりつけ医を持つメリットの1つに「検診の受診率が高くなり、がんなどの疾患も早期に見つかることで、患者さんの健康や生活に役立つこと」があります。現状では、この圏域のがん検診受診率は低く、改善が求められています。かかりつけ医の先生方には、検診をぜひ勧めてほしいですね。病気の早期発見は、医療費の軽減にもつながります。皆さんが健康に過ごしていただくために「がんを防ぐための新12か条」(禁煙・節酒・バランスの取れた食事・減塩・適度な運動など※2017年(公財)がん研究振興財団公開、下表)なども参考に、定期的な検診や早期受診を心がけていただければと思います。

また、病院の医師の立場からすると、かかりつけ医での診療で本当に専門的治療が必要かどうかの調べがついていると、効率的で仕事の負担軽減にもなります。そうすることで、他の患者さんの診療に時間を使えるメリットにもつながるのです。

かかりつけ医は、地域と病院を結ぶ橋渡し役

私は、かかりつけ医は「地域と病院の出入口を結ぶキーパーソン、橋渡し役」だと思っています。現在、福山地域でも訪問診療だけを行う地域に根差した開業医も出てきています。これからは、病診連携だけでなくクリニック同士も連携したネットワークづくりが、地域医療を支えるためには大事だと考えます。

現代は、何か病気になって治っても、また次の病気が見つかる時代です。繰り返し、長期にわたるケアが必要な時代になっています。かかりつけ医に「広く、長く」、生活習慣病のチェックなどの健康管理をしてもらうことが大切ですので、ぜひ身近で良いかかりつけ医を持っていただきたいと思っています。

高血圧など循環器系疾患との上手な付き合い方

「薬を飲んで血圧を下げた方が長生きできる」 高血圧は日本人に多い病気ですが、適切に治療をしなければ全身の動脈硬化を引き起こし、将来的には心臓病や脳卒中などのさまざまな病気になる場合があります。心臓病になりやすい危険因子と ...

高血圧など循環器系疾患との上手な付き合い方

「薬を飲んで血圧を下げた方が長生きできる」

高血圧は日本人に多い病気ですが、適切に治療をしなければ全身の動脈硬化を引き起こし、将来的には心臓病や脳卒中などのさまざまな病気になる場合があります。心臓病になりやすい危険因子としては、高血圧・脂質異常症(高脂血症)・糖尿病・喫煙の4つが主に挙げられます。

高血圧・脂質異常症・糖尿病には自覚症状がありません。では、自覚症状のない病気を何のために治療するのかというと、これらの病気を放置しておくと、後に心臓病や脳卒中になりやすいためです。つまり、予防医学にあたります。高血圧・脂質異常症・糖尿病は、運動不足、食べ過ぎ、塩分の摂り過ぎなどの生活習慣と、各々の体質に原因があります。治療としては、まずは運動不足や食生活などの生活習慣を改善することで、それらで十分な効果が得られなかった場合には、薬物療法の開始となります。

ここで大切なことは、風邪薬なら風邪が治れば服用を止めればよいのですが、高血圧・脂質異常症・糖尿病などの薬は、内服開始後に血圧・血糖値・コレステロール値が下がっても、服用を止めるとほとんどの人で再び数値が悪化します。なぜなら、これらの病気の原因は生活習慣と各々の体質に原因があるからです。よほど努力して運動をしたり、ダイエットで体重が減少したりしない限り、人間の体質はなかなか変わらないからです。

薬を服用し続けることでの副作用を心配する人がいますが、現在一般に使われている降圧剤(高血圧の薬)の副作用の頻度は極めて低いですし、降圧剤には大きく6種類の作用機序の異なる系統の薬があり、同じ系統の薬にも少しずつ効果や副作用の異なる多くの種類の薬がありますから、副作用が起こったら別の薬に変えればよいのです。副作用を気にして飲まないより、「薬を飲んで血圧を下げた方が長生きできる」という科学的なデータもあります。高血圧をそのままにしておくと、腎臓・心臓・脳・血管などのさまざまな臓器に悪影響が出ます。中でも怖いのは、心臓病や脳卒中を起こす危険性が高いことです。

食事・運動療法を基本に、薬物療法でコントロール

高血圧の標準的な治療は、まずは食事療法・運動療法といった生活習慣の改善が基本です。白衣高血圧といって、「病院では血圧が高いけれど、家に帰ると低くなる」人もいますから、まずは自宅で血圧を定期的に測り、本当に血圧が高い状態が持続しているかを確かめます。

また血圧が高い場合、年齢・元々の基礎疾患・家族歴などにより、心臓病や脳卒中などのリスクも人それぞれ異なります。すでに心臓肥大・虚血性心疾患・脳血管疾患・腎臓病などの、高血圧による合併症が認められる場合には、すぐに降圧剤の内服治療を開始しますが、リスクが低い場合には血圧をすぐに下げる緊急性はないので、1〜3か月の猶予期間を持って、その間に食生活を改善して適度な運動を心がけてもらいます。それで血圧が下がれば薬を飲まなくてもよいのですが、下がらなかった場合には降圧剤を処方します。

軽症の高血圧であれば、循環器の専門医でなくても降圧剤による血圧コントロールは可能です。ただし、中々血圧が下がらずに降圧剤を3〜4剤必要とするような場合には、循環器専門医によるコントロールが必要です。しかし、降圧剤で血圧がコントロールできて安定していれば、循環器専門医でなくてもかかりつけ医(開業医)に同じ薬を処方してもらえば問題ありません。体調の変化などで血圧が下がり過ぎた場合や、逆に上がってきたりした場合には、再び専門医にかかって調整してもらえばよいと思います。そこで再度血圧コントロールができたら、再びかかりつけ医で診てもらえばよいのです。

高血圧の薬は一生飲み続ける必要がありますから、近所のかかりつけ医で長期間にわたって診てもらう方が、患者さんにとってはメリットが大きいと思います。

かかりつけ医にかかるメリットとは

狭心症や心筋梗塞になった場合には、専門の総合病院で治療して、治療が終わればそれらが再発しないように、より厳格に高血圧・脂質異常症・糖尿病などの治療を行います。そしてこれらの疾患が安定してくれば、近くのかかりつけ医のもとで2次予防としての治療の継続となります。

ただ、一度心臓病になるとほとんどの人が不安に感じ、「何かあったときに心配だから……」といって、そのまま総合病院の外来で治療を希望する患者さんが大勢います。しかし、何かあったときにはかかりつけ医の指示で専門医のいる総合病院に行くことになりますから、総合病院・かかりつけ医のいずれにかかっていても、きちんと専門医に診てもらえるので大丈夫です。むしろ、かかりつけ医での簡単な検査や処置で問題が解決することもあり、総合病院まで行く必要がないこともあるので、患者さん・病院の両方にメリットがあります。

さらに、かかりつけ医は全身を診てくれるため、心臓病以外の病気になったときも適切な専門医に紹介してもらえるので安心です。総合病院の循環器内科の外来で「お腹の調子が悪い……」と言われても、専門外の疾患には対応できないことが多いのです。

糖尿病などの生活習慣病と上手に付き合うために

糖尿病、高脂血症の原因と特徴 三大栄養素と呼ばれる、糖質(炭水化物)、脂質(脂肪)、たんぱく質のうち、さまざまな原因により糖代謝が障害され、血液中の糖の濃度(血糖値)が異常に上昇するのが「糖尿病」です。一方、脂質代謝が障 ...

