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「乳腺診療」座談会/乳腺専門医が考える、良いかかりつけ医へのかかり方

【司会・進行】広島大学病院 乳腺外科 診療講師舛本 法生

舛本 法生

ますもと・のりお。
1998 年藤田医科大学医学部卒。
広島大学病院腫瘍外科・乳腺外科、亀田総合病院乳腺科を経て、2011 年広島大学病院腫瘍外科・乳腺外科助教。
2017 年より現職。医学博士。
日本乳癌学会認定乳腺専門医、日本外科学会認定外科専門医など。

かわの医院 院長川野 亮

川野 亮

かわの・りょう。
1981 年川崎医科大学卒。
川崎医科大学内分泌外科(現乳腺甲状腺外科)、広島赤十字・原爆病院外科、医療法人錦病院(山口県岩国市)副院長を経て、1995 年より現職。
医学博士。
日本乳癌学会認定乳腺専門医、日本外科学会認定外科専門医など。

香川乳腺クリニック 院長香川 直樹

香川 直樹

かがわ・なおき。
1986 年広島大学医学部卒、同大第二外科入局。
1997 年から県立広島病院乳腺外科。
2008 年、同院一般外科部長を辞して、開院。
医学博士。
日本乳癌学会認定乳腺専門医、日本外科学会認定外科専門医など。

ひろしま駅前乳腺クリニック 院長長野 晃子

長野 晃子

ながの・あきこ。
2001 年広島大学医学部卒、同大第一外科入局。
2004 年呉医療センター・中国がんセンター外科、2010 年呉共済病院外科などを経て、2013 年より現職。
医学博士。
日本乳癌学会認定乳腺専門医、日本外科学会認定外科専門医など。

こころ・やのファミリークリニック 院長矢野 健太郎

矢野 健太郎

やの・けんたろう。
2003 年徳島大学医学部卒、千葉大学医学部第一外科、千葉県がんセンター乳腺外科、栃木県立がんセンター乳腺外科などを経て、2018 年開院。
日本乳癌学会認定乳腺専門医、日本外科学会認定外科専門医など。

秋本クリニック 院長秋本 悦志

矢秋本 悦志

あきもと・えつし。
2004 年久留米大学医学部卒。
県立広島病院、広島大学病院乳腺外科で乳がん診療。
2013 年より現職。
県立広島病院消化器乳腺外科非常勤。
日本乳癌学会認定乳腺専門医、日本外科学会認定外科専門医など。

日本は、欧米に比べて乳がんにかかる人が比較的少なかったが、年々増加している。乳がん検診で引っかかったけど、どこに行けばいいの? 乳房にしこりがあるけど、どうしたらいいの? そんな声をよく聞く。広島の乳腺専門医に集まっていただき、「乳がんの良い検診、良いクリニック」をテーマに話し合っていただいた。司会は広島大学病院乳腺外科の舛本法生診療講師。

乳腺外科をめぐる状況

舛本:広島で乳腺診療を専門とする先生方にお集まりいただきました。先生方が医師となられた当時の乳がんをめぐる状況はいかがでしたでしょうか? まずは乳腺外科医をめざした経緯からお話しいただけますか。

川野:僕は1981年に川崎医科大学を卒業しました。その当時、川崎医大で乳がんの手術は50例前後で、一般外科の中ではマイナーな科でした。薬物療法はホルモン療法が始まったばかりで、術後補助療法は内服薬のみでした。診断は視触診と現在とは比較にならないほど低い性能の超音波診断装置、マンモグラフィ専用の装置はまだなく、一般のX線撮影装置を工夫して使っていたような時代でした。ホルモン療法は副作用も少なく患者さんによってはよく効き、当時、ほかのがん腫にはない治療法で、乳がんという病気に興味を持つようになりました。

香川:僕は川野先生の5年下で、1986年卒業です。当時は、乳がんの手術は全摘手術だけで、胸筋もとる手術が主流でした。外科手術の中では、比較的難易度が低い手術でしたので、卒後2、3年の医師が担当することが多く、そのまま外来で術後治療やフォローアップすることも多かった病気です。しかし、がんの治療も進歩し後遺症対策や治療の副作用対策など、専門性が必要になってきたことを、県立広島病院勤務の際に痛感しましたので、乳がんの専門医になろうと決めました。

