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脳卒中リハビリテーションの最新治療 患者目線のかかりつけ医が安心

広島大学病院 リハビリテーション科 教授木村浩彰

きむら・ひろあき。1964年生まれ。1988年広島大学医学部医学科卒業。尾道総合病院、安佐市民病院、広島県立身体障害者リハビリテーションセンター等を経て、2008年広島大学病院リハビリテーション部准教授、2010年7月より同院リハビリテーション科教授・診療科長。日本リハビリテーション医学会特任理事、専門医・指導医。日本義肢装具学会、日本運動器学会所属。

社会の高齢化が急速に進み、リハビリテーション医療の対象者は全ての年齢層に広がり、運動器障害、脳血管障害、循環器や呼吸器などの内部障害、摂食嚥下障害、小児疾患、がんなど幅広い領域に及んでいます。ここでは、脳卒中リハビリテーションを中心に最新の治療動向や県内のリハビリテーションの医療体制などについて、広島大学病院リハビリテーション科の木村浩彰教授に話を伺いました。

オーダーメイド治療が重要

リハビリテーション(以下、リハビリ)科の役割は、脳卒中によって生じた半身麻痺や言語障害などを回復させるものと、不自由さがあってもその人らしい生活を可能にするものがあります。改善が困難であっても、不自由さがひどくならないようにすることもリハビリの役割です。しかし、脳の損傷部位によってさまざまな症状が組み合わさって出現し、型通りのリハビリ治療では効果が出にくいため、各々の患者さんに適したオーダーメイドの治療プランが必要となります。

脳卒中リハビリテーションの最新治療とは

脳卒中のリハビリは、「急性期」「回復期」「生活期」に分けられます。リハビリを行わずにいつまでもベッドの上で横になっていると、心臓や肺の働きが低下し、下肢を動かさないでいることでエコノミー症候群などが生じてしまいます。そのため、脳卒中治療ガイドライン(2004年)で急性期からリハビリを行うことが推奨され、現在では発症当日からでもリハビリが開始されます。
急性期病院で、手術や点滴などの治療で症状が安定すれば、体の向きを変えたり、麻痺している関節を動かしたり、寝た姿勢から座ったり立ったりするリハビリが始まります。そして、理学療法士・作業療法士・言語聴覚士などの専門スタッフが関わり、半身麻痺や言語障害などに対するリハビリの指標を作成していきます。このように、急性期病院で脳卒中の治療を集中的に行った後、回復期のリハビリ病院へ転院し、専門スタッフのもとでリハビリに専念することになります。
回復期リハビリも、主治医やリハビリ科医が診断の上、できるだけ早期に最大の機能回復をめざして行われます。体の不自由さを回復させるだけでなく、多くのリハビリ専門スタッフが関わって、日常生活の動作をなるべく自立させることに重点を置いたリハビリになります。「これから社会復帰をめざして頑張りましょう」という場です。患者さんやご家族と気さくに会話ができる医師が求められます。また、医師とリハビリ専門スタッフがチームを組んで対応します。
退院してからは、自宅で生活期リハビリが始まります。生活期という言葉は、「できるだけ自分の力で生活を送る、麻痺などの障害が残っても趣味などを大切にしながら生活していく」といった、生活を重視する考えに基づいたものです。病院ではできた動作も、自宅で動くことが少なくなると機能が低下していきます。獲得した機能を、できるだけ長期に維持していくことが大切です。

「ひろしま脳卒中地域連携パス」が有用

回復期病棟は、人口10万人当たり50床が適正とされていますが、広島県ではこの基準をほぼクリアしており、バランスの良い状態です。回復期における治療の主な課題は、急性期後の障害の改善で、今後は質の向上をめざしていく必要があります。保険適用においては、アウトカム評価(患者さんの70%を自宅復帰させる必要があるなど)という基準があるため、ある程度の質を保つことが実現していると思われます。
厚生労働省は、24時間体制で治療方針を決定する高度急性期病院を県単位で作っていく方針です。これは、高度急性期医療の機能を集約した病院で、このシステムは台湾で既に運用されています。ただし、急性期病院が診断・治療を行っても、自宅に戻ることは簡単ではありません。居住地域の事情などもあり、それぞれの社会資源も異なります。患者さんがその人らしい生活をするためには、地域に密着したかかりつけ医の存在が重要になると考えます。
広島県では、患者さんが退院した地域で効率的に継続した治療を受けられるよう、患者さん一人ひとりの診療計画書となる地域連携パスの活用を進めています。脳卒中の県内共通連携パスを進化させた、「ひろしま脳卒中地域連携パス」が作成されました。医師が治療だけでなく、患者さんのリハビリやその後の状態を知る顔が見える関係の構築をめざし、一定の成果が得られているシステムです。現在では、入退院の際に連携を促すように変わってきています。

患者さん目線を持ったかかりつけ医を探しましょう

退院後に自宅復帰した際に、「これからのリハビリの責任を誰が担うのか」を考えたときに要となるのがかかりつけ医です。その場合、かかりつけ医が「専門は心臓だから、それしか診ません」というのでは話になりません。現在は、高齢化が進んで単に患者さんが増えるというだけでなく、既往歴や障害を持った方もおられます。病気をコントロールすることは大事ですが、生活期リハビリは生活そのものが課題のため、生活の安定化、QOL(生活の質)の向上、社会参加など、病気だけでなく生活を含めたトータルな支援が重要になります。
脳卒中になってからどの程度まで病気が回復するかは、患者さんごとで異なります。リハビリで求められるものは、体の不自由さから回復することだけでなく、その人らしく生活できるようになることです。生活期の患者さんは、「病気を治してほしいけれども、病気で困っていることもどうにかしてほしい」と思っています。その困っていることを何とかすることこそが、リハビリです。
リハビリ専門スタッフは、それぞれの専門性に基づき、医師とは異なる目線で患者さんを診ます。ですので、かかりつけ医は患者さんの生活全般にできるだけ興味をもち、生活に関わり、スタッフや地域包括センターなどと連携を取りながら、元気で生きがいのある人生が送れるように支援することが求められます。

地域連携が緊密な病院が最適

リハビリの観点からすると、良いかかりつけ医は「地域の社会資源と連携をどれくらい持っているか」が、一つの指標だと考えます。病院のホームページに、訪問介護ステーションの有無や適用される介護保険制度などについて掲示されていますので、参考にしてみてください。また、訪問介護ステーションを持っていなくても、そういった施設などと緊密な連携があれば問題ないと思います。
このように、生活全般を診てもらいたい場合には、地域との連携がある病院を選ぶのが良いと思います。病院のホームページだけでは分かりにくいため、地域連携が分かる情報を一括で提供できるような場を整備することが現状の課題です。
患者さん自身は病気のことで頭がいっぱいで、そこまで意識がまわりません。ですから、客観的な判断が可能なご家族などがいれば、そうした情報を整理して患者さんに助言していくことが求められます。良いかかりつけ医は、さまざまな意味で連携を取り、患者さんの生活に興味を持ち、困っているを代弁できる医師のことだと考えます。