糖尿病などの生活習慣病と上手に付き合うために

糖尿病、高脂血症の原因と特徴

三大栄養素と呼ばれる、糖質(炭水化物)、脂質(脂肪)、たんぱく質のうち、さまざまな原因により糖代謝が障害され、血液中の糖の濃度(血糖値)が異常に上昇するのが「糖尿病」です。一方、脂質代謝が障害され、血液中の脂質であるコレステロールや中性脂肪の濃度が上昇するのが「高脂血症」です。濃度が低下する「低脂血症」も異常なので、最近では高脂血症と低脂血症を合わせて「脂質異常症」と呼ぶことが一般的です。

どちらの疾患も遺伝素因の影響がありますが、食生活の欧米化や運動不足といった生活習慣の関連が大きく、「高血圧」と並んで「生活習慣病」と呼ばれ、それぞれが動脈硬化の危険因子と考えられています。そして肥満、特に内臓脂肪の蓄積による腹部肥満を基盤にして、このような多くの危険因子が複合した状態を「メタボリックシンドローム」と総称しています。

糖尿病や脂質異常症は、発症初期の軽微な段階では自覚症状がないので、血液検査を受けない限り、自分がその病気になっていることに全く気付きません。そこが最大の落とし穴です。代謝異常に気付かないまま何不自由なく過ごしていても、血液中の糖や脂質の濃度は高いまま、全身の血管が障害されている可能性があります。糖尿病の場合は、細い血管が障害されると、網膜症、腎症、神経障害といった特有の合併症を生じます。また、糖尿病および脂質異常症では、脳や心臓の太い血管が詰まり、脳梗塞や狭心症、心筋梗塞などの「動脈硬化症」を引き起こします(図1参照)。

血液検査で診断を行う

糖尿病の検査としては、その名の通り尿糖を調べていた時代もありましたが、現在は糖尿病も脂質異常症も診断は血液検査で行います。自治体が40歳以上の住民に実施している特定健康診査(いわゆるメタボ健診)や、多くの施設で行われている生活習慣病健診などで簡単に調べられます。

血糖値や中性脂肪値は食事の有無によって値が大きく変わるので、健診時には空腹時の採血で判定するのが一般的です。しかし、最近は空腹時の血糖値は正常範囲内であっても、食後に血糖値が急上昇する「食後高血糖」「血糖スパイク」が問題になっています。これらは、糖尿病の前段階であるとともに、動脈硬化を引き起こすことが分かっています。ほかには、HbA1c(ヘモグロビンエーワンシー)という1〜2か月間の平均血糖を示す指標があって、正常は6・2%未満ですが、6・5%以上になると糖尿病の可能性が高くなります(図2参照)。

治療は生活習慣の改善が基本

食事療法が最も重要ですが、ここで強調したいのは糖尿病は糖質(炭水化物)を、脂質異常症は脂質(脂肪)を、単にそれらのみを制限すれば良いというものではありません。ある1つの栄養素の摂取を制限すれば、血液検査でその栄養素が一時的に改善することはあるかもしれませんが、栄養素バランスを崩した食事を長期にわたって続けることで他の健康被害を生じ、結局は健康長寿につながらないことになってしまいます。

食事療法の基本は、適正な摂取カロリー(量)と栄養素バランス(質)、そして規則正しい食生活です。具体的には3度の食事を腹八分、正しい時間にきちんと食べ、間食を控えることです。最近の研究では、食べる順番も重要だとされていますが、野菜を食事の最初にしっかり食べることを心がけるだけで随分良くなると思います。

薬物療法は、食事や運動などの生活習慣の改善を行った上で、それで効果が乏しい場合の補助的治療法と捉えてください。糖尿病の治療薬としては、日本では現在7種類の経口血糖降下薬と、2種類の注射製剤(インスリン、インクレチン)がありますし、脂質異常症の治療薬も、主にコレステロールを下げるものと中性脂肪を下げるものとがあります(図3参照)。

広島県の糖尿病医療体制

広島県では、「広島、広島西、広島中央、呉、尾三、備北、福山・府中」の7つの医療圏に分け、各医療圏に糖尿病を専門とする内科医師が勤務する中核病院を配置し、その地域の他の病院・施設や開業医のクリニックと地域連携体制を構築しています。また、そのような中核病院には、糖尿病専門医のほかに、「糖尿病療養指導士」と呼ばれる資格を持った看護師、薬剤師、栄養士、理学療法士、検査技師たちがチーム体制をつくり、糖尿病患者に対して専門的な指導や教育活動を実施しています。しかし、それぞれの医療圏において、多くの糖尿病患者が1つの中核病院に集中すると、糖尿病専門外来では十分な診療ができず、それは地域にとってマイナスです。

そこで、普段の血液検査やきめ細かい丁寧な診察は、かかりつけ医のクリニックで行い、数か月〜半年ごとに糖尿病専門の中核病院でもう少し詳しく合併症の検査を受け、栄養士に食事の相談をするなど、糖尿病療養指導士にさまざまな指導をしてもらうのが良いと思います。そのときに大変役に立つのが「糖尿写真1 糖尿病連携手帳(日本糖尿病協会発行)病連携手帳(写真1)」です。血液検査や合併症検査の結果を記録してもらいましょう。①普段の診療はかかりつけ医、②定期的な合併症検査や入院治療は中核病院、③そして年に1回はがん検診や人間ドック、というように、自分の体全体を複数の医師や医療関係者に総合的に診てもらう、これが効率的で上手なかかり方だと思います。

生活習慣病との上手な付き合い方

各地域の医療機関において、糖尿病患者やその家族を対象とした勉強会(糖尿病教室)や、糖尿病を理解してもらうための啓発活動が行われています。また、毎年10月にはウォークラリー(写真2)、11月14日の世界糖尿病デーには大規模なブルーライトアップイベントが催され、医療関係者を中心に、患者さんや一般の方など多くの人がともに考える場をつくっています。

糖尿病をはじめとする生活習慣病は、生涯にわたって付き合っていかなくてはならない病気です。一人であれこれ悩んで悲観せず、多くの医療関係者や自分と同じ病気の患者さんと話し合い助け合いながら、病気と一緒に人生を楽しく歩んでいくことが、生活習慣病と上手に付き合う秘訣だと思います。

呼吸器の病気と上手に付き合うために

充実した広島県の呼吸器疾患医療体制 広島県は全国的に見ても呼吸器内科の医療機関が充実しており、そのため広島県民は肺がんをはじめとする呼吸器疾患に関して、安心して受診可能な環境にあるといえます。広島大学には、戦後直後から呼 ...

呼吸器の病気と上手に付き合うために

充実した広島県の呼吸器疾患医療体制

広島県は全国的に見ても呼吸器内科の医療機関が充実しており、そのため広島県民は肺がんをはじめとする呼吸器疾患に関して、安心して受診可能な環境にあるといえます。広島大学には、戦後直後から呼吸器内科の教室があって約70年の歴史があり、優秀な人材を多数輩出しています。このため、広島県下には呼吸器疾患を専門的に診ることができる病院が多くあり、広島市内だけを見ても広島大学病院をはじめ県立広島病院、広島赤十字・原爆病院、広島市民病院、安佐市民病院、吉島病院など、それぞれの基幹病院が中心になって、全国的にも高度な診療を展開しています。また、開業医の先生方も、気管支喘息や睡眠時無呼吸症候群などの分野で専門性の高い治療を提供しています。

次に、主な呼吸器疾患の特徴と治療法について紹介します。

●肺炎

現在、国内で第1位の死亡原因は悪性腫瘍(がん)ですが、第2位の心疾患に続いて第3位に肺炎が入るほど、患者数・死亡者数が増加しています。肺炎で亡くなる方の多くは高齢者で、そのほとんどが誤嚥性肺炎です。嚥下(飲み込む)時に誤って気管にものが入ってしまうだけではなく、口の中の食べ物、唾液、細菌などが気が付かないうちに自然と気管に入ることが原因となって発症する疾患です。健康な人なら咳などで吐き出すことができますが、加齢によって気道粘膜の繊毛運動(気管内の排出運動)や咳反射が弱くなると、吐き出すことができなくなります。しかも、歯槽膿漏や喫煙などで口の中が汚れていると、肺炎の原因となる細菌が増殖してしまいます。一番の予防法は口腔ケアで、誤嚥を防げなくても、吸引してしまう細菌が少なくなれば肺炎を防ぐことができます。肺炎球菌ワクチンとインフルエンザワクチンの接種によって発生率を減少させる効果があることも分かっています。

●睡眠時無呼吸症候群

ドライバーの居眠り運転の一番の原因ともいわれているのが、睡眠時無呼吸症候群です。重症者では、ひと晩に何百回も呼吸が停止するほどの深刻な疾患です。

良い眠りとは「副交感神経優位(リラックス状態)となり、安らいでいて、血圧が下がっている状態が続くこと」ですが、この疾患は、交感神経優位(緊張状態)の時間が長く、心拍数が上がっている状態がひと晩中続きます。すると、狭心症・心筋梗塞・脳梗塞などのさまざまな病気を引き起こす原因になります。これらの病気に罹患したあとに、睡眠時無呼吸症候群が隠れていたと分かるケースもあります。

原因として、まずは「喉が狭い」ことが挙げられます。喉が狭くなる一番の原因が、肥満によるものです。しかし、日本人は肥満が原因ではない場合も多く、「下顎が小さく、後退している人」も注意が必要です。また、頻繁にいびきをかく人もその兆候があります。最近では、若い女性の患者さんも増えています。

治療法は、鼻に装着したマスクから気道へ空気を送り込むCPAP療法が最も有効ですが、顎が落ち込むために無呼吸になっている人や、無呼吸の頻度があまりひどくない人についてはマウスピースを使用する場合もあります。