秋本:僕は2004年卒で、初めは外科医をめざしていました。開業医の父親が倒れて帰ることになり、もし自分が30年、40年、地域で働くことになったとき、最後まで診れるような医者になりたいと思い、乳がん診療に進みました。

矢野:2003年に外科医のキャリアをスタートしました。乳腺は40歳代ぐらいの若い患者さんが多く、子どもが小さくて頑張っている、そこを支えていけたらと思いました。術前診断から治療、手術、化学療法、緩和療法と一通り全部できるところにも惹かれました。

長野:私は、外科系の手術がある科に入局したくて、当時は臓器別診療科の体制ではなかったため、与えられた症例の手術を経験させてもらう中で乳がんの患者さんと向き合い、また、知り合いから乳がんについて聞かれることも多く、そこは女性医師の需要があるかなと思いました。家庭と仕事の両立を考えたときに、乳腺外科は比較的時間を区切って働きやすいというのもありました。

乳がんになりやすい人の特徴を知ろう

舛本:乳がんになりやすい人の特徴はありますか?

川野:一般的には肥満、アルコール、たばこ。生活習慣病とよく重なっているような気がしますね。あとは妊娠、出産、授乳。そのあたりが重要なファクターじゃないでしょうか。

舛本:数十年前と比べて、乳がんは明らかに増えていますか。

川野:私が開業しているのは人口2万5千人程度の竹原市ですが、1995年に開業した当時と比較して年間に10〜20倍の乳がんの方を診断しています。これは驚きです。

舛本:女性の乳がんの生涯罹患率は、以前と比べどうでしょうか?

香川:僕が開業したのが12年前で、そのときは23人に1人といわれていました。今は11人に1人です。倍ですね。

舛本:乳がんの原因として、遺伝も関係あるのでしょうか?

香川:乳がんの原因には、遺伝因子と環境因子があります。環境因子の主なものは女性ホルモンで、女性ホルモンが高い時期が長いとなりやすい。初潮が早くて閉経が遅い、妊娠・出産が遅くて少ない、授乳の時期が少ない、ホルモン補充療法を長くしているなどが関係するのは明らかです。それから閉経後の肥満。脂肪の中で女性ホルモンが増えていくというデータもあります。

舛本:乳がんの患者さんで、どのくらいの方に遺伝が関係しているのでしょうか?

香川:遺伝が関係するのは、7~10%ぐらいですね。

舛本:乳がんの遺伝因子で一番有名なのがBRCA遺伝子で、そこに変異があると、乳がんや卵巣がんになりやすいことが分かっています。どんな方にBRCA遺伝子の検査をお勧めしますか。

秋本:ご家族、血縁の中で、若年発生した乳がんの方や卵巣がんの方がいる。男性であれば前立腺がん、膵がん。そういった方が多い家系には遺伝性のリスクがあるかもしれません。外来の検診の中で、そういったものを拾い上げるという地域の検診として力を入れています。

舛本:乳がんのリスクを下げるためには、どうすればいいでしょうか。

矢野:運動をする、たばこを吸わない、肥満に気をつけるなど、生活習慣病の予防が大事です。糖尿病や喫煙、アルコールなどの生活習慣は、ほかのがんもですが、非常に大きな要素になりますね。

秋本:体重のコントロール、適度な運動、禁煙、酒は1杯までにすれば、リスクは26%下がるといわれます。

舛本:広島大学病院では、恵美先生を中心に女医の先生が中学校や高校に行って、乳がんの啓発的なお話をしています。

長野:良い試みですね。外来に来られる患者さんで、乳房に関する知識がない方が比較的多いので、知識を一般的に広める活動の重要性を痛感しています。

どうしたら検診に行ってもらえる?

舛本:日本の乳がん検診の受診率はどのくらいですか?

長野:統計では4割。少しずつ上がっているといわれていますけど。

舛本:どうして検診を受けないのでしょうか?

