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ブリッジの最新治療 ――長期的に維持できる無理のない設計を

広島大学病院 咬合・義歯診療科安部倉 仁 外来医長・診療准教授

安部倉 仁 外来医長・診療准教授

あべくら・ひとし。
1957年島根県生まれ。
1983年広島大学歯学部卒業。
1993年歯学博士(広島大学)。
2006年広島大学病院診療准教授。
日本補綴歯科学会専門医。
日本補綴歯科学会。
日本歯科理工学会。
日本顎関節学会。
日本顎口腔機能学会。

もし、歯が抜けたときには、どうしたらいいのでしょうか? 「1本くらいなら大丈夫」と放置しておくと、次第に大変なことになってしまい、抜けた隣の歯が傾いてきたり、反対の歯が伸びてきたりすることで、噛み合わせが悪くなることもあります。ここでは、ブリッジ治療を数多く手がけている広島大学病院咬合・義歯診療科の安部倉仁診療准教授に話を伺いました。

歯を失ったときの治療方法を教えてください

歯を失ったときの選択肢としては大きく分けて、①部分入れ歯、②インプラント、③ブリッジの三つがあります。それぞれのメリットとデメリットをよく理解し、信頼できる歯科医と相談して、ご自身に合った治療法を選択することが大切です。もちろん、困っていない場合には、とりあえずそのままにしておくという選択肢もあります。

例えば、部分入れ歯の場合は、メリットとして「ほとんどの欠損に適用可能」「保険適用の治療の場合には比較的安価」「健康な歯を土台として削る必要がほとんどない」などがあげられます。デメリットとしては、「強く噛めない」「装着時に違和感がある」「見た目が悪い」「残った歯に負担がかかりやすい」などです。

インプラントでは、メリットとして「強く噛める」「見た目が良い」「健康な歯を土台として削る必要がない」「欠損部の骨量が十分あれば、失った歯の本数や部位に関係なく治療可能」などがあります。その一方、「治療期間が長くかかる」「外科手術が必要」「量が不十分であれば、骨を増やす手術が必要」「治療費が高額」「全身状態によっては選択できない場合がある」などのデメリットが考えられます。

そんな中、抜けた両側の歯がしっかりしていて、その間の欠損歯が1本か2本の場合には、ブリッジによる治療も選択肢となってきます。メリットは、「治療期間が短い」「見た目が良い」などですが、デメリットとしては「歯を削ること」が大きいです。補足を含めて下図をご参考にしてください。

ブリッジ治療とは何ですか?

ブリッジ治療とは、何らかの理由で欠損した部分を、両隣の歯を削って土台を作り、橋渡しをするように人工の歯を入れて欠損部分を補う治療です。

ブリッジの長所は、取り外しをしないため違和感が少なく、治療自体は比較的シンプルなことです。一方で短所は、両隣の削る歯に以前より噛む力の負担がかかることです。ですので、失った歯の本数や両側に支える歯がない場合など、部位によっては選択できないこともあります。ブリッジ治療の成功のカギは、設計とそれを支持する両隣の歯の診断にかかっており、長期間にわたって維持できるブリッジの設計が重要になります。支えとなる歯の状態や噛み合わせなどを考え、力学的に無理のないブリッジを設計することが重要です。ですので、設計に無理がなければ、長期的に維持できる安定性の高い治療方法といえます。

一方、負担がかかりすぎると、ブリッジをかける歯が悪くなってしまいます。一般的に、両側の歯がすでにむし歯になっている場合は、削ることに抵抗感があまりありませんが、きれいな歯の場合には、接着ブリッジというあまり削らなくてもよい方法を選択します。歯根の状態によっては、ブリッジをかける歯が長持ちするように、歯根の治療(死んだ神経の処置)や、その後に土台を入れ歯根を補強する処置を行います。さらに、歯周病治療をしっかりしてからブリッジ治療を始め、仮のブリッジを装着して、審美性や装着感、清掃性、発音などを確認しながら治療を進めることになります。

治療での注意点にはどのようなものがありますか?