●喘息

気管支に炎症を起こす疾患で、原因は主にアレルギーです。ほこり・花粉・たばこの煙などが原因としてありますが、人によっては温度の変化に反応する場合もあります。気管支の周辺には平滑筋というものがありますが、それがキュッと縮まるのが喘息発作です。高齢の患者さんも増えており、気付かないうちに発症しているケースが大半です。

治療法は、平滑筋を緩める気管支拡張剤の服用がありますが、これは一時的に症状が良くなるだけで、炎症自体の治療はできません。現在では、気管支の炎症を抑える薬(吸引ステロイド薬)が出てきたため、亡くなる方は大幅に減少しました。患者さんの中には「発作が治まればそれでいい」と言われる人もいるのですが、喘息は完治する病気ではありませんので、きちんと薬の服用を続けていくことが大切です。

●COPD(慢性閉塞性肺疾患)

肺気腫や慢性気管支炎など、慢性的な閉塞性換気障害を指す疾患を総称して、COPD(慢性閉塞性肺疾患)といいます。患者さんのほとんどは喫煙が原因ですが、最近ではPM2・5(微小粒子状物質)などの有害物質も含まれます。

近年では喫煙率は下がっていますが、肺がんや肺気腫の患者数は増加傾向にあります。これは、これらの疾患が発症するまでに、約20〜30年のタイムラグがあるからです。国内の喫煙者数のピークは、おおむね1980〜1990年代のバブル期の頃で、当時の喫煙者たちが現在にいたって発症しつつあります。

COPDは、肺胞が炎症を起こして風船のように大きくなる肺気腫と、気管支が狭くなる気道狭窄が併存するため、息を吐き出しにくくなります。労作時に、健康な人は、大きく息を吸ってもきちんと大きく吐き出すことができますが、COPD患者さんは、息を吐き切る前に吸ってしまうため、肺の中にどんどん空気が溜まっていって肺が過膨張になり、息切れを起こします。

症状を悪化させないためには、禁煙しかありません。気管支を広げるための有用な吸入薬もあり、完全には元の状態に戻りませんが、呼吸困難は軽減されます。

●間質性肺炎

肺炎は肺胞の中の感染症のことをいいますが、間質性肺炎は肺胞同士の間に炎症が起こる疾患で、原因不明の特発性間質性肺炎は国の難病に指定されています。間質性肺炎にはさまざまな原因があり、粉塵(ほこり)・カビ・鳥の羽や糞の吸引、薬剤や放射線によるもののほか、膠原病から併発する恐れもあります。この原因を究明して治療するのが、私たち広島大学分子内科学教室が一番得意としている分野です。先代の教授である河野修興先生が開発した、世界初の間質性肺炎の血清バイオマーカー「KL-6」の測定も行い、診療の一助にしています。

治療法は病態によって変わります。基本的に、間質の炎症が強い場合は副腎皮質ステロイド剤や免疫抑制剤を使用するのが主流で、難病中の難病といわれる肺線維症には線維化を抑制する抗線維化薬を使用します。

●結核

結核は、現在では患者数は減少傾向です。結核の原因となる結核菌は抗酸菌という特殊な菌で、人間の体内でしか増えることができません。しかし、人から人に移っていき、何千年にもわたって生き延びています。結核菌は薬で減らすことは可能ですが、完全に消滅させることはできません。

戦後国内では、発症していなくてもほぼ全員が結核にかかっていたと考えられています。そういう人たちが年齢を重ねて抵抗力が弱くなってくると、結核菌が再活性する可能性があります。現在、国内で増えている結核はこのようなタイプです。また、症状がなくても人に移してしまう可能性があります。予防法としては抵抗力を付けることがあげられ、健康な体づくりが基本となります。

●肺がん

最近は、非喫煙者の女性の肺腺がんが増えています。生活環境の変遷や受動喫煙など、原因はさまざま指摘されていますが、完全には解明されていません。

治療は、外科的手術が難しい場合は、がん細胞の遺伝子の異常を調べて、それぞれの遺伝子の異常に合った薬を処方します。分子標的治療薬や免疫チェックポイント阻害薬を用いた治療も積極的に行っていますが、使用時期によりその効果の度合いが異なるため、最善の使用時期を総合的に判断しています。これらの治療により、肺がん患者さんに明らかな延命効果を出すことができております。

かかりつけ医として重要なこと

「かかりつけ医」の役割として大事なのは、「患者さんの話をよく聞いてあげて、そこから一生懸命、病気を特定するヒントを探すこと」「患者さんのちょっとした変化や訴えなどに注意を払うこと」だと考えます。例えば、整形外科分野の症状から呼吸器の病気が見つかる場合もあります。また、もし問題がなければ「……という理由で心配いらないですよ」と、きちんと患者さんに説明ができるような知識や経験値が必要です。患者さん自身も、説明してもらうと安心感が生まれると思います。

病状の評価を試みることなく「この患者を診るのは私には難しい」と、最初から診療を諦める医師もいます。その気持ちは分かりますが、かかりつけ医に求められているのは病状の正確な評価です。患者さんの初期のさまざまな病状を管理して、専門的治療が必要と判断した際は、適切な専門医に紹介することが大切です。

消化器内視鏡の診断・治療の最前線

世界の最先端をいく消化器内視鏡診断と治療 広島大学病院内視鏡診療科では、世界の最先端をいく消化器内視鏡診断と治療を行っており、食道がん、胃がん、小腸・大腸がんに対する診断と内視鏡治療の実績は、国際的にも高く評価されていま ...

消化器内視鏡の診断・治療の最前線

世界の最先端をいく消化器内視鏡診断と治療

広島大学病院内視鏡診療科では、世界の最先端をいく消化器内視鏡診断と治療を行っており、食道がん、胃がん、小腸・大腸がんに対する診断と内視鏡治療の実績は、国際的にも高く評価されています。カプセル内視鏡やダブルバルーン内視鏡による全小腸の診断や治療も積極的に行っており、全ての消化管疾患領域で最先端の内視鏡診療を苦痛なく受けることができます。

近年の消化器領域の診断や治療におけるトピックスの一つとしては、2012年に早期悪性大腸腫瘍に対する粘膜下層剥離術(以下、ESD)として、食道・胃ESDに続き、大腸ESDも保険適用になりました。大腸ESDの適応基準は、「一括切除が必要であるが、スネア(ループ状の針金)による一括切除が困難な悪性腫瘍性病変」です。

現在、食道と胃に関してはESDがほとんど主流になっていますが、大腸ではEMR(内視鏡的粘膜切除術)も行っています。大腸ESDの適応は悪性腫瘍に限られます。大腸ではがんだけでなく、がんではない良性腫瘍も治療しており、EMRを選択するのは前がん病変である腺腫や鋸歯状病変などの比較的小さい病変です。また、良性なら分割して摘除することも容認されており可能なため、短時間・容易・経済的なEMRが選択されます。

今や胃のESDは一般化していますが、食道のESDはハイボリュームセンター(手術症例数の多い施設)で行われることが多く、最も難しい大腸ESDもこれまではそうでした。しかし、保険適用になり、機器の開発・改良や、手技の工夫により技術的なハードルも徐々に下がってきて、難易度の高い病変を除いて大腸ESDも徐々に一般化しつつあります。

大腸カプセル内視鏡が保険適用

2014年からは、新たな大腸疾患の検査・診断機器として、大腸カプセル内視鏡が保険適用になりました。幅11㎜、長さ26㎜の一般的な薬のカプセルの形状をしたカプセル内視鏡は、水と一緒に飲み込み、腸管内部を進みながら内蔵の小型カメラで写真を撮影していきます。カプセルの通過による不快感はないため、日常生活を送りながら検査が可能です。ポリープの有無などの大腸疾患の診断に使われ、麻酔も必要なく、放射線被曝の心配もありません。

当科では、カプセル内視鏡により小腸の検査を行ってきましたが、大腸カプセル内視鏡検査も実施が可能です。ただし保険適用は、大腸内視鏡検査による深部挿入が困難で、過去に全大腸の検査が受けられなかった人などに限られています。大腸内で撮影した画像は、患者の体に貼り付けたセンサーを経由して記録装置に転送され、検査後、専門医が専用コンピューターで解析します。

このほか、年々患者数が増加している病気に、炎症性腸疾患(クローン病、潰瘍性大腸炎)があります。この病気は、免疫の異常反応により腸管粘膜に炎症や潰瘍が生じる慢性疾患で、原因はまだはっきりしていません。これまで、炎症性腸疾患には2つの生物学的製剤が承認されていましたが、最近さらに新しい生物学的製剤も複数登場し、使用可能になっています。あらゆる年代に分布し、若年層での発症も多い病気だけに、患者さんにとっては朗報です。

