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「スポーツ障害を予防するにはしなやかに連動する体づくりが重要」――スポーツ障害の予防

県立広島病院 リハビリテーション科 主任部長中西 徹

中西 徹

なかにし・とおる。
1991年島根医科大学(現島根大学医学部)卒。
島根大学病院、千代田中央病院、国立浜田病院などを経て、はたのリハビリ整形外科、広島大学病院リハビリテーション部に勤務。
2010年から県立広島病院。
リハビリテーション科主任部長、日本整形外科学会認定整形外科専門医、日本リハビリテーション医学会認定リハビリテーション専門医。

スポーツで自分の大切な体を傷つけないためには、体の一部分だけに負担をかけることがないよう、しなやかに連動する体をつくることが重要です。県立広島病院のリハビリテーション科主任部長の中西徹先生に具体的なトレーニング方法を聞きました。

「スポーツ障害とは」

自分の体力や運動能力を知ることが重要

スポーツ障害とは、打撲や捻挫、骨折などの運動中のけがのほか、疲労による関節の変形や疲労骨折など多岐にわたります。急性の障害と慢性の障害がありますが、慢性の場合は、俗にオーバーユースといわれる使い過ぎによる障害です。運動によって疲れた体の組織が十分に癒されなかったり、同じ部位を使い続けたりして起こることがあります。

障害を防ぐには、運動を始める前に自分の体力や運動能力を知ることが大切です。日々の運動前に準備運動(アップ)を行い、その日の体の調子を知るように努め、運動をした後に整理体操(クールダウン)を行い、運動で使った部位の疲労回復を促すことが重要になります。

「スポーツトレーニングの流れ」

スポーツ障害予防のトレーニング

しなやかに連動する体づくりのためには、①体幹を含めたインナーマッスルの強化、②柔軟性の向上(特に股関節や肩関節、体幹)、③バランス感覚や関節位置覚の意識、が大切になります。

それでは、スポーツ障害を防ぐための具体的な運動を紹介しましょう(写真(1)〜(11)参照)。

トレーニングは(1)から順番に実施することをお勧めします。これまでにも実施しているトレーニングやストレッチもあると思いますので、普段行っているトレーニングの終わりに追加するのもいいと思います。

(1)のサイドブリッジから(5)のプランクまでが体幹トレーニングになります。(5)のプランクは、前の伸ばした手と反対の足を後ろに伸ばすバージョンです。姿勢を保持する時間は10秒間程度から始めて、徐々に延長するのが適当だと思います。呼吸を止めないようにしてください。

サイドブリッジの基本は(1)ですが、(2)の股関節内転筋を強化する方法もあります。(3)のバックブリッジも(4)のように片足を上げることで、負荷を高めることができます。

体幹トレーニング(1)~(5)

手足と体幹の連動を意識したストレッチ(6)~(11)

体幹と下肢の連動を確認する運動として、(6)のスクワットもお勧めしたいです。連続して5、6回、少し疲れる程度のゆっくりした速度で、上下運動を繰り返す「スロートレーニング」によって、筋肉の遠心性収縮を引き出して、筋トレの効果を高め、体幹と下肢が連動して運動を制御している感覚を養います。柔らかいクッションなどを敷いて不安定な面で行うと、さらに筋トレやバランス感覚を鍛えられます。

(6)のスクワット以降の運動は、起立位で行う手足と体幹の連動を意識したストレッチです。トレーニングの最後にクールダウンとして実施する場合は、静的ストレッチとしてポーズをなるべく深めて10秒間程度保持してください。

運動前のアップとして(8)~(11)のストレッチを実施する場合は、ポーズを深めず左右交互にリズミカルに行う「動的ストレッチ」として実施すると、スポーツ障害の予防効果が期待できます。このように同じ体の部位のストレッチでも動的(ダイナミック)と静的(スタティック)を運動前と運動後で使い分けることが重要です。

一般的にダイナミックストレッチは、体幹や肩甲帯および股関節などの比較的大きな関節を動かしながら筋温を高めるとともに、筋肉が協調して動くのを促し、柔軟性が高まることで、けがの予防につながるといわれています。また、スタティックストレッチは反動や弾みをつけず、息を吐くタイミングで筋肉を徐々に伸ばし、痛みを感じる手前で保持します。筋肉をゆっくり引き伸ばすことで筋肉の疲労回復を促し、筋肉痛の緩和に役立つといわれています。

紹介したストレッチは立ったままで行いますので、バランス調整力や集中力を高める効果も期待できます。

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