呉市医師会病院
大腸肛門病センター副センター長、大腸・肛門外科部長。
藤森正彦(ふじもり まさひこ)
[ プロフィール ]
大腸・肛門外科医。
2006年より呉市医師会病院に勤務し、2018より多職種で排便ケアチーム「POOP」を立ち
上げ、地域で排便についての啓蒙を行っている。
1995年徳島大学医学部卒業。
広島大学病院、JA尾道総合病院、因島医師会病院などを経て呉市医師会病院に勤務中。
日本大腸肛門病学会認定 大腸肛門病専門医・指導医
日本臨床肛門病学会認定 臨床肛門病技能指導医
TEL:0823-22-2321
●毎日排便がないと便秘?
よく耳にする「毎日、朝決まった時間に排便をしましょう」や「毎日排便がないから便秘気味」という文言、そして、それを忠実に守って毎日頑張って排便する方々も多いです。でも本当にそれは正しいのでしょうか?
前回は「知っていますか、ウンチの事」ということでウンチについて書かせていただきましたが、今回このコラムでは、スムースな排便を目指すため「正しいウンチの出し方」について学んでいただけたらと思います。
●排便習慣の3のルール
排便の回数として、「1日3回~1週間に3回」が目安と言われています。どんな時でも毎日排便がなければいけないわけではないのです。例えば毎日排便があっても、排便に努力が必要な場合は排便障害と言えます。逆に1週間に2回程度の排便であってもスムースで苦痛がなければそれは正しい排便と言えます。
また哺乳動物の排便にかける時間は平均12秒と言われています。人の場合、排便にかかる時間はどのくらいでしょうか?
①衣服の着脱(下着の上げ下げなど)
②排便
③あとしまつ(肛門の洗浄や肛門を拭く行為)
④手洗い
と時間がかかりますが、3分以内にトイレから出ることは可能です。早く出るためには長くいきみ続けず、3秒をめどにいきむようにしましょう。またウォシュレットで長く洗うと、肛門の周りがただれることもあります。できるだけ短時間で洗うことも大事です。
下記の「3のルール」は、それらをまとめたルールです。できる限り守って排便してみてください。
●排便の正しい姿勢とは
前回説明したように排便には腸の蠕動運動、いきみと肛門の弛緩などが必要ですが、それだけではなく、排便をする姿勢も重要です。寝た状態や立った状態での排便は解剖学的にも直腸がまっすぐ縦にならず十分に便が排出できません。幼児の排便姿勢を観察するとわかるように、人は蹲踞(そんきょ)の格好で排便するのが自然です。
蹲踞の姿勢で初めて直腸は直線化され、重力の手助けも得られるのです。本当は和式便器での排便がもっとも蹲踞に近い姿勢ですが、現在では洋式便器が主流となっています。そこで洋式便器に座って前傾姿勢となり、踵を上げることで洋式便器でも蹲踞に近い姿勢となります。オーギュスト・ロダン作の「考える人」の姿勢が参考になります。
加齢や病気などにより筋力や持久力が低下すると、姿勢を保持することが難しくなります。そんな場合には横の手すりや背もたれ、前方への支持具の設置、踵を上げる代わりに足台を置くことが補助となり理想の姿勢に近づきます。
●排便は、人それぞれ違う
普段、何気なく行っている排便という行為は生きている限りずっと行っていく必要があります。そして排便は人それぞれで同じではないことを知りましょう。自分の排便状況を知るためには、食事内容、水分量、運動量や排便のあった日にち・時間・回数・性状・量などが大事になります。
そこで重要になってくるのが、「排便日誌」です。まずは自分の排便状況を日々記録してみてください。自分に合った排便の周期などが分かると思います。
前話 知っていますか、ウンチの事――コロナ下で、より良い排便のために① はこちら
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