胃がんの内視鏡検診が開始

私が医者になったころは、食道がんの8〜9割は進行がんでしたが、内視鏡機器や技術が進歩して、画像強調観察という食道がんを早期に発見する診断法なども現れ、現在ではすでに食道がんの多くは、表在がんという早期で内視鏡で摘除できるがんになっています。

胃がんに関してもピロリ菌が原因だということが解明され、また、飲み水などの衛生環境も良くなり、若い人ほどピロリ菌の感染率は低くなってきて、ピロリ菌感染者は急激に減少しています。中高年でピロリ菌陽性の人も除菌が保険適用になり、高齢社会の中で増加傾向にある胃がんも、10年、20年後には減っていくと考えます。胃がんの診断についてもめざましく進歩してきており、これまでバリウム検査だけだった胃がん検診に、2016年から内視鏡検査(胃カメラ)が加わり、高画質の内視鏡画像で早期に診断できるようになりました。

大腸がんに有効な便潜血検査

一方、大腸がんは急激に増えていて、現在ではがん罹患率第1位です。原因の主因は、食生活の欧米化と国内の高齢社会と考えられていますが、国内の大腸がん検診の受診率が3割以下という低さも問題です。日本の3倍の人口の米国よりも、大腸がんで亡くなる人は日本の方が多いのです。米国の検診受診率は約7割です。がんは、やはり早期発見・早期治療に尽きるのです。

大腸がん検診で推奨しているのは便潜血検査です。1000人が便潜血検査を受ければ、約100人が陽性になります。その100人に内視鏡検査を行えば、3〜4人に大腸がんが見つかります。便潜血検査は費用が安く、簡易に実施が可能、しかも、精密検査をする人を10分の1に絞り込める重要な検査です。

信頼できるクリニックを選んでいただきたい

がん検診の目的は、がんで亡くなる人を減らすことです。がんは症状が出た時には手遅れの状態が多く、症状がないうちに検診を受けて早期に見つけることが重要です。がん治療の基本は完全摘除です。食道・胃・大腸であれば手術しなくても内視鏡で摘除できることが多く、検査による痛みも鎮静剤の効果があり、安心して受けられます。多少進行していても手術で完治できる可能性も高く、また抗がん剤や分子標的薬などの薬も飛躍的に進歩してきています。手術に化学療法を加えることで良い予後を得ることもできます。

大学病院などの大きな病院は、専門的な知識や技術を必要とする病気に対処するための高度医療を提供する施設であり、一般検査や普通の病気は開業医やクリニックで十分対応できます。ただし、大腸内視鏡検査は術者の技術レベルに比較的差があり、施行医によって時間や患者さんの苦痛の程度も違うことがあります。広島地域では、広島大学を中心に定期的に症例検討会や勉強会、研究会が開催され、熱心に参加される開業医の先生もたくさんおられます。ホームページ・診療実績・検査の件数・先生の経歴などを参考に、信頼できるクリニックを選んで受診するとよいでしょう。検査をどのくらいの頻度で受ければよいかは、その人の生活習慣・家族歴・病歴などによって一人ひとり異なります。40~50歳くらいになったら、まず一度は内視鏡検査を受けることをお勧めします。

肝臓の病気とうまく付き合うには?

●C型肝炎は肝がん原因の約50% 肝臓が「沈黙の臓器」と呼ばれているのは、ご存知の方も多いのではないでしょうか。これは、病気になっても症状が現れにくいことから、こう呼ばれています。だから肝炎ウイルス検査を受けていない人が ...

肝臓の病気とうまく付き合うには?

●C型肝炎は肝がん原因の約50%

肝臓が「沈黙の臓器」と呼ばれているのは、ご存知の方も多いのではないでしょうか。これは、病気になっても症状が現れにくいことから、こう呼ばれています。だから肝炎ウイルス検査を受けていない人がまだ沢山あります。感染を知らずに放置していると、気づいたときには重症化していることも少なくありません。

慢性的に肝炎を引き起こすウイルスのほとんどは、B型とC型です。どちらのウイルスも、輸血など血液を介して感染します。B型肝炎ウイルスは思春期以降に感染すると大半が一過性感染で終わりますが、3歳未満で感染した場合は多くは慢性化します(主に母子感染)。

C型肝炎ウイルスは国内における肝がんの原因として最も多く、全体の約50%を占めています。ウイルスを排除しないままでいると、慢性肝炎となります。慢性肝炎は少しずつ進行し、10〜30年の経過で肝硬変や肝がんへと進行する恐れがあります。このC型肝炎にかかっている人は全国で150万人いると推定されており、広島県内は全国平均より多い傾向にあります。

ウイルス性の肝炎以外では、肝細胞に脂肪が蓄積する脂肪肝があります。原因は肥満や過度の飲酒ですが、中にはアルコールを飲まないのに肝硬変や肝臓がんの発症母地になる非アルコール性脂肪肝炎(NASH)という病気があります。

内臓脂肪といえば、メタボリックシンドロームを気にされる方もおられるでしょう。原因としては、やはりカロリー過剰(過栄養)です。過食は控えなければなりません。

●C型肝炎の画期的な治療薬「インターフェロンフリー」

C型肝炎ウイルスの治療は、これまで、体の免疫力を高めウイルスに打ち勝つ「インターフェロン」という薬が使用されていました。その後、研究が進み、2014年に「インターフェロンフリー」という画期的な治療法が登場しました。この薬は副作用が格段に少なく、治療期間も8~12週間と短いのが特徴です。改良型がどんどんできてきており、今は95%以上の効果があります。

C型肝炎は治癒する疾患ですが、ウイルスがいなくなってもまれにがんができてくる人がいます。治癒している人でもウイルス感染が元々なかった人に比べると、がんになる頻度が高くなりますので、気を付けなければいけません。当院では定期的にフォローアップをしています。

B型肝炎は、急性肝炎の場合、基本的には無治療でウイルスが排除されます。しかし、慢性肝炎の場合、ウイルスを体から完全に排除することはまれにしかできないことが分かっています。

治療には「インターフェロン」あるいは「核酸アナログ製剤」という薬で、ウイルスの増殖を抑えます。インターフェロンはウイルスに対する抵抗力を高め増殖を抑えます。核酸アナログは薬を飲んでいる間はウイルス量が低下し、肝炎は起こりません。しかし、薬を中止すると肝炎は再燃します。現在の治療薬ではウイルスの完全な排除は期待できません。これがB型とC型の根本的な違いです。B型肝炎の患者さんは、薬を自己判断で中止してはいけません。

肝がんに関しては、切除して取り除くほか内科治療として皮膚の表面に特殊な電極針を刺し、ラジオ波という高周波で発生させた熱で肝がんを焼く「ラジオ波焼灼術」、がんに栄養を運んでいる血管を人工的にふさいで、がんを“兵糧攻め”にする「肝動脈塞栓術」、カテーテルから抗がん薬を肝動脈に直接注入する「動注化学療法」があります。服用薬には、がん細胞の増殖や進展を抑える「ソラフェニブ」も使用します。

●肝炎ウイルス検査は無料なので、ぜひ受診を

血液検査で肝炎ウイルスの有無を調べたことがない方は、ぜひ一度受診してください。肝疾患は自覚症状がなく、症状が出てきた頃には末期になっている場合があるので、知識の普及の重要性を痛感します。会社の健康診断などでも検査項目にB型肝炎・C型肝炎がないところもあります。県内では6割くらいの方が調べていない状態です。年代は関係ありませんが、一生に1回は受診しておいた方が良いですね。検査は無料ですので、特に60歳以上の人に強くすすめます。

肝がんの診断はエコー検査でもある程度は分かりますが、これはかなりの技術が必要ですので、経験値の高い医師が良いです。やはり、CTやMRIでしか検出できない場合もあるので、総合病院で検査してください。

肝臓病があると分かったら、すぐ専門機関で診てもらってください。そのあとは、定期的に専門医へ行くことをおすすめします。気になる治療費ですが、国や県からの補助がありますので患者さんの自己負担は1万〜2万程度です。

肝炎ウイルス検査は市などの補助により、だいたいどこの機関でも受診可能で、無料です(一部の自治体は有料)。当院に開設している「肝疾患相談室(☎082-257-1541)」でも検査が受けられます。患者さんはもちろん、そのご家族の不安や疑問にも対応しています。相談は無料ですので、分からないことなど、お気軽にお問い合わせください。

●肝臓病の専門機関とかかりつけ医の連携と役割

現在、広島県内では広島大学病院と福山市民病院が肝疾患診療連携拠点病院に指定されています。拠点病院の役割は、医療従事者や地域住民を対象とした研修会や講演会などを開催し、地域の医療機関の肝疾患診療のレベルアップを図ることです。また、かかりつけ医と肝臓病専門医が病診連携し、それぞれの役割に応じた診療体制をサポートしながら患者さんへ早期に適切な医療を提供する「広島県肝疾患診療支援ネットワーク」も構築しています。

●かかりつけ医として重要なこと

私が考える良いかかりつけ医とは、患者さんが治療の途中で通院を中断してしまわないよう、継続的に面倒を見てくださる医師です。「症状がないから、まあいいか」という気持ちになりがちですが、それを放っておいたらいけないということを、きちんと説明していただきたい。脂肪肝の人に対しては、丁寧な生活指導(食事や運動など)をしてくださる人が理想のかかりつけ医です。

整形外科の治療と最新の動向

高齢者を主に、患者の利益につながる診療方法が進歩 広島県内の整形外科診療は開業医、地域の基幹病院、公的病院など、全国的にもトップレベルにあります。広島大学は県内唯一の医学部を有し、多くの基幹病院に人材を派遣しています。大 ...

