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審美歯科治療の最新動向 ――ホワイトニングとクラウン

広島大学病院 咬合・義歯診療科安部倉 仁 外来医長・診療准教授

安部倉 仁 外来医長・診療准教授

あべくら・ひとし。
1957年島根県生まれ。
1983年広島大学歯学部卒業。
1993年歯学博士(広島大学)。
2006年広島大学病院診療准教授。
日本補綴歯科学会専門医。
日本補綴歯科学会。
日本歯科理工学会。
日本顎関節学会。
日本顎口腔機能学会。

広島大学病院 歯科保存診療科西藤 法子 助教

西藤 法子 助教

さいとう・のりこ。
1984年広島県生まれ。
2009年九州歯科大学卒業。
2014年同大学院博士課程修了、九州歯科大学口腔保存治療学分野助教。
2018年広島大学病院歯科保存診療科助教。
日本歯科保存学会歯科保存治療専門医。

審美歯科治療の際に効果的なのが、歯を漂泊するホワイトニングや、削った歯の上に人工の歯を被せるクラウン(冠)です。見た目を重視する方が増えている時代背景の中、近くの歯科医院で審美歯科治療を行ったものの、「期待していたほどの白さにならなかった」「思ったような見た目にならなかった」などの不満や注文も少なからず聞かれます。ここでは、審美歯科治療の内容や治療を受ける際の注意点などについて、広島大学病院の安部倉仁診療准教授と西藤法子助教にお話を伺いました。

審美歯科治療の役割を教えてください

審美歯科治療には、口元の見た目をきれいにすることで、患者さんのストレスを改善する役割があります。治療には、本来の自然な歯の形や色、歯並びにするための治療全般を指し、歯の色を白くするホワイトニング、歯ぐきをピンク色に改善する治療、歯並びを整える矯正治療などがあります。希望する歯に治療が必要なむし歯などの疾患があった場合には、まずはその治療を行う必要があるため、歯の状態によって必要な治療が異なり、場合によっては審美治療が後回しになることもあります。

審美歯科治療は、「ホワイトニング」(歯自体の色を漂白によって白くする)と「ラミネートべニア、クラウン」(変色した歯の表面を部分的に削り、歯科材料で本来の色を覆うことで歯を白く見せる)の、大きく二つに分けられます。治療法は歯の状態によって決まるため、直接その歯や口の中全体の状態を確認してもらい、色が変わった原因を知ることが必要です。まずは、気になるところを直接見てもらいましょう。

歯にはどうして色が付くのでしょうか?

歯の色が変わる原因には、外因性と内因性のものがあります。

外因性では、たばこやコーヒー・紅茶・ワイン・カレーなどの着色しやすい飲食物を習慣的に摂取することで、歯の表面に色素が付着します。むし歯による変色や、磨き残した歯垢や歯科治療の際に詰めた金属なども、歯の変色を引き起こすことがあります。それに対して内因性では、薬物や加齢、歯の死んだ神経による変色があげられます。歯の表面はエナメル質という硬く白い部分があり、その下に象牙質と呼ばれる部分があります。外因性の原因では、表面のエナメル質に着色することで変色しますが、内因性では内側の象牙質自体の色が変化しています。妊娠中や乳幼児期の歯が形成する時期に、テトラサイクリン系の抗生物質を服用すると、歯の変色が起こり褐色や青色の筋が出てくることがあります。また、フッ素の過剰摂取が原因となる場合や遺伝による変色もあります。

ホワイトニングの治療法について教えてください

ホワイトニングは専門的には「ブリーチング」と呼ばれ、失活歯(神経のない歯)の漂白と生活歯(神経のある歯)を漂白する場合に分かれます。

失活歯のみに対する方法として、「ウォーキングブリーチ」があります。歯の裏に穴を開け、もともと神経の入っていた歯の内側の空洞(歯髄腔)に漂白剤を入れて、中から漂白します。変色している象牙質を直接漂白できるため、表面から行う漂白より効果が高いのが特徴です。治療は歯科医院で行っており、薬剤によって異なりますが、希望の白さになるまで数回を目安に間隔を開けながら薬剤を交換します。

生活歯の場合は、自宅で行う「ホームブリーチング」と歯科医院で行う「オフィスブリーチング」があります。どちらもエナメル質の表面に漂白剤を塗りますが、薬が浸透しやすいように歯の表面をクリーニングして、汚れを取り除いた後に治療を始めます。ホームブリーチングでは、薬剤とそれぞれの歯並びに合うよう作る、カスタムトレーと呼ばれる専用の器具を使います。歯科医の指導を受けながら、基本的には一日2時間以上を目安にカスタムトレーを使って、自分で漂白します。治療期間に決まりはなく、薬剤の追加をすれば希望するまで行うことができます。自宅で患者さん自身が実施するため、漂白効果が弱いものを使用します。毎日、少しずつ白くなるため漂白効果が分かりにくいですが、より自然な白さが出るともいわれています。一方、オフィスブリーチングは、歯科医院の診療台で自宅では使用できない漂白効果の高い薬剤を使用します。器具で口を開け、舌が歯に当たらないような状態にして、歯の表面のみに薬を塗り、治療後にはしっかり薬剤を取り除きます。

費用は歯科医院によって異なりますが、自費診療(保険適用外)になります。1本単位で治療する場合とまとめて治療する場合で値段が異なりますが、ウォーキングブリーチは、原則1本ずつの治療になることが多いと思われます。

ホワイトニングの副作用にはどんなものがありますか?

