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良いかかりつけ医を持ちましょう

福山市病院事業管理者高倉 範尚

たかくら・のりひさ。1947年京都府京丹後市生まれ。1973年岡山大学医学部卒業、岡山大学第一外科入局。庄原赤十字病院、国立福山病院、広島市民病院などを経て、2010年福山市民病院院長就任。2014年より現職。日本外科学会専門医、指導医。日本消化器外科学会専門医・指導医。日本消化器病学会専門医・指導医。日本肝胆膵外科学会高度技能指導医。岡山大学臨床教授。消化器がんの外科治療が専門(特に肝胆膵外科)

福山市民病院勤務時代には、肝胆膵の消化器外科医として外科治療にあたるとともに、同病院長として地域に貢献してきた。2014年4月より福山市病院事業管理者となり、地域医療・病院経営・将来の医療の在り方などに日々取り組んでいる同氏に、備後地域(主に福山・府中医療圏)の医療連携やかかりつけ医の現状などについて話を聞いた。

医療バランスと地域連携の充実

広島県では、保健医療の基本単位として、県内を7つの医療圏に分けて設定しています。広島、広島西、呉、広島中央、尾三、備北、福山・府中の各医療圏です。県内の他地域と比べてこの福山・府中圏域では、病院(総合病院)と診療所(開業医)の連携や大中小それぞれの病院の関係などに、大きな違いはないと考えます。

福山・府中圏域は広島県東部に位置し、岡山県と県境を接しています。福山市内の病院では、設立年代順ですと福山医療センター、中国中央病院、日本鋼管福山病院、福山市民病院(公的4病院)が中核を担っています。また、脳神経センター大田記念病院・福山循環器病院などの民間専門病院が、圏域の急性期医療において大きな役割を果たしていることも、特徴ではないかと考えます。

しかし、同圏域の医師・看護師の数は、人口10万人に対して全国平均以下となっており、残念ながら医療資源は決して恵まれてはいません。中でも大きな課題は、地域全体に若い医師や看護師の人数が絶対的に少ないことです。現在、同地域には看護学校が2校しかありませんが、今春福山地区に看護師の養成学校ができると聞いています。

もう一つの課題が、24時間365日に小児救急に対応できる病院がないことで、小児の救急患者が入院できる病床と医師の確保が、圏域の大きな課題となっています。

医療バランスとしては、高度急性期・急性期・回復期・慢性期のどの段階の患者さんも、他地域から頻繁に出入りがあるということもなく、この圏域の住民の9割は地元で医療が完結できていますし、基本的には地域の連携は取れていると考えます。

2025年に向けて求められる医療機能の分化

国は、団塊の世代が後期高齢者となる2025年を見据えて、医療改革の実施を計画中です。地域で必要とされる医療構想を構築していくための地域医療構想調整会議が、各種団体からの代表者によって発足しています。

その中の1つが医療機関の機能分化です。つまり、同じ地域の病院が同じような医療を行うのではなく、症状が出たらまず「かかりつけ医」による医療、そこからの紹介で手術などを行う「急性期」の医療、そしてリハビリなどの「回復期」の医療、介護が必要なら「在宅か介護施設へ」という、病院から次の病院や施設への地域完結型医療の確立を考えています。

また、無駄な医療費を抑えるために、かかりつけ医からの紹介状のない初診の方に対して、400床以上の病院受診時の加算初診料も導入されました。

病院医療についてお話しすると、「地域の中で、必要な病床数を調査・検討を行って決めてください」いうのが、国の基本的な考え方です。その中で、この圏域の課題は、現在、各病院が報告している機能別病床数と2025年に福山・府中圏域で必要とされる機能別病床数、特に急性期病床数と回復期病床数に解離があることで、これから2025年に向けて、急性期病床から回復期病床への病床機能の転換が行われるのではないかと考えています。

機能の異なる病院同士の連携は可能性がありますが、同じ機能を持つ病院と病院の連携は難しいでしょう。しかし、医療需要の拡大が見込めない中、たとえば急性期病院同士であっても、お互いが強みを生かすような疾患領域別の分化や連携は必要になっていくと考えます。

かかりつけ医を持つメリットとは

かかりつけ医について、日本医師会では「健康に関することを何でも相談でき、最新の医療情報を熟知して、必要なときには専門医や専門医療機関を紹介してくれる、身近で頼りになる医師のこと」と位置付けています。

患者さんご自身の生活圏内に開業されている、内科系か外科系で全身を診ることのできる先生がいらっしゃれば、風邪や少しの体調変化でもまずは相談し、その先生と「顔を知り、顔を知られる関係」を作って親しくなることが、まずは最初の段階だと思います。そうなれば、何でも相談することができます。

さらに言えば、私の世代が子どもの頃の田舎の医師のように「健康相談を拒まず、家族構成までも把握しているほどの地域に根付いた先生」が、本当のかかりつけ医だと考えます。その上で「かかりつけ医の施設での診療と、その先の必要な医療は紹介する」といった信頼関係ができていくと思います。

また、かかりつけ医を持つメリットの1つに「検診の受診率が高くなり、がんなどの疾患も早期に見つかることで、患者さんの健康や生活に役立つこと」があります。現状では、この圏域のがん検診受診率は低く、改善が求められています。かかりつけ医の先生方には、検診をぜひ勧めてほしいですね。病気の早期発見は、医療費の軽減にもつながります。皆さんが健康に過ごしていただくために「がんを防ぐための新12か条」(禁煙・節酒・バランスの取れた食事・減塩・適度な運動など※2017年(公財)がん研究振興財団公開、下表)なども参考に、定期的な検診や早期受診を心がけていただければと思います。

また、病院の医師の立場からすると、かかりつけ医での診療で本当に専門的治療が必要かどうかの調べがついていると、効率的で仕事の負担軽減にもなります。そうすることで、他の患者さんの診療に時間を使えるメリットにもつながるのです。

かかりつけ医は、地域と病院を結ぶ橋渡し役

私は、かかりつけ医は「地域と病院の出入口を結ぶキーパーソン、橋渡し役」だと思っています。現在、福山地域でも訪問診療だけを行う地域に根差した開業医も出てきています。これからは、病診連携だけでなくクリニック同士も連携したネットワークづくりが、地域医療を支えるためには大事だと考えます。

現代は、何か病気になって治っても、また次の病気が見つかる時代です。繰り返し、長期にわたるケアが必要な時代になっています。かかりつけ医に「広く、長く」、生活習慣病のチェックなどの健康管理をしてもらうことが大切ですので、ぜひ身近で良いかかりつけ医を持っていただきたいと思っています。