整形外科の治療と最新の動向

高齢者を主に、患者の利益につながる診療方法が進歩

広島県内の整形外科診療は開業医、地域の基幹病院、公的病院など、全国的にもトップレベルにあります。広島大学は県内唯一の医学部を有し、多くの基幹病院に人材を派遣しています。大学病院整形外科には8つの診療科グループがあり、それぞれ専門性の高い医療を提供しています。
現在、高齢患者は整形外科分野でも確実に増えており、それに伴って高齢患者の手術件数も増加傾向にあります。年齢や痛みの程度にもよりますが、広島大学整形外科では自分の関節を可能な限り温存する治療を目指しています。高度の変形性関節症では人工関節置換術が適応となりますが、人工関節手術の成績も向上しています。
次に、各部位ごとの診療と治療の最新動向について説明します。

●膝関節
高齢化に伴って、変形性膝関節症などの膝の症状を有する患者は増加しています。治療では、年齢や関節の状態によりリハビリ、投薬注射、装具療法などの保存的治療や、関節鏡視下手術、骨切り術、人工関節置換術などの手術的治療が選択されます。2013年から、部分的な軟骨欠損に対しては再生医療が保険適用になり、良好な成績を上げて注目されています。
広島大学整形外科では、サンフレッチェ広島や広島東洋カープなど、プロスポーツ選手やトップアスリートの治療も行っています。スポーツ選手に対する高いレベルの治療成果は、一般の患者さんの治癒率アップにつながっています。

●股関節
股関節の手術も、可能な限り患者さん自身の股関節を温存することを目指しています。とりわけ、若年者の変形性股関節症患者に対しては、寛骨臼回転骨 切り術や大腿骨骨切り術を行っています。これまで治療の難しかった関節唇損傷に関しても、最近は股関節鏡視下術が可能になりました。股関節の周囲に小さい穴を数か所作って内視鏡を入れ、損傷部位を切除、あるいは縫合する手術です。
最近のトピックスとしては、「FAI(股関節インピンジメント)」があります。大腿臼蓋インピンジメントとも呼ばれていますが、インピンジメントとは「衝突」や「挟み込む」という意味です。
股関節の受け皿となる骨盤の臼蓋や大腿骨の骨形態異常があると、股関節を大きく動かす際にこれらが衝突し、挟み込まれる股関節唇が損傷するということが分かってきました。これまで原因のはっきりしなかった股関節痛の内、ある程度の割合でFAIがあるとみられています。これも内視鏡下による手術の適応となります。

●手の外科
手や指の様々なけがや病気に対して、深い知識と経験を備えた手外科専門医が治療を行っています。最近では、手の骨折や拘縮(関節が硬くなり動かない状態)に対して関節鏡視下手術を行い、良好な成績をあげています。また、これまで手術療法が行われてきたデュプイトラン拘縮(手のひらから指にかけてしこりができ、病気の進行に伴って皮膚がひきつれて、徐々に指が伸ばしにくくなる)は、注射で治療することが可能となっています。
一方、小さな血管や神経を縫合する技術(マイクロサージャリー)を駆使して、切断した指、麻痺手、外傷により生じた大きな組織欠損、腫瘍切除後、などに対しての再建を数多く行っています。また、母指多指症などの小児先天性疾患に対しても、適切な手術を行っています。

●脊椎・脊髄
脊椎・脊髄手術では、顕微鏡下による低侵襲(患者に負担の少ない)手術が主流です。症例によっては、さらに負担の少ない内視鏡による除圧手術も行なっています。神経を傷つけることなく、安全性を高く行い、切除は最小限にとどめることができます。
腰椎変性すべり症・分離症・変性側弯症・後弯症等に対する手術であるPLIF(腰椎椎体間固定術)は、腰部脊柱管狭窄症などによって圧迫された、脊髄の除圧や腰椎変性すべり症などによる、不安定腰椎に対する固定などを目的とした手術です。脊髄の圧迫が取り除かれ、脊椎の安定性が図られます。

●側彎
背骨が捻じれて曲がる脊柱側彎症は、痛みなどの具体的な症状がないため、見過ごされやすい疾患です。高度な側彎症は手術を行うこともありますが、矯正装具による治療が中心になります。広島県内では、側彎症の検診が他県に比べて進んでいます。比較的変形の少ない患者さんでは、装具治療が行われますが、進行例に対しては矯正手術が行われることもあります。

●肩関節
肩関節疾患においても、低侵襲である関節鏡視下手術が主流です。肩腱板断裂、反復性脱臼に対する関節鏡視下手術も、高い成功率を収めています。
保険適用になったリバース型人工肩関節置換術の場合、通常の肩関節の頭と受け皿の構造が真逆の形態になっています。リバース型人工肩関節では、腱板の力がなくても三角筋の力で挙上(持ち上げる)が可能となり、関節の安定化と挙上動作の改善が期待できます。

●足関節
足関節外来では、内反足や外足踵足などの小児先天性疾患、外反母趾・変形性足関節症などの成人の足部変形、足関節外側靭帯損傷や距骨離断性骨軟骨炎などに対し、保存的治療(投薬やリハビリ等の手術以外の治療)から手術治療まで幅広く診療しています。
内反足の治療では、矯正ギブスや装具療法などの保存的治療で優れた成績をあげています。また、靭帯損傷の場合は自身の靭帯を縫い込む再建術が主流で、自分の靭帯が使えない場合には腱移植による再建術を行います。

●腫瘍外科
整形外科で扱う腫瘍は、四肢(上肢、下肢)や脊椎にできる腫瘍で、良性腫瘍と悪性腫瘍に分類されます。悪性腫瘍は、他の臓器に(特に肺に多い)転移することがある致命的な病気です。したがって、診断をできるだけ早期に正確につけ、適切な治療を行うことが重要です。
最近では、MRI(核磁気共鳴画像法)やPET(陽電子放射断層撮影)などで、病態や病期の正確な診断が可能です。治療法も進歩しており、患者さんの四肢機能をできるだけ温存し、腫瘍が根治されるよう、化学療法や放射線治療を組み合わせた集学的な治療が可能となっています。

「かかりつけ医」の役割と広島県下の現状について

これら整形外科疾患の予防法としては、筋肉トレーニングやストレッチが重要です。また、早期診断や早期治療が何より大切ですので、まずは「かかりつけ医」でしっかりと診断してもらうことが重要になります。整形外科クリニックで行う保存的治療の重要度が増しており、その水準も非常に高くなっています。
整形外科のかかりつけ医として必要なことは、「気軽に受診できること」です。
開業医は幅広い知識が求められます。手術適応が必要かどうかの判断がより大切で、総合病院に適切なタイミングで紹介することが重要になります。
総合病院での手術が終わると、リハビリのためにかかりつけ医で引き続き加療するケースも多くなります。広島県内では、地域でのネットワークが広がっており、総合病院とかかりつけ医の連携をさらに深めています。

不妊治療の現状と動向

35歳以上で6か月間妊娠しない場合、早めに受診を 正常の性機能の夫婦では、避妊しなければ1年間で85%、2年間で90%が妊娠します。このため、通常の性行為があって、1年間妊娠しない場合は不妊と考えられます。年齢とともに妊 ...