ホワイトニングを行うと、個人差はありますが生活歯に知覚過敏の症状が出ることがあります。一方、ウォーキングブリーチは失活歯に対して行うため、知覚過敏は起きません。もし症状が出た場合は、知覚過敏用の歯ブラシを使うことで症状が軽減されることがあります。その他、歯の表面が脆くなって不透明な白色になることもあります。副作用ではありませんが、漂白についてはどの方法でも、時間が経てば自然に元の色に戻っていきます。

ホワイトニングができない場合について教えてください

ホワイトニングを希望しても、全員が可能なわけではありません。歯が完成していない15歳未満の子ども、極度の知覚過敏の症状がある歯や表面がすり減っている歯、テトラサイクリン系の抗生物質の影響で縞模様がある重度の状態の歯、歯の形成不全でエナメル質がない方や妊婦さんなどさまざまです。変色具合が少ない場合、審美治療をしてもホワイトニングの効果が分かりにくいこともあります。また、ホワイトニングに過度の期待を持っている場合、治療後の歯の状態と自身が思い描いていた白さとの間にギャップが生じると不満を持つことになるため、あまりお勧めできません。

クラウンを使うのはどのような場合でしょうか?

ホワイトニングで白くならない場合、前歯では歯の表側だけ削ってセラミックかレジン(プラスチック)を接着材で張り付ける、「ラミネートベニア」という方法があります。また、極端に歯が不揃いだったり、隙間が見られたり、黄ばんだりしている場合、歯を全体的に削ってその上にすっぽりとクラウン(冠)を被せる方法もあります。歯を削るため、そのデメリットを考慮することが必要です。

審美的なクラウンにはどのような種類がありますか?

被せるものにはさまざまな形態がありますが、種類と特徴は次の通りです。それぞれ一長一短があるため、適切に使い分けることが大切です。

①メタルボンド(セラミックと金属)/従来からある方法で、フレームに金属を使って補強し、表面は陶材(材料の総称)を焼き付ける。

②レジン(プラスチック)/金属を使用しないため金属アレルギーが起こる可能性がないが、着色しやすく、割れやすい。

③オールセラミック/汚れが付きにくく、変色しにくい。全てが陶材でできているので、歯と同じように透明感があり美しく、金属アレルギーの心配もないが、薄いと壊れやすい。

④ハイブリッドレジン/セラミックとレジンを混ぜ合わせた材料で作られている。レジンより頑丈だが、セラミックより着色しやすい。最近のレジンは、このタイプの物が多くなっている。

⑤ジルコニア/割れにくく丈夫で、歯の色に似て見た目も良い。透明感は少ないが、最近は透明感があるものが開発されている。硬いため、周囲の歯や噛み合う歯を痛める場合がある。ジルコニアフレームに陶材を焼きつけたもの(上写真)と、フルジルコニアのタイプがある。

CAD/CAM冠とは何ですか?

保険適用で入れることのできる白い歯に、CAD/CAM(キャドカム)冠があります。コンピューターで歯の形をデザインし、加工機械でハイブリッドレジンのブロック材を削り出して作製する被せ物です。ハイブリットレジンは、レジン(プラスチック)にセラミックを合わせ、それぞれの良い部分を生かして強度を大幅に改善した素材です。銀歯に比べて目立たなく、白い自然な被せ物を製作できます。

現在では、CAD/CAM冠が大臼歯に保険適用されるようになっています(右写真)。当病院では2009年5月に、「歯科用CAD/CAMシステムを用いたハイブリッドレジンによる歯冠補綴」が先進医療の承認を受けました。その後、2014年4月から小臼歯だけが保険適用に認められ、2016年4月に金属アレルギー患者に限定して大臼歯にも適用されました。さらに、2017年12月からは一般の大臼歯にも認められました(※ただし、下顎の第一大臼歯に限定され、第二大臼歯がないと適用除外)。CAD/CAM冠は、金属に比べると強度は劣りますが、丈夫なプラスチックですので臨床上の強度に問題はなく、白くて透明感もあります。

安心できる審美歯科医の見分け方を教えてください

基本的には、副作用などのデメリットも含めてきちんと説明してくれる歯科医を選ぶことが大切です。疑問があれば積極的に質問し、それに答えてくれる歯科医だと安心です。患者さんの希望している色と、歯科医が美しいと考える色には差があることがあります。また、毎日歯を見ていると、色は白くなっているにも関わらず変化が感じられにくいことがあります。ホワイトニングに関しては、専用機器で歯の色を測って数値化することで、効果を確認できることもあります。このような機械を使わなくても、治療前後で歯の写真を撮影したり、歯の色見本を用いて色の変化を確認したりすることで、どの程度のホワイトニング効果があるか分かりやすくなります。患者さんの希望するイメージをしっかり理解し、同じ理想が描ける歯科医だと審美治療は成功しやすいです。

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