長野:私は大丈夫と思っている人が多い。マンモグラフィは痛いというイメージも先行しています。私も何度も受けていますけど、そんなに驚くほど痛くはないですよ。また、実際は怖い病気ではないのに、がんと診断されるのが怖いと言われる方も結構多いです。

舛本:乳がんの治療成績はどんどん良くなっています。早く見つかれば治る可能性が高い病気ですね。

矢野:10年生存率はステージ1で9割前後、ステージ2で8割前後です。早く見つければ生存率が上がると考えられます。

川野:欧米の検診率が高いのは、保険制度が違って、検診を受ければメリットがあるから。罹患率がすごく高いことが周知されているのもあるのかな。実は最近、竹原市では負担金がゼロになったのですが、なぜか検診は増えません。以前、日本乳癌検診学会では、「仕事帰りの夜間に検診ができるようにしましょう」との発表もありました。

秋本:海田町の検診率は、県内でもかなり上の方です。行政が周知の工夫をしたり、友達の影響や補助が出るのも大きいと思います。

舛本:企業が検診のための「検診休暇」のようなものを考えていただくと、行きやすいですね。

川野:病気になると治療にお金がかかり、特に、進行した状態になると企業の負担は大きくなります。企業には職域検診の担当者がおられます。早期発見のためにも、担当の方が積極的にかかわってくだされば、職業を持っている方の受診率が上がるのではと思います。

乳がん検診について

舛本:乳がん検診は、何歳ぐらいから始めればよいですか?

香川:国が勧めているのは40歳からです。実際には30歳代から増えるので、30歳代から始めた方がいいですね。あとは、遺伝の要因。親がなっていれば確率が2倍増え、親ときょうだいがなっていれば3.6倍増えます。患者さんの娘さんには、早めにと勧めています。

舛本:検診に行くと、主に何をするのでしょうか。

香川:以前は触診もあったのですが、今、国が勧めているのはマンモグラフィだけです。マンモグラフィの問題点は、放射線被曝と偽陰性、つまり、本当はあるのに見つからないということもあり、その辺を解決する必要があります。1回の被曝は、ニューヨーク~東京間を飛行機で行く程度ですが、30歳の方が毎年ずっとマンモグラフィ検査を続けると2次がんの発生率が高くなり、デメリットが多くなります。

舛本:マンモグラフィが向いていない方もおられますか?

香川:乳腺は白く写り、しこりや石灰化も白く写るので、乳腺の密度が濃い高濃度乳腺(デンスブレスト)だと、がんが発見しにくい。マンモグラフィ検診では、乳がんを20~30%見逃し、高濃度だと50%見逃すというデータもあり、高濃度の人には超音波検査(エコー)の併用をお勧めします。

舛本:マンモグラフィが撮れない方もいらっしゃいますか?

香川:豊胸術や心臓ペースメーカーが入っている人、また、皮膚疾患があって挟むとその皮膚の状態が悪くなる人はできない場合もあります。

舛本:超音波検査の特徴はありますか? また、超音波検査を受けられない方はいらっしゃいますか?

秋本:豊胸や人工物が入っていても、超音波は問題ないです。超音波のデメリットとしては、石灰化を見つけにくいこと。被曝も痛みもなく、非常に安心な検査ですが、国の補助がないのも問題です。でも、デンスブレストの方は、ぜひ超音波を受けるべきだと思います。

舛本:乳がん検診で要精密検査になっても、広島ですと、精密検査に行かない方が2割以上おられます。精密検査を受診していただくために、どのようにすればよいでしょうか?

矢野:命にかかわってくることですので、家族のこと、自分のことを考えて、もっと啓発活動が必要だと思います。

川野:乳がん検診のシステムとして、検診をいかに管理していくか。市町村の自治体検診でも、企業の検診でも、やりっぱなしではなく、フィードバックをかけて受診勧奨をすることが必要だと思います。また、検診で大事なのは精度管理です。せっかくなら精密検査も含めて、しっかり精度管理のできた施設で受けていただきたいと思います。

セルフチェックについて

舛本:自分で触診する際の注意点がありますか?

長野:自覚として一番多いのは、しこりです。それに気づくためには、普段から乳房をチェックして変わったことがないか、以前なかった硬いものがないか。そういうのが一番ですね。うちでとった統計では、自覚症状はしこり、次が乳頭からの分泌物でした。

舛本:自分で触診するのにいい時期がありますか? 閉経前と後で違いますか?

長野:閉経前の方は、乳房の状態が落ち着いた生理開始10日目頃がいいですね。生理前などは胸が張ってきますので、そういう時期は避けた方がいいです。予約したときにはしこりがあったけど、生理が終わったらなくなったという方がよくいらっしゃいます。閉経後の方は忘れないように月1回、日にちを決めるよう、お勧めしています。

川野:普段の自分の乳房の状態をよく知っておいて、毎月気になったことを書いて、それを比較していくことが大事です。変わったことがあれば、ひょっとしたら異常かなと考えてください。

舛本:乳房の痛みで外来に来られる方もいらっしゃると思います。痛みは乳がんの心配なサインでしょうか?

