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良いかかりつけ医を持ちましょう 迷ったときのかかりつけ医⑪/百歳まで元気』福山・尾道・府中・三原』(2024年3月刊行)より

福山市病院事業管理者高倉 範尚

高倉 範尚

たかくら・のりひさ。
1947年京都府京丹後市生まれ。
1973年岡山大学医学部卒業、岡山大学第一外科入局。
庄原赤十字病院、国立福山病院、広島市民病院などを経て、2010年福山市民病院院長就任。
2014年より現職。
全国自治体病院協議会理事。
消化器がんの外科治療が専門(特に肝胆膵外科)

新型コロナウイルスの感染拡大により、かかりつけ医の役割や機能に注目が集まりました。なぜ、かかりつけ医は必要なのか。かかりつけ医を持つことの意味やメリット、100 歳まで元気に生きるための活用法などを、福山市病院事業管理者の高倉範尚氏に伺いました。

診療の道筋をつけるゲートキーパー

かかりつけ医とは、どのような存在を指すのでしょうか。厚生労働省によると、次の3 つをかかりつけ医の定義としています。

1. 健康に関することを何でも相談できる
2. 必要なときは専門の医師・医療機関を紹介してくれる
3. 身近で頼りになる医師

かかりつけ医は、日常生活における健康の相談から、傷病による受診や通院まで、私たちの健康をサポートしてくれる頼もしい存在。例えば、夜間にお腹が痛くなったとき、少なくとも電話で状態を聞き、指示を出すことができる人であってほしいと思います。診療時間外であっても患者さんにとって最善の医療が継続されるよう、地域の医師や医療機関と情報を共有し、お互いに協力して対応するのが、かかりつけ医の理想ではないでしょうか。

私が子どもだった昭和30 年代頃までは、身近なところにかかりつけ医がいました。風邪や少しの体調変化でも気軽に相談ができ、血圧・糖尿・肝かん臓ぞうなど、いろいろな病気を診ることができる先生です。自宅で開業されている小さなクリニックがほとんどで、患者さんの既往歴(これまでかかった病気の記録)から家族構成まで把握している、地域に根付いた存在でした。

最近は、軽度の病気でも大きな病院を受診する大病院志向の患者さんが増えていますが、これは問題です。最新の医療機器がそろい専門医のいる病院のほうが安心できるからといって、何でもかんでも急性期医療を担う大病院を受診してしまうと、救急医療はパンクしてしまいます。本当に急性期医療を必要とする患者さんのためにも、まずは地域のかかりつけ医を受診して、診断をしてもらうようにしましょう。かかりつけ医は、地域医療の中で、診療の道筋をつける役割を持つゲートキーパー(門番)なのです。

かかりつけ医は“人柄”で選ぶ

かかりつけ医がいない場合は、どのようにして探せばいいでしょうか。まずは、自身の生活圏内で開業している、内科系か外科系の全身を診ることができる先生を受診してみてください。その先生と「顔を知り、顔を知られる関係」をつくって親しくなることが最初のステップです。

選ぶ基準は、適切な病院や医師を紹介してくれる、情報を常にアップデートしているなどいろいろありますが、特に重要なのがドクターの人柄。気兼ねなく、率直に話すことができ、信頼のおける先生を見つけましょう。

私個人としては、総合診療医であることを掲げている先生に診てもらいたいです。総合診療医とは、臓器別の専門医とは異なり、患者さんの症状をさまざまな視点から、多角的に診察を行う医師のこと。地域の病院や診療所で「家庭医」として働く医師と総合病院で「病院総合医」として働く医師がいます。かかりつけ医としてふさわしいのは、前者の医師のことです。診断能力が高く、幅広い視野で診てもらえるのが強みで、地域医療を支える存在として、高い注目を浴びています。まだまだ人数は少ないですが、備後圏域にも数名いらっしゃいます。もちろん、診療所(クリニック)や地域の病院の先生方の中にもかかりつけ医としてふさわしい、人柄が良く信頼できるドクターが多くいらっしゃいますので、ぜひ自分に合ったかかりつけ医を見つけてください。

かかりつけ医に関する制度が続々と成立

2023 年3 月、かかりつけ医機能の強化、外来機能の明確化・連携を目的に、紹介受診重点医療機関の仕組みが導入されました。紹介受診重点医療機関とは、外来受診の際に紹介状が必要となる医療機関のこと。外来医療において、まず地域のかかりつけ医機能を担う医療機関を受診する→必要に応じて紹介を受け、紹介受診重点医療機関を受診する→その後、状態が落ち着いたら逆紹介を受けて地域に戻る、という流れが明確化され、患者さんの流れが円滑になることが期待されています。

また、2023 年5 月には、かかりつけ医機能を法律に規定することを盛り込んだ全世代型社会保障制度関連法が国会で成立。医療機関が自院のかかりつけ医機能を都道府県へ報告する制度が創設されました。休日・夜間の対応、入退院時の支援など、各医療機関の情報を都道府県が公表するようになるため、今後は、かかりつけ医を探しやすい環境が整っていくことでしょう。

定期的な検診で自分の健康状態を把握

かかりつけ医を持つメリットの1 つに、検診の受診率が高くなり、がんなどの疾患が早期に見つかることがあります。日本人の死因の上位を占めるのが、がん、心臓病、脳卒中などの三大疾病。特にがんは、自覚症状がないまま進行する危険性があるため、年に一度は検診を受け、自分の健康状態を正しく把握することが大切です。

国立がん研究センターがん情報サービスの「最新がん統計」によると、日本人が一生のうちにがんと診断される確率は、男性65.5%、女性51.2%(2019 年のデータに基づく)。さらに、がんで死亡する確率は男性26.2%、女性17.7%(2021 年のデータに基づく)となっています。現代では、がんは誰にでも起こる身近な病気です。100 歳まで元気に生きるためには、「がんを防ぐための新12 か条」(〈公財〉がん研究振興財団、2020 年)にあるように、定期的な検診や早期受診を心がけましょう。

実は、広島県のがん検診受診率は全国平均よりも低く、備後圏域(神石高原町を除く)はさらに低いのが現状です。かかりつけ医の先生には、もっと強く検診を進めていただきたいですね。

人生100 年時代、ACP の重要性

私たちの寿命は延び続け、人生100 年時代に手が届こうとしています。2022 年に発表された厚生労働省の調査によると、日本人の平均寿命は男性が81.49 歳、女性が87.60 歳で、健康寿命とはそれぞれ約9 年、約12 年の差があります。これは、支援や介護を必要とするなど、健康上の問題で日常生活に制限のある期間が約10 年もあるということ。

そこで、必要となってくるのが、アドバンス・ケア・プランニング(ACP)です。人生の最終段階で受ける医療やケアについて、患者さん本人と家族などの身近な人、医療・介護従事者が事前に話し合う取り組みで、「人生会議」とも呼ばれています。70 歳になったら、「将来、どのような医療や介護を受けたいのか」「人生の終わりまで、どのように過ごしたいのか」を考えてみましょう。何が幸せかは、人それぞれ。元気なうちに、家族やかかりつけ医に自分の気持ちや考えを伝えておくことが大切なのです。

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