不妊治療の現状と動向

35歳以上で6か月間妊娠しない場合、早めに受診を

正常の性機能の夫婦では、避妊しなければ1年間で85%、2年間で90%が妊娠します。このため、通常の性行為があって、1年間妊娠しない場合は不妊と考えられます。年齢とともに妊娠しにくくなりますので、35歳を超え6か月間妊娠しない場合は、早めに受診することが大切です。その場合は、「夫婦で同時に」が原則です。女性側のみ検査を行って治療を開始し、1年後に妊娠しないので精液検査を行うと、不妊原因は男性側にあったということも稀ではありません。

不妊症で病院を受診した場合、早期に治療が開始できれば、それにこしたことはありません。しかし妊娠すれば治療が終わりではありません。
不妊治療の目的は、妊娠することではなく、授かった生命を産み、育み、新しい家族が形成されていくことにあります。そのためには、妊娠後の10か月間、母児ともに健やかに過ごし、無事、出産の日を迎えなければいけません。

そのために、いくつかの検査が必要になります。検査には約1か月かかります。女性では卵巣、卵管や子宮を検査とともに、妊娠や出産、育児を健やかにするための最低限の検査も必要です。例えば内科的な高血圧や糖尿病、メタボリック症候群、甲状腺機能異常がないかどうかです。男性では精液検査は必ず行います。

検査によって、妊娠に妨げになるような子宮筋腫や子宮内膜症、排卵障害を起こすような多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)などの疾患が見つかることがありますが、あるからといって必ず治療が必要なわけではありません。例えば、子宮筋腫の場合、その大きさと位置、状態などを診ながら治療方法を考えます。

同じ疾患でも、年齢と症状によって手術するかどうかが決まります。基本的には、自然妊娠ができる状態に持っていくことを目指しますから、若い方の場合、手術をした上での自然妊娠を選択し、高年齢になるにしたがって体外受精を早めに選択するケースが増えます。

不妊治療には大きく分けて、3つあります。手術なども含めて自然妊娠をめざす方法、排卵期に調整した精子を子宮内に注入する人工授精、卵子を体外に取り出し、卵子と精子を体外で受精をさせ、得られた受精卵を子宮内に戻す体外受精です。

このうち、体外受精は非常に厳密に行わないと良い結果が得られないため、治療は時間単位できっちり決められています。
体外受精の際には、多胎妊娠を避けるため、年齢とそれまでの治療経過にもよりますが、移植数は通常1個に限っています。脳性麻痺の発生率が、単胎では0・16%だったのが、双子では0・8%に増え、三つ子では3・1%になり、単胎児の20倍にもなるという報告もあります。体外受精は1978年に世界で初めて行われ、まだ38年しかたっていない若い医療です。体外受精で生まれた子どもさんが、どのように発育されるか、今後も慎重に経過観察する必要があります。

無精子症というのは、精液の中に精子がないことです。無精子症の人でも、睾丸の中には4割程度の確率で精子があるので、この睾丸精子を使う方法もあります。

新しい技術として、受精卵の発育を動画で観察することができるようになりました。「タイムラプス」と呼ばれます。今まで培養状態を観察するには、静止した状態でしか確認することができませんでしたが、このシステムにより受精卵(胚)の成長過程をタイムラプス画像で確認・観察ができるようになりました。通常の観察は1日1回の場合が多いのですが、タイムラプスでは培養期間中は常に撮影を行うため、得られる情報が飛躍的に増加します。撮影された画像は動画として観察し、妊娠に適した胚を選ぶことに役立てます。

「タイミング法」ではなく「卵胞観察」の名称で

これに比べて、人工授精はマイルドな方法です。一般的には、不妊症の原因が不明なケース(原因不明不妊)が対象になります。体外受精が性能はよいが高額なスポーツカーとしたら、人工授精は身近で安価な軽自動車のようなものです。人工授精は卵子には触れないので、より自然に近い形で、副作用もほとんどありません。自然妊娠と比べると、妊娠率は2倍程度に増えますが、不妊の夫婦が1回の月経期間で自然分娩できる確率は3%程度ですので、倍といっても6%程度がせいぜいです。年齢が増えると、その確率はさらに下がります。

人工授精を行うと、最初の3回程度は、妊娠の確率は上がりますが、6回を過ぎた頃よりほぼ頭打ちになります。そのため人工授精を数周期繰り返しても、妊娠しない場合は、体外受精の選択も考えます。料金はいずれも保険がききません。通常、人工授精は2~3万円、体外受精は卵巣刺激から含めると、50~60万円以上と高額になります。

最後に自然妊娠ですが、妊娠しやすい時期は1日ではない、ということは大切です。月経後、排卵までに性交の回数が多いほど妊娠しやすくなります。妊娠しやすい期間は排卵の前に5~6日間あります。排卵前の4日間で妊娠率に、それほど差はありません。いわゆる「タイミング法」は性交の日を厳密に指示することですが、男性が心理的プレッシャーのためED(勃起不全)になることもあります。

最近、EDの男性が増えていますが、EDになる最も多い原因は「この日にセックスをしてください。この日でなければいけません」と言われること、とする報告もあります。妊娠するための努力が、夫婦の性交回数を少なくしてしまい、EDになるのでは本末転倒といわざるを得ません。そのため、できるだけ私たちは「タイミング法」という言葉は使わず、「卵胞観察」という言葉を使っています。

不妊治療の役割分担と良いかかりつけ医の条件

不妊治療における総合病院とかかりつけ医(診療所)には、それぞれ役割があります。不妊治療は「人工授精までの一般不妊治療」「体外受精・胚移植を実施する施設」「体外受精・胚移植と生殖外科手術いずれも実施する施設」に分けることができます。このうち、多くのかかりつけ医では「一般不妊治療」が行われ、「体外受精・胚移植」は、かかりつけ医の中でも日本産科婦人科学会に登録された施設で行われます。手術が必要な場合は総合病院に紹介されます。県立広島病院は総合病院ですが、「一般不妊治療」「体外受精・胚移植」「生殖外科手術」のいずれも行っています。

また、良いかかりつけ医とは、不妊や不育に対する対応だけでなく、患者さんのライフスタイルやライフプランを念頭において治療計画を考える医師です。紹介先の選択肢をたくさん持っている医師も良いかかりつけ医の条件でしょう。

婦人科・ 産科の現状と動向

検診により前がん病変で見つかる子宮頸がん 子宮がんの2015年の死亡率は、全国平均が4.9人(10万人当たり)に対して、広島県は4.6人と若干低めになっています。子宮がん検診の受診率も、2014年の数字では、全国平均の3 ...

婦人科・ 産科の現状と動向

検診により前がん病変で見つかる子宮頸がん

子宮がんの2015年の死亡率は、全国平均が4.9人(10万人当たり)に対して、広島県は4.6人と若干低めになっています。子宮がん検診の受診率も、2014年の数字では、全国平均の32.0%に比べて、41.5%と高くなっていますが、各自治体によってかなりのばらつきがあります。一番高い神石高原町が68.3%に対して、福山市は27.3%しかありません。広島市は45.2%です(県の資料より)。

子宮頸がんは、若年で増加傾向にありますが、前がん病変からの進行は遅いことが特徴です。各自治体では20歳からの検診を推奨していますが、性交渉がある人はかかりつけ医などでの受診をお勧めします。これは、子宮頸がんが性交渉によるHPV感染と深く関係しているからです。検診を受ければ、前がん病変で見つけることが可能です。前がん病変とは「異形成」と呼ばれるもので、軽度から高度まで3段階に分かれています。

軽度~中等度異形成と診断されたら、一般に外来で細胞診により経過観察をします。軽度異形成から高度異形成になるには、時間を要します。逆に、異形成から正常な状態に戻ることもあります。がん細胞が粘膜表面の上皮内にとどまっている状態を上皮内がんといい、そのうち上皮の下にある基底膜を越えてわずかに入り込んだものをIA1期といいますが、上皮内がんやIA1期で見つけて治療を行えば完治が望めます。

子宮体がん―不正出血があれば、すぐにかかりつけ医に受診を

1970年ころまでは、子宮にできるがんのうち、90%以上が子宮頸がんでしたが、近年、子宮体がんが増加し、ほぼ同数になっています。子宮体がんの割合が増えている要因として、食生活の欧米化や脂肪の摂取量の増加を挙げる人もいます。

この子宮体がんの診断に、月経時の出血以外の不正出血やおりものは大きな手掛かりです。このため、不正出血があればすぐにかかりつけ医などで検査を受けましょう。がん以外の原因で不正出血があることがあり、出血があっても進行がんとは限りません。子宮体がんの多くは、不正出血で見つかるので、早めに受診すればそれだけ早期に見つけることができます。

