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かかりつけ医の上手なかかり方 迷ったときのかかりつけ医⑩/百歳まで元気』(2023年6月刊行)より

広島大学病院 総合内科・総合診療科 教授・副病院長伊藤 公訓

伊藤 公訓

いとう・まさのり
1988年広島大学医学部卒業
広島大学病院消化器・代謝内科診療教授などを経て、2019年より現職。
副病院長。総合内科・総合診療科長。
日本内科学会認定総合内科専門医、日本消化器病学会認定消化器病専門医、日本消化器内視鏡学会認定消化器内視鏡専門医。
専門は、消化器内科学と総合診療医学。

かかりつけ医は、どうして必要なのか。かかりつけ医を持つことの意味をはじめ、上手な活用法、かかりつけ医と総合診療医についてなどを、広島大学病院総合内科・総合診療科の伊藤公訓教授に伺いました。

健康に関することを何でも相談

かかりつけ医とは、どのような存在を指すのでしょうか。「 健康に関することを何でも相談できるうえ、最新の医療情報を熟知して、必要なときには専門医、専門医療機関を紹介してくれる、身近で頼りになる地域医療、保健、福祉を担う総合的な能力を有する医師」と、国や日本医師会ではかかりつけ医を定義しています。

かかりつけ医は内科医だと思われがちですが、どの診療科の医師であってもかかりつけ医と呼ぶことができます。病院の医師か、クリニックの医師か、どの診療科かを問うものではなく、どの医師がかかりつけ医なのかは患者によってさまざまで、患者の自由な意思によって選べます。日常生活での健康に関する相談や、体調が悪いときにまず話ができ、自分が信頼できると思う医師をかかりつけ医と呼べばよいのです。

増えている総合診療医とは

現代社会では、医療分野の専門分化が高度に進み、ほとんどの医師は自分の得意とする臓器専門分野を持っています。今、町で開業している医院やクリニックも、ほとんどが得意分野を標ひょう榜ぼうしています。診療科が細分化されて、自分の病気に対応した診療科を患者が受診することができるようになったのは良いことで、その意味で臓器専門医は必要ですが、一方でよく聞かれるのが、細分化しすぎて、自分が困っている症状に関して、どこを受診すればよいのかわからないといった声です。

高度細分化した専門医療と、必要とされている医療のギャップ。こうした社会の傾きを戻し、問題を解決するために、近年は総合診療医が患者の症状から適切な診療科を選択してくれる総合診療科を設ける病院が増えてきました。

総合診療医とは、プライマリケア(総合的に診る医療)と地域の健康問題への対応ができる医師と定義付けられ、「急性期から慢性期までの病院医療チームにおいてリーダーシップ、マネジメントスキルを発揮し、病院ケアでの患者の健康管理を最大化することのできる医師」(日本病院総合診療医学会)です。総合診療医には、さまざまな症状や疾患に対応できる最新の医学知識、コミュニケーション能力、マネジメント能力、さらに地域と密接にかかわる医療を展開する総合的な力が求められます。

そんな総合診療医を育てるというミッションは、以前はありませんでしたが、国の施策として総合診療医を育成するシステムが設けられ、2018 年から総合診療専門医制度がスタートし、運用が始まっています。大学病院や総合病院でさまざまな症状を訴えて来院する患者のコンシェルジュのような役割を担ったり、また、在宅医療で内科・外科を問わずに診察する医師などが専門医の資格を取得したりしています。2023 年3月現在、広島県内では6人の総合診療専門医が活躍しています。

患者と大きな病院をつなぐ

それでは、どこを受診するか迷ったときは、大きな病院の総合診療科を受診すればよいのではないか。そう考える人も多いと思いますが、実はそれは「NO」です。

大学病院や総合病院は、専門診療は得意ですが、専門外の診療への対応は得意ではありません。病院総合診療医は、さまざまな症状や疾患に対応できる最新の医学知識を身につけていますが、それが最も生かされるのは高度医療の中でも非常に診断が難しい人や、複数の疾患を抱えていて治療に難航するような人に対してです。大学病院や総合病院にかかりつけ医としての機能はあまり期待できません。いろんな診療科をたらい回しにされ、結果として時間がかかり、患者に対して肉体的にも経済的にも負担を与えてしまうことになりかねません。

患者と大きな病院とをつないでくれるのが、地域のかかりつけ医です。

かかりつけ医を持つことのメリット

かかりつけ医を持つことが推奨される背景には、高齢社会に伴って膨れ上がっている医療費の問題もあります。2018 年からは、大きな病院を受診するときは、紹介状がなければ選定療養費が患者に負担されるようになっています。

最初はかかりつけ医に診てもらい、初期の治療、健康管理、慢性疾患の診療、訪問診療などを受けます。かかりつけ医での対応が難しいケースは、適切な専門的治療が受けられる総合病院(急性期病院)への紹介状を書いてもらい、そこでの治療が終わって症状が安定したら、また地域のかかりつけ医に逆紹介してもらうことができます。かかりつけ医は、回復期リハビリ、療養型病床、介護サービスなどとも連携しており、患者の自立をサポートしてくれる存在です。

日本では、昔から地域で何でも診てくれるお医者さんの存在がありました。かかりつけ医の原点でしょう。日常生活における健康の相談から傷病による受診や通院など、子どもから高齢者までどの世代の人にとっても健康をサポートしてくれる頼れる存在となるのが、かかりつけ医です。病気を治すというより、人を診る。人を治す。それができるためには患者としっかりコミュニケーションをとり、信頼関係を築き、患者だけでなく家族や家庭環境、背景にある事情、その人が生活する地域社会まで理解していなければ、患者を全人的(人を、身体・心理・社会的立場なども含めた総合的な観点から取り扱うさま)に診ていくことはできません。

「病気」と「病い(やまい)」は異なります。「病い(やまい)」は患者が病気だと思う気持ちであり、かかりつけ医は患者の気持ちに寄り添って、「病い(やまい)」まで治せる人です。地域で多くの患者を診てきた医師としての経験値も加わり、大学病院を直接受診するよりよほど早く、治療に関し適切な判断ができることも多いのです。日頃の健康状態を知ってもらえて、症状に応じた専門医をスムーズに紹介してもらえ、病気の予防や早期発見・早期治療にもつなが るなど、かかりつけ医を持つことのメリットは大です。

日頃から健康に留意しているので医者とは縁がないという方がかかりつけ医を見つけるためには、まず予防接種や健診などの機会に近くの診療所や医院を気軽に受診することをお勧めします。そこの医師とコミュニケーションがとれるか、信頼できるかなどを判断して、自分でかかりつけ医を選んでください。

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