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いい便を出すためにできること――コロナ下で、より良い排便のために③

呉市医師会病院
大腸肛門病センター副センター長、大腸・肛門外科部長。
藤森正彦(ふじもり まさひこ)

[ プロフィール ]
大腸・肛門外科医。
2006年より呉市医師会病院に勤務し、2018より多職種で排便ケアチーム「POOP」を立ち
上げ、地域で排便についての啓蒙を行っている。
1995年徳島大学医学部卒業。
広島大学病院、JA尾道総合病院、因島医師会病院などを経て呉市医師会病院に勤務中。
日本大腸肛門病学会認定 大腸肛門病専門医・指導医
日本臨床肛門病学会認定 臨床肛門病技能指導医

TEL:0823-22-2321

●いい排便を目指すために

 前回までに「ウンチの本当の姿」、排便習慣の「3のルール」や排便の正しい姿勢(「考える人」)について紹介させていただきました。いい排便を目指すためには、それだけでは足りません。いいウンチが出来るように生活をしていくことが重要です。今回はどうしたらいいウンチが出来るのかについて学んでいきましょう!

●自律神経を整える

 腸の蠕動運動には、自律神経が大きく関わっています。自律神経には「交感神経」と「副交感神経」があります。昼間や活動時には「交感神経」が優位となり蠕動運動は抑えられますが、夜間や安静時には「副交感神経」が優位となり蠕動運動は活発となります。現代の人々は様々なストレス、夜更かしなどで「交感神経」が優位になりやすく、蠕動運動も不安定となりいいウンチが出来ません。だから自律神経のバランスを保つことが大切です。自律神経を整える方法として、以下のことがお勧めです。

<睡眠と呼吸について>
 睡眠時に「副交感神経」は優位となり、腸の蠕動運動が活発となるので、就寝時は消灯しリラックスした状態で寝ることが大事です。朝起きたら日光を浴びましょう。活動と休息のリズムができ、幸せホルモンと呼ばれる「セロトニン」が活性化され、腸の蠕動運動を活発にし、自律神経を整えてくれます。「4-7-8呼吸」(4秒吸って、7秒止めて、8秒かけて吹く)など、ゆっくりとした呼吸法は「副交感神経」が優位になるので試してみましょう。

<ゆっくりお風呂に浸かりましょう>
 熱いと「交感神経」が優位になってしまいますが、36から40℃程度のお湯にゆっくりと浸かることで全身がリラックスできます。睡眠も良好となり「副交感神経」が優位となります。シャワーだけで済まさず、湯に浸かってみませんか?

<首を温めましょう>
 首を温めることで全身の血流がよくなり、冷えや疲れも改善し、「副交感神経」も優位となります。また、お腹や肛門の周りなどを温めることも便通に効果的です。

●いいウンチは食事から

 朝起きて、水を1杯飲むことから始めましょう。夜間失った水分を補給するとともに、胃腸のスイッチが入ります。また、正常の便は約80%が水分です。1日の水分摂取が少ないと便の中の水分が少なくなり硬くなりますので、十分な水分を摂るようにしましょう(目安:1.5-2.0L、コップ6~8杯)。
 食事は1日3回行いましょう。特に朝食後は「大蠕動」が強く起きるので、排便を促すのに重要です。食事量・水分量が少なくなると蠕動も弱くなり、便の量も少なくなり、排便回数が少なくなります。
 食物繊維の量も重要です。摂りすぎると逆に便秘になることがありますが、食物繊維不足が原因のことも多く、まずはしっかり食物繊維を摂りましょう。市販されているサプリメントをうまく使ってもいいと思います。
 乳酸菌などの善玉菌が多く含まれる発酵食品(プロバイオティクス)もいいですよ。さらに善玉菌の餌となる食物繊維やオリゴ糖(プレバイオティクス)も一緒に摂ると効果的です(合わせてシンバイオティクスと言います)。しかし、発酵食品も摂りすぎると逆に腹部膨満感を自覚する人もいる(SIBO:小腸内細菌増殖症)ので、注意しましょう。

●適度な運動をしましょう

 座りっぱなしや運動不足は、排便障害の原因となるだけでなく大腸癌のリスクとなります。1日15分程度、ゆっくりとした呼吸でできる程度の運動や体操を行うようにしましょう。寝たままでもできるものとして、腹式呼吸、足上げ、体をねじる、骨盤を上げるようなストレッチも便通には効果的です(図)。

 

 また1日15分、週5回の腹部マッサージで便秘が改善したという報告もあります。昔より大腸の流れに沿って「の」の字マッサージが行われてきました。お腹には、・天枢(てんすう)・大巨(だいご)といったツボがあり、それを意識してマッサージすると良いでしょう。へその中央には神闕(しんけつ)があり、ホットパックなどで食後に15分間温めてもいいでしょう(図)。

●便秘は寿命を短くさせる!

 排便の障害は日々のQOL(生活の質)を下げるだけでありません。便秘は寿命を短くさせることも分かっています。また様々な疾患から排便が障害され、排便の障害から色々な病気が引き起こされます。食事や生活習慣の改善は「慢性便秘症診療ガイドライン2017」や「便失禁診療ガイドライン2017年版」でも推奨されています。
 ウンチはただ出ればいいものでなく「気持ちよく排便できること」が大事です。安易に薬に頼らず、一人ひとり便通が良くなる習慣を行い、より良いウンチを出しましょう。

前々話 知っていますか、ウンチの事――コロナ下で、より良い排便のために① はこちら

前話 正しいウンチの出し方――コロナ下で、より良い排便のために② はこちら

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