子宮体がんは、性交渉とは関係なく、女性ホルモンとの関係が深いがんで、妊娠経験のない人や無排卵などの排卵障害のあった人、肥満、糖尿病、高血圧の人など、ホルモンバランスの崩れによって子宮体がんになりやすいとされています。ただし、女性ホルモンとはあまり関係のないタイプの子宮体がんもあります。

これに対して、卵巣がんは進行が早いのが特徴です。検査した時点では異常がなくても、半年後にはがんが進行していることもあります。下腹部にしこりや圧迫感などの症状があって受診したときには、すでにがんが進んでⅢ~Ⅳ期になっていることも多くあります。卵巣がんの種類によって、がんの進行については一律ではありません。最も頻度の高い漿液性腺がんの場合は、早期に腹腔内にがん細胞が広がることが多いがんといえます。早期発見に有効な方法はまだありませんが、腹部の違和感などがある場合は早めの受診が大切です。

また、卵巣嚢腫や子宮筋腫は、頻度の高い疾患です。大きさや性状によっては、経過観察となるものや、手術や投薬が必要なものもあります。手術が必要になれば、かかりつけ医から手術のできる病院などへの紹介となります。いろいろな病院やクリニックで、診察をそのつど受けているような場合、前回より増大したのか、以前と同じくらいなのかなどの経過が分かりにくくなります。画像診断(MRI、CT、PET)や腫瘍マーカーなどである程度は診断はできますが、それまでの経過が診断や治療方針の決定に有用なことも多くあります。そのように、データや超音波所見の時間経過が分かることは大変重要なことであり、そういう意味でもかかりつけ医を持つことは大きなメリットだと考えます。

初期なら円錐形手術、腹腔鏡による広汎子宮全摘手術も

次に、治療方法について説明しましょう。

子宮頸がんの前がん病変、特に高度異形成や上皮内がんの治療は、子宮頸部を円錐形に切り取る手術が主流です。この手術は、早期子宮頸がん(ⅠA1期)でも適応することは可能であり、子宮が残せるので妊娠や出産は可能です。閉経後の人は、円錐形手術ではその後の検診が難しくなるため、子宮を摘出するケースもあります。

がんの大きさや年齢、合併症にも関係しますが、ⅠA2期、ⅠB1期、ⅡA期では、子宮と膣の一部や骨盤内のリンパ節を含めて広範囲に切除する広汎子宮全摘手術を一般に行います。従来は開腹手術で行っていましたが、先進医療の認定を受けている施設では、低侵襲である腹腔鏡手術も可能です。先進医療では、手術代は自費ですが、そのほかの処置に関しては保険適用になります。手術以外の治療法としては、化学療法(抗がん剤など)や放射線治療を組み合わせることもあります。

広汎子宮全摘手術による合併症に、リンパ浮腫があります。術後にリンパ液の流れが悪くなり、足がむくむことを指します。リンパ液の流れが停滞せずに、腹腔内にきちんと流れるように術式の改良も進んでいます。

また、もう一つの合併症として神経の損傷による排尿障害が問題でしたが、神経を温存する術式で膀胱の機能がある程度維持されるようになり、排尿障害の程度や頻度も減ってきています。

ⅡB期、Ⅲ期の手術ができない患者さんには、CCRT(放射線治療に化学療法を併用する療法)が一般的です。この療法によって、従来に比較して治療成績は向上しています。

放射線療法とは、X線などの放射線を照射してがんを治療するものです。体の外からがんに向けて放射線を照射する方法と、放射線が出る小さな線源を膣と子宮腔の中に入れて、直接がんに照射する方法があります。Ⅳ期になると、局所治療のためCCRTを行うこともありますが、抗がん剤の治療が中心になります。根治は難しく、緩和治療も考慮されます。

子宮体がんはⅠ期のケースが多く、手術での治療が第一選択となります。Ⅰ期の場合は、条件を満たせば、認定施設での腹腔鏡手術も保険診療で行えます。手術が難しい進行がんの場合は、化学療法や放射線治療が適応となります。進行すると治療が難しくなりますから、出血などの自覚症状があれば早めに受診をしましょう。

卵巣がんに関しては、Ⅲ期で見つかることが多いので、治療のほとんどは抗がん剤と手術の組み合わせになります。手術でがんが取り切れても、予防のために、ほとんどの症例で術後にも抗がん剤を使います。抗がん剤治療は、TC療法(カルボプラチン、パクリタキセル)、DC療法(カルボプラチン、ドセタキセル)が一般的に使用されます。以前の抗がん剤に比べると副作用は少なく、吐き気や嘔吐についても有効な薬剤が開発されており、以前ほど問題にはならなくなっています。ただし、胚細胞腫瘍に対してはBEP療法が第一選択とされています。分子標的薬では、べバシズマブが保険適用となっています。最近話題となっている免疫チェックポイント阻害剤ですが、卵巣がんの保険適用はまだありませんが、今後期待できる薬剤だと考えます。

そのほかの治療

良性腫瘍である卵巣嚢腫や子宮筋腫などの多くは、腹腔鏡手術を取り入れるところが多くなりました。患者さんの希望に応じて、低侵襲に行う治療が可能になってきています。また、月経過多に対してお腹を切らない治療の「マイクロ波子宮内膜アブレーション」や、子宮の中にある筋腫(粘膜下筋腫)に対する子宮鏡下手術なども行われます。

ホルモン補充療法は、閉経後で更年期症状がひどい場合などに有効です。自覚症状だけでなく、高コレステロール血症や骨粗しょう症の予防などにも効果があります。特に、閉経前に卵巣腫瘍などで両側の卵巣を取った人には、ホルモン補充療法が考慮されます。子宮体がんはホルモンに依存しているので、ホルモン補充療法は基本的には行いませんが、ほかの薬剤などで改善せずに更年期症状が強い場合には使用されることもあります。卵巣がんや子宮頸がんの術後の更年期症状、前述の骨粗しょう症、高コレステロール血症などに対してホルモン補充療法を行うことは、がんの再発などに関して特に問題はありません。

クリニックと周産期母子医療センターの連携が重要

産科医不足や分娩を扱う病院の減少が報じられ、妊娠や出産に不安を募らせる女性も多いと思いますが、最近の統計では、広島県内の開業医クリニックでの出産が久しぶりに増加しました。これは、中規模の総合病院での出産数の減少もその一因と思われます。

県内には、合併症妊娠、胎児異常、異常分娩などのリスクの高い妊娠や出産に対応できる、母子・胎児集中治療室(MFICU)や新生児集中治療室(NICU)などを備えた2か所の総合周産期母子医療センター(広島市民病院、県立広島病院)と、これに準じた設備やマンパワーを持つ6か所の地域周産期母子医療センターがあります。そこでは、医師や看護師が母子管理や未熟児の治療に取り組んでいます。妊娠経過でハイリスクな問題を抱えている場合は、クリニックの指示により周産期母子医療センターへの紹介や母体搬送がされます。

ハイリスク妊娠とは、妊婦や胎児のいずれか、または双方に高いリスクが予想される妊娠のことです。何らかの疾患を合併している妊婦や、過去の不良な妊娠や分娩などが挙げられ、多数のリスク因子が存在します。具体的には、妊婦の高血圧、心疾患、糖尿病、、双胎妊娠、前置胎盤や赤ちゃんの発育が悪い場合、赤ちゃんの超音波に異常があるなどのケースがあります。

クリニックなどからの紹介で、周産期母子医療センターがある総合病院で詳しく診察してもらい、その後経過が良好なら、再びクリニックに戻る場合もあります。かかりつけ医・クリニックと総合病院が連携しながら、妊娠管理や出産に臨めれば、より安心です。

乳がんの治療法と最新の動向

40歳からは2年に1回のマンモグラフィ検診を 40歳以上の女性を対象にしたマンモグラフィ検診によって、乳がんの死亡率が15~20%減少することが明らかになっています。このため、日本の標準的な乳がん検診として、40歳以上の ...

