乳腺炎
『乳腺炎ケアガイドライン2020 2版』によると、乳腺炎の誘因としては以下の要因が報告されています。
・乳頭に損傷がある、特に黄色ブドウ球菌が定着している。
・授乳回数が少ない、回数もしくは授乳時間を決めて授乳する。
・授乳をとばす(注:授乳間隔をあけてしまうこと)。
・不適切な吸着や吸啜が弱かったり適切な吸啜運動ができなかったために、乳房から効果的に乳汁を飲みとることができない。
・母親または児の病気。
・乳汁の過剰分泌状態。
・急に授乳をやめる。
・乳房が圧迫される(例:きついブラジャー、シートベルト)。
・乳頭上の白斑、乳管口や乳管の閉塞:乳疱(milk blister)、水疱(bleb)、局所的な炎症反応。
・母親のストレスや疲労(特定の食物がヒトにおける乳腺炎のリスクであるというエビデンスはない)。
(出典:日本助産師会『乳腺炎ケアガイドライン2020 2版』、日本助産師会出版、2021年)
【産褥期に多い乳腺炎】
●うっ滞性乳腺炎
なんらかの原因(乳頭の炎症などで十分な哺乳ができない、陥没乳頭、哺乳力が弱いなど)で乳汁がうっ滞し、乳房が腫脹して自発痛、圧痛を伴います。発熱などの全身症状はありません。
うっ滞性乳腺炎と診断できれば、通常は薬は投与せず、生活指導を主に行います。
●化膿性乳腺炎
うっ滞性乳腺炎に細菌感染を生じた状態や、乳頭の損傷から感染を生じたで状態で、うっ滞性乳腺炎の症状に加え、寒気を伴う発熱、倦怠感などの全身症状を伴うことがあります。皮膚のむくみや発赤を伴う場合には、炎症性乳がんかどうか見極める必要がある場合があります。
化膿性乳腺炎と診断されたときは、通常は抗生物質の投与を行います。授乳継続可能な抗生物質もあります。
●乳腺膿瘍
化膿性乳腺炎が重症化すると、乳腺内に膿が溜まって膿瘍を形成します。乳腺の中の膿瘍ができる部位で症状が異なり、注意を要します。体表に近ければ、視診や触診で疑うことは可能です。しかし深部の場合は、発熱などの全身症状が主で、乳房の症状が乏しい場合もあるので、注意が必要です。
乳腺膿瘍と診断された場合は、膿汁を何らかの方法で排出し、抗生物質を投与します。
【非産褥期に多い乳腺炎】
●慢性乳輪下膿瘍
乳輪の下や近くに膿が溜まり、腫れ、赤み、痛みが出ることがあります。しこりとして触れることもあります。産褥期の化膿性乳腺炎や乳腺膿瘍と異なり、通常は全身症状を伴うことはありません。授乳とは関連がなく発症し、乳首が陥没している陥没乳頭を伴っている方の発症が多いようです。
放置すると自然に破裂して、膿が出ることもあります。多くの方は切開して膿を出しても、再発することが多いです。再発する方は乳腺専門医を受診し、根本的に治す処置や手術を受けることをお勧めします。
●肉芽腫性乳腺炎
硬いしこりや皮膚の発赤、乳頭陥没、皮膚のへこみ(エクボ)、脇のリンパ腺の腫脹などをきたす乳腺炎で、出産後数年以内の比較的若い女性に発生することが多いといわれています。原因不明の疾患ですが、乳がんと似た臨床像を示すことがあり、注意を要する難治性の疾患です。比較的まれな病気ですが、重要な疾患です。
●その他感染性乳腺炎
皮膚の付属器(汗腺やモントゴメリー腺)に感染を起こし、炎症や膿瘍を形成することがあります。