長野:基本的に痛みは大丈夫です。痛くてしこりもあれば可能性がありますが、しこりがなくて痛いだけのときは、ほぼ大丈夫です。

舛本:精密検査の施設を選ぶポイントは何かありますか?

川野:広島県の乳がん医療ネットワークに登録している施設は、大きな間違いはないです。あと、日本乳癌学会のホームページに、認定専門医や認定施設が掲載されています。これらは参考にできると思います。

秋本:「ひろしまピンクリボンプロジェクト※」で作ったパンフレットには、県内の精密検査ができる施設のリストを載せています。ホームページでも見られます。

矢野:やはり乳腺専門医を選べば、より確実かなと思います。

舛本:乳がんの治療には、手術、放射線、抗がん剤治療があります。手術は入院が1週間前後、再建手術をしても10日くらいで退院です。そのあと乳がんのタイプやリスクに応じて、抗がん剤治療が3か月から半年。放射線治療は3週間から5週間。ホルモン治療が5年から10年あります。手術、抗がん剤、放射線治療が終わった時点で、多くの基幹施設では、乳腺専門医をはじめとした先生方にフォローアップをお願いすることが多いです。かかりつけ医の手厚い診療を受けていただくことで、患者さんの日々の不安が軽減されると考えています。

矢野:地域連携はすごく増えていますね。うちではホルモン治療を継続して行い、マンモグラフィを基本的に年に1回。超音波は被曝もしないので、半年~3か月に1回ということが多いです。

舛本:術後のフォローアップはどのくらいの期間でしょうか?

矢野:薬の処方は3か月が限度なので、ホルモン治療中の方は2、3か月に1度来てもらいます。反対側の乳がんのリスクも高いので、特に反対側の乳房は気をつけて診ています。

川野:3か月に1回ぐらいの乳房視触診は欠かせないかなと思います。リンパ節が腫れてきた場合など、触診は大事。晩期再発という、眠っていたがんがまた活発になってくることもあります。高血圧で診ていて、15年後に再発を発見できた人もいます。

舛本:術後10年で卒業していただくことが多いですが、確かに長い経過の後に、再発される方もまれにおられます。

秋本:再発が10人いるとしたら10年以内の再発が7人、あとの3人はいつ再発するか分からないよという話をして、かかりつけ医として診ていきます。

矢野:緩やかな検診の感じで、おばあちゃんになるまで診ていきます。

舛本:10年以上経過しても、時々診察されているということですね。

香川:ホルモン受容体陽性でハイリスクの方は、半年に1回ぐらい来てもらう場合もあります。それ以外は本人の希望にお任せします。注意が必要なのは、検診だけになると、視触診がない。マンモグラフィだけだと分からないことがあるので、気をつけたいですね。

舛本:ホルモン陽性乳がんは、長い経過の後に再発される方もまれにいらっしゃいます。できれば10年以上経った方も、継続的にフォローしていただいたほうが確実です。

川野:反対側に出る対側乳がんも結構ありますね。10年で約1割ともいわれているようです。

秋本:10年以内に出るのが4分の3。それ以降に出るのが4分の1でしょうか。

舛本:乳がんの既往のある方は、反対側の乳房に乳がんができるリスクが高くなりますので、やはり10年後も定期フォローが安心だと感じます。
腫瘍マーカーの必要性はどうですか。

秋本:勧められてはいないのが現状ですが、患者さんが何を一番信頼しているかというと、実は腫瘍マーカーかもしれません。

舛本:早期乳がんを発見できるマーカーにはなっていませんが、再発したときの治療効果の指標として役立つことはあるかもしれません。

秋本:もちろん腫瘍マーカーで再発が見つかる方も多いので、やる意味はあると思います。

香川:うちのデータでは、腫瘍マーカーで見つかるのが6分の1ぐらいです。局所・視触診が3分の1。3分の1は全身検査。残り6分の1が症状です。

舛本:術後は、視触診とマンモグラフィ、リスクや年齢を考慮して超音波検査、腫瘍マーカーも適宜行っていらっしゃるのですね。

※NPO法人 ひろしまピンクリボンプロジェクト
(https://pinkribbon-h.com/)
乳がん患者への支援・啓発活動などを目的として、2016年設立。女性が健康でいきいきと暮らせるよう、乳がんの早期発見と乳がん患者の生活の質向上をめざして、活動している。

