医療法人社団 浜中皮ふ科クリニック
理事長・院長
浜中 和子(はまなか・かずこ)
[プロフィール]
1976年広島大学医学部医学科卒。広島鉄道病院皮膚科、広島大学医学部皮膚科、東洋工業東洋病院皮膚科副医長、JA尾道総合病院皮膚科主任部長、広島総合病院皮膚科主任部長などを経て、1995年より現職。診療のかたわら、乳がん患者支援活動やホスピスケア活動に奔走。著書に『のぞみを胸に』。
日本皮膚科学会認定皮膚科専門医
●肌のうるおいに必要な物質
肌のうるおいを一定に保つためには、「皮脂」「角質細胞間脂質」「天然保湿因子」という3つの物質の働きが重要です。肌の表面には「表皮」があり、これらの物質は、表皮の一番上の層である「角質層」にあります。
- 皮脂
皮脂腺から分泌される脂のことで、汗腺から分泌された汗などと交じり合ってできる皮脂膜で皮膚の表面を覆い、水分の蒸発を防いで肌のうるおいを保ちます。
- 角質細胞間脂質
角質細胞と角質細胞の間にある脂のことで、角質細胞同士をくっつける役割があります。水分を挟み込んで何層にも重なり、水分を逃がさないようにします。
- 天然保湿因子
NMF(Natural Moisturizing Factor)とも呼ばれ、低分子のアミノ酸や塩類のことをいいます。角質層の中で水分を保持する役割があります。
肌のバリア機能を担う角質層を健やかに保ち、ピチピチプリプリなお肌でいるための、4つの秘訣をお伝えします。
●1 清潔な肌を保ちましょう
- 寝る前はどんなに眠くても、きちんと洗顔すること。特に、午後10時から午前2時の間は新陳代謝が最も活発! そんな時に肌が汚れてるなんて、最悪です。
- 敏感肌、脂性肌、乾燥肌……、それぞれの肌に合った洗顔料で、きちんと洗顔しましょう。
- 朝は洗顔料を使わないで水洗いのみに!(夜間にできた貴重な皮脂膜を落とさないためです)
●2 保湿をしましょう
- 洗顔後の皮膚はとても乾燥しているので、乳液、クリームなどで人工の皮脂膜を作って、皮膚の回復を待つこと。
- 化粧水だけでは皮膚の乾燥は防げません。
- 本来の肌の水分が逃げないように、人工の皮脂膜でフタをするわけです。
●3 紫外線対策(光老化の防止)をしましょう
- 最近はオゾン層の破壊などで、紫外線は強烈です。特に20歳を過ぎると、日焼け後の皮膚の回復も遅くなり色素沈着を起こしやすいのです。
- 日焼け止めのクリーム、帽子、日傘などで紫外線をカットする工夫をしてください。
- メラニンの生成を抑えるビタミンCの内服も有効です。
●4 正しい化粧品を使いましょう
- 人それぞれに「合う」化粧品はさまざまです。基本的に刺激(ピリピリしたり、しみたり)のないもの、肌にとって心地よいものを使いましょう。
- しみる化粧水などを使い続けると、炎症を起こし、シミ(炎症後色素沈着)になったりします。「長く使っているから……」と安心していても、合わなくなることもあります。
- 1回でもしみたら、もう二度と同じものを使ってはダメ。しみるということは、肌が「やめてー」と叫んでいることです。
●恐いもの、それは紫外線です
ある程度の紫外線は、強い骨を維持してくれる大事なビタミンDを作り出すために必要です。しかし、紫外線を浴びすぎると、健康に悪い影響がでます。例えば、紫外線により肌が赤くなり、その後黒くなる「日焼け」は紫外線による急性障害です。
また、老化現象といわれていた高齢者の顔のシミや斑点は、歳を重ねるからだけではなく、長年紫外線を浴びることで引き起こされる「光老化」と呼ばれる皮膚の変化です。
長い年月をかけて紫外線を浴び続けることで、こうしたシミや斑点の原因となるだけでなく、免疫機能を左右したり、皮膚がんを引き起こしたりすることもあります。帽子や日焼け止めなどを効果的に使って紫外線と上手に付き合いましょう。
あなたのお肌が歳をとるのは、決して誕生日ではありません。紫外線の強い季節(4~9月)なのです。曇っている日は大丈夫と思っていても、紫外線は薄い曇なら80%以上通過します。ご用心、ご用心!
- [紫外線対策のために]
- 日傘をさす:黒色は熱も吸収してしまうため、白色がベター。アルミ繊維を織り込んだ銀色の傘がベストです。
- スカーフを巻く:紫外線カット素材のスカーフがよいでしょう。
- 帽子:帽子のつばは、7cm以上のものを選びましょう。
- サングラス:白内障の原因ともなる紫外線から目を保護する効果もあります。暗い色のサングラスは、目を見開いてしまい、かえってよくないので、UVカット加工された薄い色のサングラスを。
- 手袋をする
- 長袖のシャツ:紫外線カットの素材が好ましい。厚手の白生地がお勧めです。
- ジーンズなど、織り目の詰まった長ズボン
- 日焼け止めクリームなどを使う
- [紫外線対策の注意点]
- 真っ黒に日焼けした子供が健康的!というのは……、昔の話。小さい頃からの紫外線対策が、後年のシワ・シミ・がんや免疫機能を左右します。外遊びの経験は子どもの精神発達に重要ですから、帽子、日焼け止めを効果的に使ってください。
- あまり神経質になりすぎて熱中症などにならないよう、バランスを考え、快適に過ごしてください。
- [日焼け止めクリームについて]
- 日焼け止めクリームは、自分によく合ったものを! 日常使いなら「SPF10」「PA+」ぐらいでいいですが、スポーツや長時間の外出等には「SPF30」「PA+++」以上が効果的です。
- SPFはUVB(表皮に作用し、赤い日焼けになる。免疫薬に悪さをします)防止効果を示す数値です。
- PAはUVA(肌の奥深くまで届き、黒焼けやシワ・タルミの原因となる)防止効果を示す数値です。
- 肌の弱い人は、吸収剤の入っていないものを、肌の弱い部分(腕の内側、首など)で試してみてから使いましょう。
●化粧品かぶれについて
- 化粧品かぶれは接触皮膚炎、いわゆる「かぶれ」の一種です。大きく分けると「刺激性」によるものと「アレルギー性」によるものとがあります。
- 刺激性の皮膚炎は、化粧品の成分によって生じる炎症で、刺激の強い化粧品や使用時の肌の状態により、誰にでも起こる可能性があります。
- アレルギー性の皮膚炎は、体内の抗体が異物(アレルゲン)を排除しようとして起こるもので、そのアレルゲンに拒絶反応を起こす人は、少量でも症状が現れます。医療機関のパッチテストでアレルゲンが特定できることもあります。
- 化粧品を使用していて、かゆみ、発疹、腫れ、かさつき、赤みなどの症状が出たら、すぐに使用を中止しましょう。症状がひどい場合は、早めに専門医を受診することが大切です。