例えば、2本が欠損した4本ブリッジでは、4本分の力を両隣の2本の歯で支えることになります。ブリッジが長くなればなるほど、支台となる歯には負担がかかり、ブリッジの離脱や歯根の破折、支えとなる歯のぐらつきなどの症状を起こしやすくなるので、注意する必要があります。特に、支えとなる歯が両側になく、片方だけにしかない延長ブリッジの場合には負担が大きくなります。例えば、奥の第二大臼歯がなくなり、その前の第一大臼歯と第二小臼歯が残った場合、この2本を支えに第二大臼歯に延長してブリッジを被せると、支えとなる歯に大きな力がかかりやすくなります。この場合には、無理な力が働くのを抑えるために、第二大臼歯を少し小さなものにします(下図)。この場合も、注意しないとブリッジの離脱や歯根の破折、支えとなる歯の揺れが起きやすくなります。

ブリッジは固定性ですので、もともと歯ブラシなどでの清掃が難しいのですが、支台となる歯が傾斜しているブリッジは、清掃がさらに難しく、むし歯になりやすかったり、支えの歯が揺れてきたりしやすいです。また、欠損した部位の歯ぐきがやせている場合、ブラッシングが困難で食べかすや歯垢が残り、口臭の原因になることもあります。

ブリッジにおける保険診療のルールは?

連続した2本が欠損した場合でも保険診療になる場合もありますが、基本的には、支台となる歯の負担能力が歯の欠損に対して十分で安全性のある場合に、保険適用となります。これ以外は自費診療で可能なこともありますが、残った支台となる歯への負担はあるので、一概にお勧めはできません。残った歯の寿命を短くするのでは意味がありません。

ブリッジの最新治療について教えてください

最新の治療として、「高強度コンポジットレジンブリッジ」(高強度硬質レジンブリッジ)というものがあります。金属代替材料として、グラスファイバーで補強された高強度のコンポジットレジン(樹脂製の白い修復用素材)を用いた3ユニットブリッジ治療です。これは、2012年11月に先進医療として承認されました。その後、2018年4月に「高強度硬質レジンブリッジ」が保険適用になりました。これは、臼歯部の大きな咬合力に耐えられる高強度のコンポジットレジンとグラスファイバーを用いることで、歯科用金属を使用せずにブリッジを作るものです。咬合による応力のかかるブリッジ連結部にグラスファイバーを用いることにより、さらにブリッジ強化が図られます。

従来の歯科治療では、臼歯部(奥歯)のうち1本が欠損した場合、欠損した臼歯の両隣の臼歯を支えの歯として、歯科用金属を用いた3歯にかかるブリッジ(1歯欠損の3ユニットブリッジ)を作ります。レアメタルを含む金銀パラジウム合金の代わりにグラスファイバーを用いることで、金属アレルギーを持つ患者さんもブリッジの適用が可能となります。レジンは天然歯に似た硬度であるため、咬合の際に対合する天然歯を摩耗させにくい利点もあります。白くて透明感もあり、見た目に美しいのも特長です。ただし、全ての歯に使うことができませんし、金属ほど強度がないためブリッジの噛み合わせの部分の厚みが必要で、その厚さを確保するために歯をたくさん削る必要があるため、多くは支えの歯に神経がない場合が選択肢になります。

さらに、高強度硬質レジンブリッジに対する保険適用では、「上下顎両側全ての第二大臼歯が残存し、左右の咬合支持が確保されている患者に対し、過度な咬合圧が加わらない場合などに、第二小臼歯の欠損に対して、第一小臼歯および第一大臼歯を支台歯とするブリッジに使用する」という厳しい条件があります。すなわち、「前から7番目の歯が全て残っている場合に、前から5番目の歯をブリッジにできる」ということです。

ジルコニアという材料もあるそうですが、どのような特徴があるのでしょうか?

自費診療になりますが、歯に近い色で、長く使用していても歯ぐきが黒っぽくならない、より自然な材質で作ったのがジルコニア応用のクラウン・ブリッジです。金属と同じような強さがあり、土台の歯が丈夫なら、長期間で使うことができます。美しさを重視する前歯と、噛むときに力がかかる奥歯では、少しブリッジの方法が異なります。前歯では、ジルコニアのフレームの表面に陶材を焼付け、よりきれいに透明感と自然感のある歯を作ることができます。ただし、歯ぎしりなどで表面の陶材が欠けることはあります。一方、奥歯は丈夫な材質であるジルコニアを全面的に使うジルコニアフルブリッジがお勧めです(写真)。

安心できるブリッジ治療や歯科医を選ぶ際のポイントとは?

現在は、ブリッジに関する選択肢がさまざまに広がっています。保険診療か自費診療か、ジルコニアのような新しい治療を取り入れるかどうか、金属アレルギーの患者さんに適した治療を取り入れるかなど、歯科医と十分に相談しながら、自身が満足する方法に決めることが大切です。そのための説明を十分にしてくれるかかりつけ歯科医を選ぶことが重要だと思います。

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