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脳卒中や認知症の予防を日頃から行いましょう

広島大学病院 脳神経内科 教授丸山博文

まるやま・ひろふみ。1965年広島市生まれ。1990年広島大学医学部医学科卒業。1996年広島大学大学院卒業。1998年広島大学病院第三内科助手。2006年広島大学原爆放射線医科学研究所准教授、2013年脳神経内科学准教授を経て、2017年より現職。研究分野は神経変性疾患、認知症、分子遺伝学、遺伝カウンセリング等。医学博士。

脳神経内科では、脳・脊髄・末梢神経・筋肉などの病気を内科的に治療します。脳神経内科が扱う対象疾患は多岐にわたりますが、高齢社会を迎える中、同科の病気は増加傾向にあります。ここでは、現在の病気の傾向や最新の治療などについて、地域の拠点病院とかかりつけ医の役割などについて、広島大学病院脳神経内科の丸山博文教授に話を伺いました。

血管を健全に保って脳卒中や認知症の予防を

広島県は、脳神経内科の病気の件数は全国の平均レベルです。その中では、脳卒中・認知症・てんかんが多く、いずれも高齢化に伴って増える病気です。
神経難病は、この三つほど患者数は多くないものの、高齢化とともに増加傾向にある点が共通しています。
現在、国内には脳卒中患者が約300万人、認知症患者は約500万人いると推計されており、認知症は65歳以上では10数人に1人、85歳以上では2人に1人といわれています。
脳卒中の最大の危険因子は、動脈硬化の進行です。それには、「高血圧」「糖尿病」「不整脈」「タバコ」「アルコール」「脂質代謝異常」「塩分」「脂肪」「運動不足」「肥満」などが関係しており、この10項目について日頃から気を付けて生活すれば、予防できる可能性があります。血管を健全に保っていれば、動脈硬化が原因で起きる脳卒中や認知症を4割減らせるという報告もあります。
認知症については、半数以上がアルツハイマー型ですが、2割は血管性認知症といわれ、さらにアルツハイマー型認知症に血管障害の要素が加わっている人も少なくないため、やはり血管を健全に保つことが重要になってきます。また、頭部外傷(頭のけが)も認知症やてんかんにつながることが少なくなく、特に高齢者は、転倒などで頭のけがをしないように気を付けることも大切です。

高齢者のてんかんに注意

てんかんは、小児科の病気というイメージが強いと思いますが、実は高齢者にも多い病気です。てんかん患者は全国に約100万人いるとされ、高齢者では100~120人に1人といわれています。
高齢者のてんかんで特徴的なものとして、脳血管障害に伴う後遺症としてのてんかんがあります。また、明らかな原因が不明のことも多く、けいれんがなく意識がボーッとするなど、はっきりした症状が少ないため、てんかんと気付きにくい場合があります。高齢者のてんかんは、この意識がボーッとするタイプが多いため、見逃されたり、認知症と誤診されたりすることが多いのですが、脳波検査をするとてんかんの波が出ていることがあります。

パーキンソン病に最新治療が登場

高齢化とともに増えているのがパーキンソン病です。パーキンソン病は、現在、さまざまな新しい治療法が登場しています。胃瘻から専用ポンプを使って、小腸内に治療薬を持続的に投与するという新しい治療法は、薬の副作用の強い進行期パーキンソン病の患者さんに対して効果が期待されています。
広島県内では、広島大学病院と広島市民病院の2施設でしか行われていませんが、患者さんが日常生活を支障なく送れるようになるなど、注目を集めています。
*胃瘻/腹壁を切開して胃内に管を通し、食物や水分や医薬品を流入させ投与するための処置

県内医療機関の棲み分けが進む

脳神経内科の病気で大切になるのが、正確な診断です。広島大学病院の重要な役割は、診断をつけ治療方針を立てることです。基本的な病気の診断は地域の拠点病院でできますが、診断の難しい症例や高齢者で複数の病気を合併しているような場合は広島大学病院で正確な診断をつけ治療方針を決定し、その後の治療や検査は地域の拠点病院で行ったり、さらに病状が落ち着けば、開業医にバトンタッチしてコントロールしていきます。
脳神経内科の県内の拠点病院としては広島市民病院、県立広島病院、広島赤十字・原爆病院、安佐市民病院(以上、広島市)、東広島医療センター(東広島市)、広島西医療センター(大竹市)、呉医療センター、中国労災病院(以上、呉市)などがあります。脳神経内科医のいる脳卒中対応病院としては梶川病院(広島市)、大田記念病院(福山市)が、神経難病入院病院としてはビハーラ花の里病院(三次市)などもあります。リハビリテーション病院としては広島県高次脳機能センター(東広島市)や広島市立リハビリテーション病院(広島市)があります。
てんかんは、現在、県内で1次(開業医)、2次(拠点病院)、3次(広島大学病院)という医療機関の棲み分けのシステム構築が進められています。広島大学病院にはてんかんセンターがあり、薬でコントロールができなかったり、外科的手術が必要とされる患者さんが、2次医療機関から紹介されてきます。

大学病院での取り組み

広島大学病院には、広島県と広島市の委託で難病対策センターが設置されており、ここではさまざまな難病に関する相談を受けています。センター独自の取り組みとして、在宅人工呼吸器装着患者の災害時対応システム(災害時行動パンフレット)を作るなど、全国的に見ても進んだ活動を展開しています。
広島大学病院には遺伝子診療部もあり、神経難病の遺伝に関わる相談やカウンセリングに対応可能な体制も整っています。

「ひろしまオレンジパスポート」を先進的に導入

認知症に関しては、広島県で「ひろしまオレンジパスポート(広島県認知症地域連携パス)」(広島県認知症疾患医療センター発行・県内9か所で配布、P36下写真)を作り、全国に先がけて県内全域で導入されました。

気軽に相談できるかかりつけ医を持ちましょう

脳神経内科は歴史も浅く、県内に専門の開業医の数が少ないのが課題です。長く付き合わなければならない病気をお持ちの場合には、ご自宅の近くにかかりつけ医として脳神経内科専門医のいるクリニックを探して、普段はそこでコントロールしてもらえるのが最適です。
しかし、近くに脳神経内科の専門医がいなくても、例えば内科でも整形外科でもよいので、その先生の専門に限らずどんな病状に関しても気軽に相談でき、何かあればすぐに専門医のいる総合病院などへ紹介してくれるかかりつけ医を持つことが大切です。また、神経疾患の場合には動くことが難しい人が多いため、かかりつけ医が往診してくれるのが理想的です。
脳神経内科は、要介護者の原因疾患の多く(脳血管疾患、認知症など)を扱っている診療科です。脳卒中を疑った場合には、可能な限り早く専門の病院を受診することが重要で(ACT -FAST、下イラスト)、かかりつけ医を持つことには非常に大きな意味があると考えます。