乳がんの治療法と最新の動向

40歳からは2年に1回のマンモグラフィ検診を

40歳以上の女性を対象にしたマンモグラフィ検診によって、乳がんの死亡率が15~20%減少することが明らかになっています。このため、日本の標準的な乳がん検診として、40歳以上の女性を対象に、2年に1回のマンモグラフィによる検診を受けることが勧められています。母親や祖母、姉妹など家族が乳がんになっている場合には乳がんに罹患する割合が高くなるので、乳がん家族歴のある人は30歳代後半からの検診をお勧めします。

さらに最近では、乳腺濃度が高い40歳代を対象とした乳腺エコー併用検診が乳がんの早期発見に有効であるという報告や、遺伝性乳がんなどハイリスクな症例では乳房MRIを加えることが推奨されるなど、乳がん発症リスクに応じた手厚い検査も検討されるようになっています。広島県の乳がん患者10万人あたりの死亡率は8.5人で、全国平均の10.7人と比べると低い数字になっています(2015年)。その原因として、乳がん検診受診率が2014年の数字では35.5%(全国平均は26.1%)と高いことや、対策型乳がんマンモグラフィ検診による乳がん発見率が高いことなどが考えられます。

乳がんと女性ホルモンとの関係

乳がんの発生や増殖には、女性ホルモンであるエストロゲンがかかわっています。乳がんの主なリスク因子として、「出産経験がない」「初産年齢が高い」「閉経後の肥満」などが挙げられますが、これらは体内のエストロゲンレベルに関係しています(図1)。乳がんの治療法として、手術や放射線治療といった局所療法と、ホルモン療法、化学療法、分子標的治療といった全身療法があります。乳がんの特性に合わせて、これらの治療を組み合わせることで標準的治療を組み立てますが、乳がんに最も特徴的で効果のある治療はホルモン療法です。
乳がん組織にホルモン受容体(エストロゲンまたはプロゲステロン受容体)が発現している場合、女性ホルモンが乳がん細胞のホルモン受容体に結合することでがん細胞が活発に増殖しています。そのような「ホルモン受容体陽性乳がん」は、乳がんの症例の7~8割を占め、ホルモン療法の対象になります。

図1 乳がんになりやすい人は?

ホルモン療法は、エストロゲンの働きを抑制することで乳がん細胞の増殖を抑えるのですが、大きく分けて、①エストロゲンそのものの量を減らす方法(アロマターゼ阻害剤やLH-RHアナログなど)と、②エストロゲンとエストロゲン受容体との結合を阻害する方法(タモキシフェンなど)があります。閉経前ではタモキシフェンが標準治療ですが、若年や再発リスクの高い症例では、タモキシフェンに加えて卵巣機能を抑制する治療法(LH-RHアナログ)を追加します。

閉経後では、卵巣からのエストロゲン供給は止まる代わりに脂肪組織や腫瘍組織でエストロゲンが産生されます。この時にエストロゲン産生に関与する重要な酵素としてアロマターゼがあり、この酵素の働きを抑制するアロマターゼ阻害剤が閉経後乳がんに高い治療効果を発揮します。ホルモン療法は5年が基本とされていましたが、最近は再発リスクの強い症例に対しては10年間もの長期にわたって治療することもあります(図2)。

図2  乳がんのホルモン療法

少ない副作用で高い効果が得られる分子標的治療

がん細胞では正常細胞と比較して特殊な遺伝子が過剰発現し、がん細胞の生存、増殖、転移に働いています。分子標的治療は、そのがん細胞に特殊な分子を狙い撃ちすることで、少ない副作用で高い治療効果が得られることを目的に開発されました。その分子標的治療の代表的な治療として「HER2(ハーツー)標的治療」があります。HER2陽性乳がんは全乳がんの約20%を占めていますが、治療法が開発される以前は悪性度が高く治療成績が不良とされていました。

約15年前に登場したHER2標的薬(ハーセプチンなど)によって、治療成績は劇的に改善し、HER2陽性乳がんの再発症例は半減しました。ホルモン療法と並んで、乳がんの特徴的な治療法といえます。

特別ではなくなった乳房再建術

手術できちんとがんを取り除いた後に、手術の前と同じような胸のふくらみを作ることを乳房再建手術といいます。シリコンインプラントと呼ばれる人工乳房を用いる方法と、自身のお腹や背中の一部から脂肪や筋肉などの自家組織を用いる方法があります。人工乳房を用いた再建は自費診療のため高額な費用がかかることが難点でしたが、2013年からは人工乳房を使った手術も保険適用となったため乳房再建術は急速に普及し、2015年だけで全国で5000件以上の手術が行われました。

人工乳房を使った手術の最大のメリットは、体のほかの部分に新しい傷をつけずに済み、比較的簡単に乳房のふくらみを再現できる点です。人工乳房の大きさや形状は200種類以上ありますので、それぞれの乳房の形や大きさに合わせたものを選ぶことができます。しかし、自家組織を用いた再建には自然な乳房の形や、温かさ、柔らかさが得られるという長所があり、再建を行う際には形成外科医とよく相談してからどちらの方法にするか決めてください。

乳がん患者を対象にした妊孕性温存の取り組み

乳がんの全身治療としてホルモン療法と化学療法、分子標的治療があることはご説明しましたが、これらの治療をいったん始めてしまうと治療中は妊娠を避けなくてはいけません。ホルモン療法は5~10年間かかりますし、化学療法を1コース行うと卵巣の年齢は1・5歳年をとるといわれていますので、乳がんの治療が終わるころには妊娠できる能力(妊孕性)が低下してしまいます。かつては、がん患者というだけで妊娠をあきらめるような風潮がありましたが、現在は治療後の妊娠や出産について支援できる体制も整いつつあり、妊孕性温存が可能となってきています。

妊孕性温存の具体的な方法としては、治療開始前に受精卵(パートナーの精子と出合った卵子)として冷凍保存しておく方法と、卵子そのもの(未受精卵)を保存する方法、卵巣を凍結保存しておく方法(広島県内では県立広島病院のみ実施可能)の三つがあります。受精卵では3個のうちに1回程度の確率で妊娠が成功するとされ、未受精卵では10個以上でやっと1回成功するとされています(図3)。妊孕性温存の対象は35~40歳といわれていますが、妊娠を希望される方は、治療開始前にまず主治医の先生と相談してください。

図3 妊孕性の温存

総合病院とかかりつけ医の役割分担

乳がんの手術は、ほかのがんと比べても大きながん拠点病院に偏る傾向があり、年間100症例以上手術をする病院はいくつもあります。そのため、手術をした病院で細やかにフォローアップすることは時間的な問題で難しくなっています。さらに、がん拠点病院では術後のフォローアップに加えて妊孕性温存、遺伝性乳がん、乳房再建など専門的な取り組みも必要ですし、再発した乳がん患者さんに十分に時間を割いて治療することも大事です。

こういった状況から、経過の良い患者さんはかかりつけ医と手術した病院とが連携しながらフォローしていく「がん連携パス」が全国で導入されました。この連携パスに従い、かかりつけ医では定期的に患者さんを診察し、マンモグラフィ、超音波検査、血液検査などを行い、手術をした病院も半年から1年に1回診察します。

かかりつけ医とがん拠点病院が、両輪となって一緒に患者さんをフォローしていくような体制です(図4)。広島大学病院も年間約300症例の乳がん手術を行っていますが、幸いにも広島県内にはこの本に掲載されているような良い乳がん専門クリニックが多くあるので、円滑な連携フォローができています。

図4 総合病院とかかりつけ医との役割分担

乳がんの良いかかりつけ医の条件

良いかかりつけ医の条件として重要なことは、まずよく話を聞いて相談に乗ってくれるということです。さらに、ご自宅にできるだけ近いほうが気軽に診てもらえてよりいいですね。

次に、乳がんについてよく知っていることです。乳がん領域には乳腺専門医という制度があり、外科であれば100例以上の手術を執刀していることや専門医試験に合格することなど、非常に厳しい条件があります。診てくれる先生が乳腺専門医であれば乳がんについての知識や治療、その副作用対策について安心して任せることができるでしょう(日本乳癌学会ホームページ)。

また、乳がんを見つけることに関する資格としては、マンモグラフィ読影資格、乳腺超音波資格などがあります。自分でしこりを見つけて精密検査をしてほしいという方や乳がんが心配な方は、これらの資格を持っている先生を探して診察を受けるといいでしょう。ご自宅に近いところで探したいという方は、広島県がつくっている「乳がん医療ネットワーク」で探すことができます。

月1回の「まちなかリボンサロン」にぜひ参加を

がんになると、自分のがんや治療への不安などで押しつぶされそうになることがあります。そんな乳がん患者さんへの支援として月1回、NPO法人ひろしまピンクリボンプロジェクトが「まちなかリボンサロン」を開いています。このサロンへは、どの病院で治療している患者さんやご家族でも、気軽に参加することができます。

毎回、医師、看護師、薬剤師など医療従事者が5~10人が参加していますので、病院では聞きにくかったことや不安に思っていることを相談することができます。テーマごとに乳がんに関する講義も行われていますので、最新の乳がん情報を手に入れることもできます。全国でも先駆的な取り組みとして注目されているこの「まちなかリボンサロン」に、ぜひ一度参加してみてください。