乳がん手術後のフォローアップについて

舛本:手術後の生活の中で、注意する点はありますか。

長野:太らないでください。そのためには運動と食事に気をつけていただく。自分で一番できることといえば、体重管理ですね。

川野:僕は電子カルテに体重を入れています。身長も入れて、骨粗しょう症の変化も分かるようにしていて、患者さんにデータのグラフを見せ、ビジュアルで訴えます。閉経後でホルモン療法をされている方は骨密度が下がることが多いので、必ず調べています。

矢野:うちも、骨粗しょう症の治療を入れる方もいらっしゃいます。

川野:意外と落とし穴がホルモン治療のLH-RHで、すとんと落ちる方がいらっしゃる。化学的閉経になって一気に下がり、40歳代ぐらいで閉経に入ってしまいます。

香川:僕は、早くから術後のリンパ浮腫と関節可動域に注目しています。手がちゃんと上がるかどうかとか、後ろに回るかを診察のときに聞いて、むくみをチェックしていきます。高リスクの人は定期的に測定して、予防をしっかりしてねとお話しします。

舛本:体重管理・骨粗しょう症を重点的にフォローいただいているのですね。生活習慣の観点からも大切です。リンパ浮腫について、患者さん自身で注意していただくことはありますか?

香川:ケガをしないこととスキンケアですね。

川野:意外とあるのが庭いじりで、爪の間に土が入ったままにしているとリスクがある。深爪も良くないですね。

舛本:手術を受けた側の腕や手には、細心の注意を払っていらっしゃるのですね。
ご家族に病気のことをどのように、そしていつ頃ご説明するようにされていますか?

秋本:診断から入るので、告知の状況のときに聞いてほしい人には一緒に来ていただきます。伝言ではなくて、一緒に知識を共有してスタートすることは大事かなと思います。

長野:子どもにどう伝えたらいいかというのはよく聞かれます。私にも小学校高学年の子どもがいます。中学生なら説明すればわかる子が多いのですが、難しいのは小学校中学年ぐらいのお子さんです。がんは怖い病気だと不安がる。わかるお子さんには、ちゃんと治療すれば治る病気だと伝えてあげた方がいいです。うちは、私よりも看護師が患者さんの話を聞いたりして、スタッフのサポートも大きいです。

香川:言いにくいことを、メモ書きにして持って来られるのもいいと思います。

舛本:患者さんが治療に専念できるよう、考えていただいているのですね。
再発をすごく不安に思う方に、不安を軽減していただくために、どのようなことをされていますか?

矢野:話をよく聞いてあげることですね。うちは地域のクリニックで受診しやすいので、コミュニケーションをよくとって、基幹病院で聞けなかったら、うちで追加で解説することもできます。

舛本:患者さんに寄り添った診療をされているのですね。
クリニックで特に考えておられる取り組みはありますか?

川野:勤務医の頃は、進行した乳がんが再発して亡くなる方を、どうやったら減らせるかを常々考えていました。開業した今は何が貢献できるかとなると、早期発見です。治る乳がんを見つけたいと考えています。

秋本:早期発見・早期治療が私たちの一番の思いであり、私たちの仕事だと思います。

川野:予後が良くなったのは、化学療法、標準治療、検診が大きい。当院は地方にあり、患者さんのためになることは可能な範囲でさせていただくということで、化学療法に可能な限り取り組んでいます。

香川:標準治療をしっかりできるということを目標にしているので、うちも化学療法を行っています。不安をできるだけ払しょくできるようにして、「いつでも連絡していいですよ」ということを心がけています。

舛本:これから受診を考えている方にメッセージをお願いします。

長野:乳がんは、早く見つかればほぼ完治しますし、ある程度進行していても有効な治療が多いので、ほかのがんに比べると怖くないということですね。

川野:この話を聞いた時点で行こうと思ったら、すぐ受診してください。

舛本:先生方、本日は大変ありがとうございました。ぜひ広島の乳腺診療を、今後も発展させていくことができればと思います。

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